ヘイト規制 LGBT差別禁止 都議会委が条例案可決
ヘイト規制 LGBT差別禁止 都議会委が条例案可決
2018年10月4日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018100402000152.html
二〇二〇年東京五輪・パラリンピックに向け、ヘイトスピーチを規制し、LGBTなど性的少数者への差別を禁止する東京都の人権尊重条例案が三日夜、都議会総務委員会で自民を除く賛成多数で可決された。五日の本会議で成立する見通しで、成立すれば都道府県で初めて。
条例は「いかなる種類の差別も許されない」とする五輪憲章の実現を目指すのが目的で、罰則は設けない。都は一九年四月の全面施行を目指す。
条例案によると、ヘイトスピーチ対策では全国の自治体で初めて、都立公園など公共施設での不当な差別的言動を防ぐため、施設の利用制限基準を定めることを条文で規定。集会やインターネット上で差別的言動があったと知事が認めた場合、活動の概要や団体名、個人名を公表したり、ネット上の動画などを削除要請したりすることができる。
表現の自由に配慮するため、ヘイトスピーチに該当するかどうか判断する際、学識経験者らでつくる審査会の意見を聞くよう定めた。これに対し、学者やフリーライターの有志は一日、都庁で記者会見し、表現の自由が抑圧される危険があるとして、条例制定への反対を表明していた。
性的少数者に対しては、性自認(性に対する自己認識)や性的指向(好きになる相手の性)を理由に「不当な差別的取り扱いをしてはならない」と明記。都民の理解を深めるため、啓発の基本計画をつくることを盛り込んだ。
採決で自民は「企業や区市町村、関係団体などの意見を聴くなどした上で提案すべきものだ」と反対。都民ファーストの会、公明、共産、立憲・民主などが賛成した。
◆東京都人権尊重条例案の骨子
▽目的は、いかなる種類の差別も許されないという五輪憲章にうたわれる人権尊重の理念が、都民らに浸透した都市となること
▽知事は、ヘイトスピーチを防ぐため、公共施設の利用制限基準を定める
▽知事は、ヘイトスピーチと認定した場合、内容の拡散を防ぐために必要な措置を講じる(ネット上動画の削除要請など)
▽ヘイトスピーチかどうかなどを審議するため、学識経験者による審査会を設置する
▽都や都民、事業者は性自認、性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならない
▽都は、LGBTなど性的少数者に関する啓発を進めるため基本計画をつくる
<論戦都議会>「不適切発言」巡り平行線 人権尊重条例案
2018年10月4日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201810/CK2018100402000128.html
都議会総務委員会は三日、人権尊重条例案の審議を巡り会派間で見解が対立したため、開会は夜になり、賛成多数で可決した。日中、都民ファーストの会や公明は「二日の質疑で自民委員から不適切な発言があった」と指摘。自民は「問題はなかった」と主張し、平行線をたどった。
二日の審議では、ヘイトスピーチを規制し、LGBTなど性的少数者への差別を禁じる同条例案の必要性などを巡り議論。自民の委員は「当事者の意見を聞くべきなのに、調整がつかないとの理由で実現できなかった」という趣旨の発言をした。
都民ファや公明は「そのような経緯はなかったのに、事実のように発言するのは不適切だ」と反発。発言内容を確認するため、自民側が審議のテープ起こしを要求するなどして委員会は開会予定の午後一時になっても開かれず、午後九時すぎの開会になった。
三日の財政委員会では、都立東大和療育センターの改修工事など十九議案を可決。文教委員会では私立高校などへの補助拡充を国に求める意見書を本会議に提出すると決めた。
<傍聴記>ヘイト対策と歴史認識
今定例会最大の焦点となっている人権尊重条例案。二日の総務委員会では各会派から質問が相次ぎ、審議は夜まで長時間に及んだ。
ヘイトスピーチの規制について都は、大阪市の条例や川崎市のガイドラインなどを参考に内容をまとめたという。一方、ヘイト問題に詳しい弁護士は、都の条例案は施設の利用制限基準を示していない点などで「先行例に比べ、あいまいだ」と指摘する。
ヘイト問題では、共産が先月二十六日の代表質問で、関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付を小池知事が取りやめたことを取り上げた。歴史認識を問われた小池知事は「何が事実かは歴史家がひもとくべきだ」と従来の見解を繰り返した。
ヘイト対策を進めるには、過去の事実にきちんと向き合った上で、再発防止の決意を示すことも必要なのでは。
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