産経ニュース
http://www.sankei.com/politics/print/150902/plt1509020030-c.html
2015.9.2 23:10
【詳報】民主議員「ヘイトスピーチは表現の自由に含まれない」 国会で規制法案求める集会
特定の民族などへのヘイトスピーチ(憎悪表現)の規制を求める市民団体主催の集会「STOP HATE SPEECH~今こそ人種差別撤廃基本法の実現を~」が2日、国会内で開かれ、民主、社民、共産各党などの国会議員が出席して参院で審議中の「人種差別撤廃施策推進法案」の早期成立を訴えた。民主党の小川敏夫元法相は「表現の自由は大事だが、ヘイトスピーチが表現の自由に含まれるはずがない」と強調。関西学院大学のキム・ミョンス教授らが自身の差別体験を紹介しながら法案の必要性を訴えた。主な国会議員の発言の詳細は以下の通り。
【民主党・小川敏夫元法相】
参院法務委員会で審議に入った。皆さんは総論賛成で、表だって反対する人はない。賛成とは言っても、私どものように本当に成立させたいという人と、反対と言えないから賛成しているだけの人があぶり出されてきた。しかし、賛成と言っているのだから、賛成という形で法案をまとめていただかなければならない。
表現の自由はもちろん大事だけど、ヘイトスピーチが表現の自由に入るわけではない。いろんな意見もあるが、なんとか4党(自民、公明、民主、維新の各党)協議の中で、最後は国会が一致して、「このヘイトスピーチは許されない」という規制法を成立させようと頑張っている。なかなかパッといかないが、着実に進んでいるような状況だ。
委員会審議というのは、先に(法案が)審議に入ったら、それが終わるまで次に入らないという決まりがある。政府は刑事訴訟法改正案という成立させたい法律があり、「ヘイトスピーチを棚上げして、そっちの審議に入れ」と言うから、「それは冗談ではない。このヘイトスピーチを成立させることの方が先だよ」と頑張っている。
私どもが刑訴法改正案を妨害するために、あれは反対だから良いのだが、刑訴法改正案を妨害するためにヘイトスピーチを利用しているかのような新聞論調もあるが、そうではなく、ヘイトスピーチをしっかり対策・規制する法律を作ろうと思って一生懸命頑張っている。皆さまの日頃の努力にしっかり答えていきたいと思うので、よろしくお願いします。
【共産党・池内沙織氏】
共産党は民族差別をあおるヘイトスピーチは根絶すべきだという立場で、立法措置も含めて政治が果たす重い責任があると訴えてきた。今回、議員立法で提案している法案は大いに国会で議論をすべきだし、国会での審議、現場でのカウンターの皆さまの取り組み、市民団体の運動、自治体の取り組み、研究者のご意見などが積み重ねられてきた到達点をしっかりと踏まえて、議論を重ねていくことがとても大事だと思う。
特に(人種差別の)定義にかかっては、先日、委員会で(共産党の)仁比聡平参院議員が議論をさせていただいたが、「許されないヘイトスピーチとは何か」「差別的な表現とは何か」を明確にしていくことが、ヘイトスピーチを根絶していく大きな力にもなり、また乱用を防ぐことにもつながると思う。私も路上でヘイトスピーチに怒りを表現してきた人間の1人だ。そして差別のない社会で生きていきたいと思う人間の1人だ。オープンな議論をしっかりと重ねて、国会の責任、政治の責任を果たすつもりだ。皆さんとともに頑張ります。
【社民党・福島瑞穂副党首】
議員連盟で法案を議論し、民主党、社民党と糸数慶子参院議員(無所属)と一緒に参院に提出し、今(参院法務委で)審議中だ。採決しないなんて、あり得ない。反対できないけど賛成したくないというか、この採決しないというのがおかしくて、国会に上がった法案はしっかりと議論し、なんとしても国会成立を目指したい。そのタイムリーなときに、こういう会を開いていただいたことに心から感謝する。
ヘイトスピーチは「魂の殺人」だし、何とか止めなければならない。そして、もうひとつ、男女共同参画社会基本法や障害者差別解消基本法など、いろんな基本法がある。男女共同参画社会基本法ができれば、その後、DV(ドメスティック・バイオレンス)防止法ができたり、いろんな法案につながっていく。だから、今回出した法案は理念法で、罰則規定はない。しかし、この人種差別は良くないという、そのためのさまざまな仕組みを作ったり、啓発をしたり、審議会を作ったり、いろいろやりましょうというのが、その次に必ず発展していく。
今日の勉強会に参加して、(関西学院大学教授の)キム・ミョンスさんのお話を聞きながら、実は女性差別撤廃委員会が複合差別について、「日本政府は調査せよ」と言っていて、実は(福島氏が)大臣だったころも、今もさまざまな女性たちと取り組んできて1度も調査していなかった。
今日、話を聞きながら、「そうだ、複合調査をしろと言ってきたが、大本の差別の調査をやってきていないんだ」という当たり前のことだが、複合差別の調査を女性であり、人種差別を受けるということの調査もさることながら、大本の調査が、実態がどうかということも含めて、やはりやっていくべきだし、そのことを生むのが、人種差別撤廃施策推進基本法案であると思う。
まず第一歩を踏み出せば、さまざまな政治的な施策を打っていくことができる。女性差別だって、さまざまな形で取り組んでいるが、ぜひ9月27日の会期末まで、なんとしても安全保障法制、戦争法案や労働者派遣法改正法案など、いろんな点で国会は熱くなっているわけだが、なんとしても今国会、参院法務委員会で採決、必ず可決し、参院本会議で実現できるよう一緒に力を合わせていきましょう。私もその立場で頑張っていく。
【民主党・近藤昭一幹事長代理】
なんとしても差別撤廃基本法を通さなくてはならない。皆さん、ご存じの通り、8月30日、国会の周辺を取り巻いた「安保法制を廃案に」という動き。まさしく、その多くの人たちが戦後築いてきた平和というものを、平和の主義というものを守っていかなければならないという大きなうねりだった。
日本国憲法9条に平和主義がある。一方、日本国憲法に1つ欠けてきたのが人種差別、いわゆる外国人に対する人権の条項というか、そのことだったと思う。そのことについて、ここにいる人たち、カウンターの皆さま、行動を起こしている皆さまに本当に私は敬意を表しているし、そのことをきっちりと国会で法律という形で差別をなくしていく。そのことを形にしなくてはならない。それはずっと戦後抱えてきた課題だ。
私も在日の友人がいるが、友人がその友達に、仲間に投げかけた、その言葉の悲しさというのは、ずっと心に刻んできた。今後、そういうことがないように頑張ってまいりたいと思う。
【民主党・郡和子衆院議員】
いろいろお話を聞かせていただきまして、やはり差別というのは、差別をしてしまっている側には差別が見えないし、感じないし、そういうものだ。この国には、差別する側の人たちがあまりにも多いんだなと感じた。
実は、こんな言い方するとあれかもしれないが、第1次安倍晋三内閣のときに、首相が出版した「美しい国へ」という本。もう古い話になってしまうが、あの中に「美しい国を構成する私たちと彼ら」という言葉が随所に入っていて、私は「こういう風に差別化を図っていく人が、この国の首相なのだ」と、あのときすごい衝撃を受けた。
それが今またここに来て、安保法案もそうだが、こういう状況を生み出しているんだと思うし、さまざまな差別的発言が、差別とみなされないで、いろんなところで(差別がな)されている状況なんだと、すごく悲しくなる。
この法案については、野党の皆さんたちが本当に頑張ってくださって、審議まで入ってきたわけだが、ぜひ多くの方々のお力をいただいて徹底審議を行い、そして成立できるよう後押しを願いたいと思う。先ほど近藤昭一さんがおっしゃっていたが、「民主主義って何だ!」と改めて国会の場でも問わせていただきたいと思っているところだ。
【民主党・江田五月元参院議長】
私は国会議員、最初に当選して38年が過ぎて、ずっとこの間、人権の問題を自分のテーマとしてやってきたつもりだ。障害者差別とか、それなりの前進はあったと思うが、人種差別については、なかなか大変だ。
私自身が法相になったとき、何とかして1歩でも半歩でも、わずか1ミリでも前に進めようと、人権侵害、仲裁関連の法案を、人によっては「そんなムキになって」と悪口を言われることがあるが、それさえできなかった。政権の体力が弱っていたこともあったが、慚愧(ざんき)に堪えないということで、今回は結果を出さないといかないといけないと思っている。
さっき小川(敏夫)さんが、刑訴法改正案のことをちょっと触れたが、これは衆院でも徹底した議論のうちに民主党も賛成して、参院に送られてきているから、これも作らないといけないが、「先入れ・先出し」という原則もあるし、有田芳生参院議員が(参院法務委の)理事なので、またいろいろあると思う。
【民主党・山尾志桜里衆院議員】
衆院法務委員会の筆頭理事を務めている。参院で1回目の議論が本当に先輩議員、同僚議員、また皆さんの大きな後押しで始まって、今か今かと衆院で、この大事な、大事な基本法の審議を送ってこられることを待っているという立場だ。
でも、私も今、参院の1回目の議事録を何度も読み返しているが、自民党の方、公明党の方、他の政党の方も「これが不要だ」「必要ではない」と言える人は誰1人いない。でも、議員同士、こそこそ話すと、「いやー、ちょっと出せなくて」みたいな話になる。「何でなんだろう?」と思ったときに、やはりまず頭に浮かぶのは、自民党の改憲草案の文言だ。
自民党の改憲草案の中では、「公」「権力」を批判したり、攻撃したりする権利は厳しく制約できるようになっている。一方で、この大事な、大事な人種差別撤廃施策推進法案のように、個人を攻撃する表現の自由に対しては甘い。マイノリティーを攻撃する表現については甘い。
でも、私もずっと検察官をやってきて、法律を勉強してきたが、法律、ましてや憲法というものは、小さい立場、弱い立場、少ない立場、こういう人たちを守るのが憲法であり、法律だと思ってやってきた。政府・与党を批判することはいい。でも、本当にその個人を攻撃する表現の自由に一定の歯止めを掛けるということは、絶対にやらないといけないし、皆さんと一緒に大きな、大きなうねりが作られようとしているので、絶対に諦めないで、この基本法を実現したい。ともに頑張ろう。
【無所属・糸数慶子参院議員】
皆さんと一緒にこの法案を提案させていただいたが、実は昨年は有田芳生議員と一緒に国連に参加させていただいた。もちろん、人種差別撤廃施策推進基本法案が成立することを願っている。私は「この差別の中に、沖縄が入っていますか」と本当に言いたくなるような…。歴史的な事実をたどっていくと、「朝鮮人と琉球人はお断り」と言われた、まさに明治政府の沖縄の差別に対する評価は今も変わっていないという事実を国連の中で言わせていただいた。
人種に対する差別という基本的なところで、私も発表させていただいたのは、その差別の最たるものが、今の沖縄の民意にそぐわない基地の押しつけだということを、琉球人、マイノリティーの思いが政府に届いていないということも、一つの差別の表れだということで発表させていただいた。
今回は人種差別撤廃の基本法が本音で参院の中で本当に議論されて、本音で基本法として成立させていかなければ、日本の国は人権として一流大国にはならないということを改めて皆さんと確認し、基本法の成立をぜひ願っていきたいと思う。
©2015 The Sankei Shimbun & SANKEI DIGITAL All rights reserved.
最近のコメント