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メディアの今>ネット規制「悪用の歯止めを」専修大教授・山田健太さん


<視点 見張り塔から メディアの今>ネット規制「悪用の歯止めを」専修大教授・山田健太さん
2020年7月21日 07時49分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/43840/

 ヘイトスピーチ被害やSNS上での書き込みが原因とみられる自殺を受け、ネット上の誹謗(ひぼう)中傷・名誉毀損(きそん)に対し、政府(総務省、法務省)・自民党・民間団体、さらに世間の声もこぞって規制強化を求める構図が生まれている。総務大臣は八月中に省令改正による開示対象の拡大(電話番号等の追加)を実施する意向だ。さらにパブコメを経て早ければ年内にも、プロバイダー責任制限法で定められている発信者情報の開示手続きの「円滑化」として、特別な司法制度を新設して名前の割り出しを簡素化しようとしている。
 しかし政府が表現の自由規制に積極的な時は要注意だ。例えば二〇〇二年の人権擁護法案では、人権侵害の事例に政治家へのつきまとい取材や批判報道を加えたことで、メディアを中心に強い反対のなかで廃案となっている。それに前後して実現した報道被害に対する損害賠償額引き上げにおいては、裁判所の相場表のトップに政治家が据えられることで、日本は他国に比しても政治家からの対メディア訴訟が多い国になってしまった。
 総務省研究会では、委員の半数が議論不足と指摘する中で、政府意向に沿った結論が示された。政治家への批判や不正の内部告発といった表現までもが誹謗中傷規制の対象となりうるだけに、最近の法律の常套(じょうとう)句になっている「表現の自由に配慮」といった文言を付加するだけで、問題が解決するとは思えない。
 ビラやデモといった誰もが手軽に発信できるプリミティブ表現は、行政の恣意(しい)的な判断で規制されやすいメディアだ。電子版のビラ・デモともいえるSNSが同じ道を歩むことは避けるべきだろう。だからこそ、開示請求者から公人を除外するなどの「悪用の歯止め」を組み入れるなど、恣意的な運用を抑える仕組みが求められている。表現活動が大きく制約されているコロナ下だからこそ、より自由に敏感でありたい。
  ◇
5.26 4月に設立したSNS事業者でつくるソーシャルメディア利用環境整備機構(代表理事・曽我部真裕ほか)が緊急声明発表
6.1 法務省が「インターネット上の誹謗中傷等に対する法務省プロジェクトチーム」を設置
6.11 5月に初会合を開催した自民党「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策プロジェクトチーム」(座長・三原じゅん子)が提言発表
6.23 5月に設置した公明党「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策検討プロジェクトチーム」が提言発表
6.29 IT企業でつくるセーファーインターネット協会が誹謗中傷ホットラインを開設
7.10 総務省「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(座長・曽我部真裕)が中間とりまとめ発表、パブコメ実施

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