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[ヘイトスピーチ] 根絶したい偏狭な差別 

[ヘイトスピーチ] 根絶したい偏狭な差別  南日本新聞社
http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201604&storyid=74791
( 4/23 付 )
 
 自民、公明両党が、特定の人種や民族への差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を抑止するための法案を参院に共同提出した。差別的言動のない社会に向けた国と自治体の責務や、国民の努力義務が盛り込まれている。
 旧民主、社民両党なども「人種等を理由とする不当な行為」を禁止する法案を昨年、共同提出している。今後、与野党で法案の一本化などが協議される見通しだ。
 ヘイトスピーチは東京や大阪の在日コリアンが多く住む地区で、「在日特権を許さない市民の会」などが「在日韓国・朝鮮人を殺せ」などと叫びながらデモを繰り返し、社会問題化した。
 不快を通り越して恐怖を感じるような行為を野放しにはできない。偏狭な差別的言動にはしっかりとした歯止めが必要だ。
 国連人種差別撤廃条約は、差別を扇動する行為の禁止を各国に求めている。日本も批准しているが、政府は国内法の整備を留保してきた。言論の自由に抵触することを懸念したからだ。
 デモは思想、信条を表明する手段の一つであり、集会や結社の自由も基本的人権として日本国憲法で保障されている。とはいえ、他人の人格や出自を傷つける言動は到底許されない。
 京都朝鮮学園の授業妨害訴訟では、団体側に賠償と街頭活動の禁止を命じる判決が最高裁で14年に確定した。子どもたちの眼前で「日本からたたき出せ」などと拡声器で連呼する行為が、表現の自由と程遠いのは明らかである。
 このケースでは朝鮮学校という特定の被害者が存在し、授業の妨害という具体的な被害があったから摘発できた。しかし、在日コリアン一般に同じような街頭宣伝をしても、現行では取り締まる法律はない。
 法務省は2012年4月~15年9月に全国で1152件のヘイトスピーチを確認したが、抑止は難しかった。法案提出は、規制に向けて踏み出した一歩である。
 今回の与野党両案は、ともに罰則を設けていない。差別を許さないことを宣言する「理念法」という位置づけだという。
 在日本大韓民国民団は「実効性に疑問がある」と批判してる。だが、罰則を科すとなれば、規制対象となるヘイトスピーチと、対象とならない言論活動をどう区別するのか。この線引きが明確でなかったら、公権力に恣意(しい)的に運用される恐れが生まれる。
 言論の自由を萎縮させず、行き過ぎた言葉の暴力を根絶する法の在り方について、国会はしっかりと論議してもらいたい。

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