ヘイトスピーチ 事前規制には慎重に臨みたい
ヘイトスピーチ 事前規制には慎重に臨みたい
2017年11月22日
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20171121-OYT1T50142.html
表現の自由に配慮しつつ、差別を煽あおり立てる悪質な言動を排除することが大切である。
川崎市がヘイトスピーチ(憎悪表現)を規制する指針を策定した。公的施設の利用を制限するのが主な内容だ。来年3月に施行される。
外国人が多く住む川崎市では、在日韓国・朝鮮人を敵視するデモが繰り返されている。市がヘイトスピーチを許さないという姿勢を明確に示したのは当然だろう。
ヘイトスピーチを繰り返す男性らが昨年、デモを予告して、公園の使用許可を申請した。市は不許可とした。同様のケースが予想されるため、市は利用制限の際の基準や根拠を検討してきた。
問題は、指針が「事前規制」に踏み込んだ点だ。
差別的な言動が行われる恐れが具体的に存在する。ほかの利用者に著しく迷惑を及ぼすことが明白だ。こうした場合に、指針は公的施設の利用の不許可や許可取り消しができると規定している。
事後に氏名などを公表することで抑止を図る大阪市の条例との違いが際立つ。実際の行為の前に、的確に線引きできるのか。
利用制限に際しては、第三者機関に意見を求めることを義務付けている。必要な手順だが、自治体が選んだ有識者が、恣意しい的に判断する可能性も否定できまい。
憲法は、言論や集会など表現の自由を保障している。地方自治法は、正当な理由がない限り、自治体は公的施設の利用を拒んではならないと規定する。
正当な言論活動まで萎い縮しゅくさせないよう、川崎市には慎重な運用が求められる。不許可などに至った判断の過程について、透明性を確保することが重要である。
昨年6月に施行されたヘイトスピーチ対策法には、罰則規定がない。どのように対策を講じるべきか、自治体の模索が続く。
中でも、インターネット上の投稿や書き込みへの対応は共通の課題だ。デモは減少傾向にあるものの、ネット上には悪意と偏見に満ちた表現があふれている。
大阪市では、条例に基づく審査対象の7割がネット上の書き込みや投稿だという。市は、サイト運営業者に情報提供を義務付ける条例改正を目指す。通信の秘密との兼ね合いにも配慮が必要だ。
ドイツでは、違法な書き込みがあれば、フェイスブックなどに24時間以内に削除させ、違反した場合には罰金を科す制度を試行している。その功罪を見極め、日本でもルール作りを急ぎたい。
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