“悪ふざけの時間”を自ら終えられなかったドワンゴ
“悪ふざけの時間”を自ら終えられなかったドワンゴ
http://blogos.com/article/161248/
米国のYouTubeと並んで、日本のニコニコ動画(以下、ニコ動)は著名な動画共有サイトのひとつだろう。運営しているドワンゴは、出版・映画などのメディア企業であるKADOKAWAと2014年に経営統合し、現在は持株会社カドカワの子会社となっている。
このニコ動などに対し法務省が、在日朝鮮人に対するヘイトスピーチ(差別煽動表現)の動画が人権侵害に当たるとして削除を要請し、一部が応じたと報道された。問題となった動画は2009年11月、在特会メンバーが東京都小平市の朝鮮大学校前で行なったヘイトだという。
誰でも見られる形で野放しになっていたヘイト動画が削除されたのはよいことだが、どうにも腑に落ちないのはドワンゴの姿勢である。行政に介入される前に自らの手で削除することはできなかったのだろうか。
ドワンゴの川上量生会長は自身のツイッター(現在はアカウント消去)で、規制をしないことが理念であり、ヘイトスピーチも表現の自由だと主張して、反レイシズム運動を揶揄するツイートを繰り返していた。ニコ動にはかつて「在特会公式チャンネル」まであったのだ(2015年5月閉鎖)。
また、ニコ動の規約から、「他の利用者への中傷、脅迫、いやがらせに該当する行為」「差別につながる民族・宗教・人種・性別・年齢等に関する表現行為」を禁止する項目が今年の1月ごろ消されてしまった。これでは、健全な社会に対しての責任があるメディアの一員として胸を張ることなど、とてもできまい。
ネット問題に詳しい落合洋司弁護士は「自分で解決できない被害者を救済するために今回のような(行政による)対応は必要だが、行き過ぎると表現の自由への介入となる」と指摘している(14日共同通信配信記事)。
被害者や反レイシズム運動に取り組む人が声を上げたからこそ法務省を動かしたとも言えるが、表現の自由を履き違えたニコ動=ドワンゴの主体性のなさこそが、最も問われるべき点だろう。彼らは“悪ふざけの時間”を自分で終わらせることができなかったのだ。
【社会】
ヘイトスピーチ動画削除 ニコ動など 法務省要請で初
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/CK2016021402000125.html
2016年2月14日 朝刊
在日朝鮮人に対する差別的言動などのヘイトスピーチ(憎悪表現)の動画がインターネット上で公開されているのは人権侵害に当たるとして、法務省が複数のサイト管理者に削除を要請し、一部が応じていたことが、関係者への取材で分かった。ヘイトスピーチによる人権侵害を抑止するための法務省の措置が、動画削除につながった初のケース。
法務省は昨年十二月「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の元代表にヘイトスピーチをしないよう勧告するなど、抑止の取り組みを強めている。今回は被害者側の申し立てに基づく要請で、勧告と同様に強制力はない。
関係者によると、問題となった動画は二〇〇九年十一月、東京都小平市の朝鮮大学校の校門前で在特会メンバーが「朝鮮人を日本からたたき出せ」と大声を出している内容など。動画配信サイト「ニコニコ動画」などを通じて公開されていた。
法務省は名誉毀損(きそん)やプライバシーの侵害があると判断した動画や書き込みについて、プロバイダーなどに発信者情報の開示や削除を求めており、この動画も削除を要請。十三日までにニコニコ動画を含む複数のサイトが「人格権侵害」などの理由で削除した。
◆人権侵害 一定の歯止め
法務省の要請に応じ、複数のサイトがヘイトスピーチの動画を削除したことは、差別的発言の拡散への一定の歯止めになると見込まれる。だが、削除要請の具体的基準は示されておらず、行き過ぎた対応が表現の自由の制限につながらないよう、慎重な対応を求める声もある。
ブログや会員制交流サイト(SNS)の普及に伴い、インターネット上での人権侵害を訴える声は増加している。二〇一四年に法務省が被害の申し立てを受けたのは過去最高の千四百二十九件に上り、十年間で約七倍となった。
法務省によると、一四年にプロバイダーやサイト管理者に書き込みなどの削除要請をしたのは百五十二件。中学生を「死ね」と中傷する動画が掲載されたケースでは、投稿サイトの管理者に学校側が削除依頼しても応じてもらえなかったが、その後法務省が要請し、削除につながった。
同省幹部は「申し立ての件数はどんどん増えているが、侵害の認定が難しかったり、管理者とのやりとりに時間がかかったりすることも少なくない」と対応の難しさを打ち明けた。
ヘイトスピーチの動画削除について、ネット問題に詳しい落合洋司弁護士は「自分で解決できない被害者を救済するために今回のような対応は必要だが、行き過ぎると表現の自由への介入になる。節度を持ち、控えめに行使していくことが求められる」と指摘する。
青山学院大の大石泰彦教授(メディア倫理)は「昨今のヘイトスピーチの状況を見れば、今回の対応はやむを得ない」としつつ、「被害者が特定できなくても関連団体が差し止め訴訟を起こせるなど、新たな制度をつくるべきだ。公権力が主導してネット空間が浄化されるスタイルが根付くのは危険で検閲性も高く、どのような言葉が入れば削除要請をするかなど、基準を明確化する必要がある」と話している。
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