« 2018年7月 | トップページ | 2018年9月 »

2018年8月に作成された記事

日本のヘイト対策「限定的で不十分」 国連委が強化勧告

日本のヘイト対策「限定的で不十分」 国連委が強化勧告
2018年8月30日
https://digital.asahi.com/articles/ASL8Z5HRYL8ZUHBI02B.html?rm=752

 国連人種差別撤廃委員会は30日、日本の人権状況と政府の取り組みへの見解をまとめた報告を公表し、ヘイトスピーチ対策の強化などを勧告した。ヘイトスピーチについては、2016年に日本が対策法を施行した後もなくならない現状に懸念を表明。対策が限定的で不十分だとの認識を示し、集会などでの差別的言動を禁止するよう求めた。

 同委員会は18人で構成し、日本も加入する人種差別撤廃条約の履行状況を包括的に調べる。国別に実施する定期審査をもとに「最終見解」と呼ぶ報告をまとめ、改善を求めて勧告する。日本への勧告は、01年、10年、14年に続いて4回目で、今回は日本政府代表が出席した対日審査の会合が16、17の両日に行われた。勧告に法的拘束力はない。

 日本のヘイトスピーチ問題をめぐって、委員会は前回14年に法規制を勧告した。今回、対策法の施行を歓迎しつつも、効力は限定的だと指摘し、法を改正して救済対象を外国出身者以外にも広げるよう勧告。集会やデモでのヘイトスピーチや暴力をあおる発言を禁止し、インターネット上でのヘイトスピーチに対しても効果のある対策を取るように求めた。さらに、司法部門で差別犯罪の捜査や処罰について研修を行うことも勧告した。公表後の記者会見で、対日審査を担当したマルク・ボスート委員は対策法について「被害者をはっきり特定できない場合に適用できないなど不十分」と指摘した。

 一方、日本政府は、人種差別撤廃条約で差別的言動を法律で処罰すべき犯罪としている条文の適用について、留保している。罰則導入は表現の自由を保障する憲法規定に抵触しかねず、ヘイトスピーチ対策法が罰則のない理念法になったのは国会の議論の結果としており、差別的言動には名誉毀損(きそん)や業務妨害などの刑法犯が成立するとしている。

 また、本来の訓練が受けられずに低賃金労働を強いられていると批判されている技能実習制度については、委員会は昨年の技能実習適正化法施行を歓迎しつつも、国の監督が弱いとして、同法順守の徹底を勧告した。

 慰安婦問題では、15年12月の日韓合意といった解決努力を評価しつつ、「被害者を中心に置くアプローチが十分でなかった」との認識を示し、元慰安婦が納得するような解決を求めた。

 委員会は全体で40項目以上を勧告。多くの分野で委員会と日本の立場に隔たりがあり、前回勧告から置き去りにされた点を再度勧告する形になった。(ジュネーブ=吉武祐)

国連人種差別撤廃委員会の日本への勧告の主な内容
●ヘイトスピーチ

・対策法の適用対象を外国出身者以外にも広げる

・集会でのヘイトスピーチや暴力の扇動を禁止

・ネット上のヘイトスピーチへの効果的対策を要求

●被害者中心のアプローチによる慰安婦問題の解決

●技能実習適正化法の履行徹底

●包括的な差別禁止法の制定

●広範な権限を持つ人権保護機関の設置

●外国籍者の住居や雇用の権利保障

●高校就学支援金制度を朝鮮学校にも適用

|

国連人種差別撤廃委、ヘイトスピーチ対策などで日本に勧告

国連人種差別撤廃委、ヘイトスピーチ対策などで日本に勧告

news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye3460253.htm

  国連の人種差別撤廃委員会は30日、日本の人権状況について審査してきた結果を公表し、ヘイトスピーチ対策が十分でないとして、日本政府に対し対策を強化するよう勧告しました。
 国連の人種差別撤廃委員会は、今月16日から2日間の日程で日本の人権状況に対する審査を行い、在日韓国・朝鮮人など特定の民族などを標的に差別をあおるヘイトスピーチ問題や旧日本軍慰安婦問題などについて意見を交わしました。

 審査の結果、委員会は30日、ヘイトスピーチ問題について日本が「不当な差別的言動は許されない」とするヘイトスピーチ解消法を2016年に施行したことを歓迎するとしたものの、対策が十分でないと懸念を表明しました。

 さらに、法律の施行後もヘイトスピーチデモが続いていることや、インターネット上や公人によるヘイトスピーチが続いているとし、対策を強化するよう勧告。また、慰安婦問題では被害者中心の取り組みを進め、解決を図るよう勧告しました。

 法務省の調査では、2015年9月までのおよそ3年半に、ヘイトスピーチデモは日本全国で1152件確認されています。


沖縄への基地集中は「人種差別」 国連が日本政府に勧告
2018年8月31日
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-794147.html

 国連人種差別撤廃委員会は30日、対日審査の総括所見を発表した。日本政府に対し、沖縄の人々は「先住民族」だとして、その権利を保護するよう勧告した。米軍基地に起因する米軍機事故や女性に対する暴力について「沖縄の人々が直面している課題」と懸念を示した。その上で「女性を含む沖縄の人々の安全を守る対策を取る」「加害者が適切に告発、訴追されることを保証する」ことなどを求めた。同委員会が勧告で、差別の根拠として米軍基地問題を挙げたのは2010年以来。
 同委員会は10年、沖縄への米軍基地の集中について「現代的な形の人種差別」と認定し、差別を監視するために沖縄の人々の代表者と幅広く協議するよう勧告した。14年の前回勧告は基地問題に言及しなかったが、今回は再び言及した。

 今回の総括所見は、日本政府が沖縄の人々を先住民族と認めていないことに懸念を示した。「琉球(の人々)を先住民族として認め、その権利を守るための措置を強化する立場を再確認すること」を勧告した。

 総括所見は16、17の両日にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた対日審査の結果を踏まえ、まとめられた。

|

デモは迷惑行為? 薄らぐ共感 新宿区、使える公園制限

デモは迷惑行為? 薄らぐ共感 新宿区、使える公園制限
2018年8月28日
https://www.asahi.com/articles/ASL8W5WKNL8WUTIL02L.html?jumpUrl=http%253A%252F%252Fdigital.asahi.com%252Farticles%252FASL8W5WKNL8WUTIL02L.html%253F_requesturl%253Darticles%252FASL8W5WKNL8WUTIL02L.html%2526amp%253Brm%253D614

 デモを出発できるのは新宿中央公園だけ――。東京都新宿区が8月から、こんな風に区立公園の使用基準を変更した。音量や交通規制に悩む近隣住民への配慮というが、デモは迷惑行為なのか。

 7月の日曜日午後。小さな滑り台やベンチがある新宿区立柏木公園に、青いシャツを着たり、旗を持ったりした約100人が集まった。ウイグル人に対する中国政府の政策を批判する人々で、仮面を着けた人もいた。警察官約20人が取り巻く中、公園を出ると「フリー、ウイグル!(ウイグルに自由を)」と叫びながら、新宿駅周辺の繁華街をデモ行進した。

 新宿区立公園出発のデモは昨年度77件で、新宿駅に近い柏木公園は最多の50件。だが、区が部長決裁で公園の使用基準を変え、近くに商店街や学校などがある柏木公園など3公園をデモに使えなくした。8月からデモの出発地にできるのは新宿中央公園だけだ。デモを主催した男性(48)は「新宿中央公園は繁華街から離れ、デモ行進の距離が延びる。道路使用を警察がすんなり許可してくれるだろうか」と心配した。

 外国人が人口の13%と都内の区市町村で最高の同区では、外国人排斥などを叫ぶヘイトスピーチが昨年度に13件(区調べ)。吉住健一区長は「近隣住民が困っている」とヘイトスピーチ対策の措置と説明するが、区幹部は6月の議会で「知らない人が家の近くに多く集まると、区民にはストレス」などと述べ、ヘイト以外のデモを住民から遠ざけたい意図を明かした。

|

「ヘイト対応に特例を」 大阪市長が国に要望

「ヘイト対応に特例を」 大阪市長が国に要望

2018/8/28

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34690800Y8A820C1000000/

 ヘイトスピーチ抑止を目的に実施団体や個人名などを公表できるとする大阪市条例を巡り、吉村洋文市長は28日、法務省と総務省を訪れ、インターネット上のヘイトスピーチ動画の投稿者を特定できるよう、通信の秘密を定める電気通信事業法に特例を設けるなどの法整備を要望した。

 吉村市長は法務省で葉梨康弘副大臣に面会。インターネットのプロバイダーに対し、自治体の求めに応じて投稿者情報の提供や保存を義務付けることなどを求めた要望書を手渡した。その後、総務省にも同じ内容の要望書を提出。終了後、記者団に「(個人情報の開示は)法務省、総務省も少し慎重だ。ヘイトスピーチを無くす覚悟があるなら、一歩踏み出すことが必要だ」と述べた。

 市はプロバイダーに投稿者の情報開示を義務づける条例改正を検討していたが、市の有識者審査会は1月、電気通信事業法に抵触すると指摘。国に法整備を求めるべきとする答申を出していた。

 条例は2016年7月に全面施行され、市はネット上への動画投稿行為4件をヘイトスピーチと認定したが、いずれも投稿者の氏名は特定できていない。〔共同〕

|

「LGBT、それがどうした」杉田論文の本質はただの差別である 吉良佳子(参議院議員)

「LGBT、それがどうした」杉田論文の本質はただの差別である
『吉良佳子』 2018/08/10

https://ironna.jp/article/10431

吉良佳子(参議院議員)

 「私はゲイだ! それがどうした! This is Pride!」

 7月27日、自民党本部前で行われた杉田水脈衆院議員の「差別発言」への抗議集会のスピーチの中で、私が一番心打たれた言葉です。そして、私はこの言葉に励まされました。なぜなら、私にはこれが「私は私だ。それこそが私の誇り(Pride)だ!」という宣言に聞こえたからです。

 そもそも「自分が自分である」、ただそれだけで、それを誇りだと胸を張って言える人はどのくらいいるのでしょう。私自身、人に誇れる自分らしさとは何なのか、しょっちゅう考えてしまいます。

 女性で、子を持つ母親で、国会議員で…私を表す記号はたくさんある。でも、その記号だけで「私らしさ」は表せない。むしろ「期待に応えられているか」「その役割を果たせているか」…その記号に付随する悩みは山ほどあります。

 こんな風に「自分らしさ」を探しながら、「社会に、みんなに、認められたい」と思い悩み、苦しむ。誰だってそんな経験はあるはずです。とりわけ、LGBTの場合、その苦しみに直面し続けているのではないでしょうか。

 「同性に興味があると確信したのは、中学3年生の時。同性に興味があるのは世界で自分1人だけだと思い、とても孤独で苦しかったです。20歳の誕生日を迎えたとき、その気持ちが破裂し、母親にカミングアウトをする決意をしました。誰よりも一番理解してくれると思っていた母親に言われた言葉『私の育て方が間違っていたのかな』。一番聞きたくなかった言葉を耳にしたときに、自分の中の何かが弾け、涙が止まらなかったのを覚えています」

 ゲイの友人が手紙を書いてくれました。

 LGBTに関する法整備を求める市民団体「LGBT法連合会」は「性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト」として、264項目を例示しています。例えば「性別への違和感について、教員や同級生が笑いのネタにした」「カミングアウトをしたところ、家族の中で無視をされたり、死んだ者として扱われたりした」「性的指向や性自認を理由に、解雇や内定取り消し、辞職を強要された」「レズビアンとカミングアウトしたら『治してやる』などといってレイプされた」など。

2018年7月、東京・永田町の自民党本部前で杉田水脈議員に抗議する人たち
 とてもじゃないけれど、これでは「自分が自分であること」そのものを誇れる状況とはいえません。どんな性的指向であれ、性自認であれ、それ自体がかけがえのない「あなたらしさ」。尊重されるべき人権です。

 その、一番大事な「自分らしさ」を否定され続けることが、どれだけ苦しいか。ゲイやバイセクシャルなどの性的マイノリティーの男性が、異性愛者の男性と比べて自殺を図るリスクが約6倍に上るという調査まであります。この深刻な事態は決して「笑って話す」ようなことではありません。

杉田議員による「『LGBT』支援の度が過ぎる」「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」「そこに税金を投入することが果たしていいのか」などという差別と偏見に満ちた発言は、LGBTを取り巻くあらゆる困難や苦しみによる傷口に塩を塗り込むようなもの。それに怒りの声を上げるのは当然のことだと思います。

 大体、LGBTに対する「支援の度が過ぎる」状況がどこにあるのか。LGBTに対する何らかの施策を持っている地方自治体の数は、全国で70自治体(2015年時点、LGBT法連合会の調査より)。パートナーシップ条例を持つ自治体も今年7月末時点で10自治体。決して多いとはいえません。

 私たち日本共産党はLGBTを取り巻く問題を解消したり、軽減したりするために、国として直ちに「LGBT差別解消法案」のような法律を制定することを求めています。国会にも、他の野党とともに「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」を提出しています。

 また、自治体、企業、学校などそれぞれの分野でもLGBT問題に関する正しい知識の周知徹底、そして教育が必要です。自治体における「パートナーシップ制度」も、もっともっと広く、推し進めたい。

 性的指向や性自認について、今なお1人で悩み、苦しんでいるかもしれない人に「あなたは1人ではない」と伝えるために。1人でも多くの人にLGBTのことを正しく理解してもらうために。こうした法律や制度を作り、広げることは急務です。

 何より今、「生産性」とか「子供を産むかどうか」などの条件で、人を選別するような思想を許すかどうかが問われています。

 「差別の言葉がなんでダメなのか、それはその時耳に刺さるだけじゃないんです。その言葉はその言葉に触れた人の心の中にずっと残るんです。『あなたは必要とされてない』ってその一言、それが寝ても覚めて繰り返されてしまうんです」

 冒頭の「This is Pride!」とスピーチをしたLGBT法連合会共同代表の林夏生さんは語っています。

日本共産党の吉良佳子参院議員(酒巻俊介撮影)
 「生産性」などの条件で人を選別する発言は、まさに「あなたは必要とされていない」というメッセージそのものです。そして、このメッセージは、LGBTだけじゃない。「子供を作らない」「作れない」、そして「生産性がない」と決めつけられたすべての人に対して発信されている。こんなこと、私は絶対に支持しないし、許すわけにはいきません。

 「『生産性がない』から支援の必要もない」というのは重度の障害者にも及ぶ攻撃だ、と断じている筋ジストロフィーの詩人、岩崎航さんはこうも言っています。「ただ、そこに居るだけでいい、生きているだけで十分というのが人の命」だと。

 「ただ、そこにいるだけでいい」。この言葉こそ「社会に認められたい」と思い悩む多くの人々が求めているものだと思います。これこそ政府や政治家が発信すべきメッセージ。私が私らしく、あなたがあなたらしく、堂々と生きられる社会こそ目指したい。私は私だ。それが、Pride!

|

LGBT「杉田論文」女性議員は何を思う 稲田朋美(衆議院議員)

LGBT「杉田論文」女性議員は何を思う
自民党の杉田水脈衆院議員が月刊誌で「LGBTに生産性なし」などと主張した論文をめぐり、今も波紋が広がる。自民党は「配慮に欠く表現があった」として本人を指導したが、そもそも何が問題だったのか。iRONNAでは今回、3人の女性政治家に寄稿を募った。「杉田論文」の核心を同性の視点から考えたい。

稲田朋美手記「杉田さん、LGBTを尊重するのが保守の役割です」
『稲田朋美』 2018/08/10

https://ironna.jp/article/10432?p=1

稲田朋美(衆議院議員)

 平成28年2月、当時自民党政調会長であった私は、LGBTの当事者の方々が自分らしく、人として尊重され、活躍できる社会を実現するため、自民党の正式な会議体として「性的指向・性自認に関する特命委員会」を設置した。

 特命委員会の委員長には、古屋圭司元拉致問題担当大臣に就任いただいた。古屋委員長とは思想信条、歴史認識も近く、私は古屋委員長を、柔軟な中に信念を貫く、そして人権感覚も優れたベテラン政治家だと尊敬している。 

 かつて私と古屋委員長は人権擁護法案反対の論陣を党内でリードした仲だが、それは人権を軽視しているということでは決してない。何が「人権」なのか、という定義は難しく、「人権擁護」の名の下に他者の人権を侵害するということもある。むしろ、個別法で人権を守っていくことの方が現実的だという考えからの行動だった。

 政調会長時代には、二階俊博総務会長(当時)のご指導の下、「部落差別の解消の推進のための法律」も議員立法で成立させた。

 さかのぼると平成27年秋、自民党政調会長としてワシントンで講演した際に、LGBTのことを言及した。LGBTについて考えるきっかけは、息子の友人に当事者がいたという極めて個人的なことだが、ワシントンでLGBTの人権について言及した日本の政治家は私が初めてだろうと言われた。

 また、講演直前のことだが、サンフランシスコの慰安婦像設置にいち早く反対してくれたのは、実はLGBT団体だった。この問題が歴史認識やイデオロギー論争とは「無縁」と実感する良いきっかけとなった。

 私のことを「歴史修正主義者」「右翼」という人もいるが、まっとうな保守政治家でありたいと思っている。保守の政治というのは、個人の自由を大事にすることだ。それは当然、自分勝手を認めることではない。自分が自分らしく生きたいと思うように、他者もそのように思っている。そういった他者への思いやりや尊重を大切にしたい。

自民党の稲田朋美衆院議員(斎藤良雄撮影)
 その上で、人生100年時代の家族の在り方については、時代の変化とともにもっと柔軟なものであってよいのではないか。人々が自由にのびのびと生きられる社会、寛容な社会を実現したい。そうした風通しのよい社会こそがさまざまなイノベーションを生み、経済も成長させられるはずである。

 そのような思いから、講演では次のように述べた。

 「すべての人が平等に尊重され、自分の生き方を決めることができる社会をつくるために取り組みます。人は生まれつきさまざまな特徴を備えています。そのことを理由として、その人が社会的不利益や差別を受けることがあってはなりません。保守政治家と位置づけられる私ですが、LGBTへの偏見をなくす政策等をとるべきです」

 「自民党は日本における保守政党ですが、その思想は多様です。大切なことは、人それぞれの個性を評価し、人々がその潜在能力を完全に発揮できるように支援する社会をつくること、また一生懸命努力し成功する人を評価し、一生懸命努力しても成功しない、または成功できない人を支援する社会をつくることです」

ワシントンでの講演後、平成28年2月3日の衆議院予算委員会で、LGBTについて加藤勝信・一億総活躍社会担当大臣(当時)に質問をした。

 加藤大臣は「一億総活躍社会とは誰もが個性を尊重され将来の夢や希望に向けてもう一歩前に歩み出すことができる、そして多様性が認められる社会をつくるということでありますから、その社会を実現していく理念においてもLGBTといわれる性的少数者に対する偏見あるいは不合理な差別、こういったことはあってはならないのであります」と答弁している。多様性を認め、寛容な社会をつくることが安倍政権、そして自民党である。

 特命委員会では設立当初から、LGBT当事者で一般社団法人LGBT理解増進会代表理事の繁内幸治氏にアドバイザーとして就任いただき、精力的に議論を続け、その後政府に対しLGBT理解増進のための33の施策を提言した。

 しかし、その際、理解増進法を議員立法として自民党から提出することは断念した。あまりにも自民党内の理解が進んでいなかったからだ。その現実に愕然(がくぜん)とした私は、まずは党内の理解増進が先決だと痛感した。

 だが、提言をしたその年の夏の参議院選挙の公約には、LGBTについて「正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定」とともに「社会全体が多様性を受け入れていく環境を目指す」と盛り込むことができた。

 人は、人として存在すること自体を尊重されなければならない。老いも若きも、障害がある人もない人も、そして性別がどうあろうとも、人が人として自分らしく、頑張って生きようとしている人々を応援する自民党でありたい。

 自民党が下野した際に、自民党の綱領を新しくしたが、新綱領の中で「われわれが守り続けてきた自由(リベラリズム)とは、市場原理主義でもなく、無原則な政府介入是認主義でもない。自立した個人の義務と創意工夫、自由な選択、他への尊重と寛容、共助の精神からなる自由であることを再確認したい」と書き込んだ。まさに「他への尊重と寛容」の社会をつくることが保守の役割なのだ。

 さらに、自民党が目指している理解増進法は、LGBT理解増進のために財政措置を講ずることができるとしているが、LGBTの方々やLGBTカップルを優遇したり特権を与えたりするものではない。

 なぜ、私たちが「差別禁止」ではなく、「理解増進」を目指すのか。いきなり「差別」を禁止して「罰則」を設けたのでは、なぜLGBTが人権問題なのかが理解されず、政策に説得力、ひいては実効性がなくなるからだ。まずはLGBTの基礎的な理解を広めることが重要だ。

2018年5月、葉梨康弘法務副大臣(右)にLGBTへの差別禁止の法整備を要請したアムネスティ・インターナショナルの担当者ら
 自民党では自由な議論が許され、党内の多様な意見が尊重される。憲法、人権擁護法案、女系天皇反対など、激しい議論の末に党の方針が決められる場面をいくつも見てきた。

 これからきたる臨時国会で、LGBT理解増進法の議員立法化に向けて関心を寄せてくれる議員が増え、議論が活発化することを期待している。

|

« 2018年7月 | トップページ | 2018年9月 »