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2023年2月に作成された記事

地域人権運動を巡る状況 20230114 京都  新井報告

2023年1月14日 全水100周年中央集会(京都)報告

地域人権運動を巡る状況
全国地域人権運動総連合事務局長  新井 直樹

1,今日の「課題」はなにか
 私は全解連時代の雑誌『解放の道』(1999年4月5日号)に、「文部省はじめ関係都府県は子どもの人権を侵害し、部落問題解決に逆行する同和関係の状況と調査をいかなる名目でも廃止すべきだ」─という文章を書きました。これは文章を書く2、3年前から全国的に「自分の子を『部落の子』、部落民としてカウント、認定しないでほしい」という親たちの声が教育委員会、市町村県段階、文部省と積み重なっていました。そういう中で文部省が1990年代後半から「進学状況調査等については内容的に多くの論点がある」として調査の実施ができなくなった、その経過などをまとめたものです。あれからすでに20年以上が経ち、人によっては次世代の子どもたちが育っているケースもあります。
 こうした地域の実態を反映し、保護者、弁護士、いろいろな団体の人たちとともに、「同和地区の子ども」の特定という人権侵害をやめさせてきた経過があり、これが今日のひとつ大きな到達となっており、部落問題をどう認識するかというとき、確認すべきことと思います。
 しかし、2016年に議員立法で特別法的な「部落差別解消法」ができました。そのもと市町村県段階で、復古的な考え方、さらには教育啓発の名のもと、古い形の部落差別を掘り起こすマスコミ論調や行政のあり様が出てきました。こうした動向に対し、人権連などは条例反対や附帯決議の遵守を求める申し入れ、各地でマスコミとの懇談会等もおこない、問題の是正につとめています。
 さらに今、インターネットの部落情報をどう考えるか、という問題があります。地域社会の段階では具体的な部落差別、人権侵害は減少しています。昨年3月頃は、高齢者からの聞き取りで、かつての結婚差別、就職差別の話が、非常に多く報道されました。「かつて」の話しです。
 20代の若い世代から「部落差別にはまったく馴染みはないが、現代にも部落差別は根深い問題として扱う情報発信があり、どう考えていいかわからなくなった」と混乱している意見も届いています。
 部落に対する差別意識は着実に薄れ、人権侵害も減少しているもとで、若い世代の多くは、部落差別を掘り起こすような報道に対して右往左往していないし、忌避・偏見が現実的に多くなったかと言えば、人権侵犯事件や相談等でも増えてはいない。
にもかかわらず法務省人権擁護機関は、インターネット上に「〇〇が部落という情報は部落差別を助長する」として、「地名が出ている場合には削除を基本に、相談者やインタネットプロバイダーに対応」という通知だしました。
言論・表現の自由に配慮し、という形で、かつての通知では歯止めを冒頭に記していましたが、2017年以降の依命通知では付け足しとなり、後景にされました。2022年11月末に「部落探訪」というインターネット上の動画が、200本一斉に削除され、私自身、非常に乱暴なやり方だと思いました。
 そういう法律やネットの動向もあり、2つの自治体は、インターネット上の情報を規制する条例をつくり、いま佐賀県もつくろうと県民の意見募集をしています。インターネット上に部落に対する差別情報が掲載された場合、相談があれば県行政が削除を要請する、というものです。つまり、相談者に対して法務局へ相談するように伝えるとか、提起は事実か正確かどうかではなく、受けた行政がプロバイダーに削除を要請するという内容です。
この間、約200自治体がインターネット上の部落情報について、モニタリング、監視をしています。自治体が「おかしい」と思った情報に対して、プロバイダーに削除を要請しています。その上、今回のような県条例で、インターネット上の部落情報を、一方的に行政が問題あると判断しプロバイダーに削除要請、投稿者への指導を行うというものです。
プロバイダーは、投稿や動画を「放置」することによって法的な訴えがなされるか、もしくは削除した場合の法的な対応が求められるかどうか、ということを問題に、ネット上の対応あり様について法務や総務などが研究会を設けて議論しました。結論は基本的には法務省が通知した通り、地名が出たらアウト、誰が部落だと言ってもアウト、というものでした。
今、防衛省は日本の安全保障にかかわって、ウソ、フェイクというような情報がネット上に出ているか、出ていないか、出ているとしたらどこから出ているのか、問題のあるものは規制しなければならない、ということで大掛かりなことを、警察もやろうとしています。
こうした言論表現への対応について危惧するのは、中国などの事例です。中国ではネット投稿のIDは全部国家が管理しているもとで、コロナの関係では様々な情報が拡散したなかで、政府に都合が悪い情報を発信する投稿IDは削除されました。
日本の場合も、マイナンバーによる管理や、表現の自由に対しては、国家による法規制を容認する方向に世論を誘導し金縛りにしていく流れがあります。部落問題にかかわってのネット上の情報には、運動団体や行政などへの批判も含めてさまざまな内容があります。国民が民主主義の力をつけて、ネット上の言論をどうしてゆくか方向性を決めていくのではなく、権力的に上から規制をかけていく。そういう法や条例のあり様について、国民はもっと考えなければいけない問題であると、私たちの側から働きかけていかなければいけない。
かつては地名や人名も出して「差別をなくせ」としてきたものが、いまは差別意識があるから地名や人名をかってに「さらす」のは問題との意見があり、部落問題解決の到達点がネット上には矛盾として表れています。表現規制という形で隠していこうという方向が一方に今あるもとで、到達点への確信、住民の声、民主主義の観点で、規制問題に対応しなければいけないということを、今日の課題として考えています。

2.「地域権利憲章」運動の課題と方向性
 「部落解放運動の発展的転換をはかる基本方針」の議論を経て、全解連から全国人権連に2004年4月になりました。規約をふまえ、どのような方向で運動を進めていくか、各地の実践を分析・議論し、2012年の全国大会で「権利憲章」を策定し、10年が経ちました。
 この間、幹事の中から、組織実態、運動の実態と見合った形で「権利憲章」見直しの議論をすべきではないかという意見があり、機関として議論を進めることを確認しています。
 その際にやはり基本的におさえなければならない方向は、「地域人権確立の方向」として3点示している、①自分の意思により自由に考え発信し行動できる地域社会、②貧困格差による困難を解消し、幸福に暮らせる地域社会、③参加・協同による住民自治が確立された地域社会、です。
 冒頭、丹波さん、石倉さんから今の課題について提起されました。とりわけ「過密」に対して反対語として「過疎」がすすむ人口減少の現在のなかにおいて、地域間格差が教育、経済、医療でも目立ってきています。そういう状況下で自分が住んでいる地域で幸福に暮らすにはどうしたらいいか。その協同の方向のなかで、単位(グループ)をつくりあげていくか、ということが草の根民主主義を推進するうえで、考え方として重要ではないかと思っております。
 大軍拡、大増税の時代の中にあって、全国水平社が提起した普遍的価値を実現していく中に、地域人権確立の方向を位置づけて、若い世代の人たちが、高齢者の知恵もいかし、運動と組織、方向性を議論していくことが非常に重要な時期ではないかと、改めてこの機会に考えている次第です。

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