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人種差別撤廃法案:公明、対案提出へ 自民は方針検討中

人種差別撤廃法案:公明、対案提出へ 自民は方針検討中
毎日新聞 2015年08月24日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/p20150824ddm004010063000c.html
 在日外国人への人種差別を禁止するため、民主、社民両党などが提出した人種差別撤廃施策推進法案が今月4日、参院で審議入りした。野党提案の法案審議入りは珍しいが、与野党とも「ヘイトスピーチは許されない」とする点で一致した。罰則のない理念法で、今後は与党の対応が審議の行方を左右することになる。一方で「表現の自由」との兼ね合いを指摘する意見もある。法案の課題と展望を探った。【林田七恵、小泉大士】
 ◇ヘイトスピーチ根絶、与野党一致
 在日コリアンを標的にするデモや街宣の社会問題化を背景に法案が提出されたこともあり、今月6日の参院法務委員会ではヘイトスピーチに対する批判が相次いだ。自民、公明、民主、維新の4党は19日、法務委所属議員で今後の方向性を話し合う協議会を開き、「ヘイトスピーチは許されない」との認識を共有した。ただ、法成立に向けては与党の出方がカギになる。
 公明党は対案として、差別全般でなくヘイトスピーチの防止に特化する理念法を出す方針を固めた。
 6日の法務委で同党の矢倉克夫議員はヘイトスピーチについて「差別意識や憎悪、暴力をまん延させ、社会の基盤をも揺るがす」と問題視し「マイノリティー(少数者)が何かにおびえながら生きていかねばならない社会はおかしい」と指摘した。さらに、2009年の京都朝鮮第一初級学校(当時)への街宣を人種差別と認定した司法判断を踏まえ「法の保護に値しないと司法が断罪した」「大勢で示威行動をして対抗言論を許さないことは、民主主義の在り方と違う」と述べた。
 一方、法案が禁じる人種差別全般については、社会にどんな差別があるのか、まず実態調査が必要との認識を示した。矢倉氏は毎日新聞の取材に「どのような立法事実(法律の根拠となる事実)があるかの調査や立法の影響について緻密に考えるべきだ。国会全体で合意できるものをつくるには『そうだな』と言ってもらえる根拠が要る」と説明する。
 矢倉氏は党内で現在、ヘイトスピーチの定義を検討しているとして「差別デモを念頭に、表現内容だけでなく態様も併せて考えたい」と話した。公明党は自民党と連携したい意向で、対案の検討と提出に協力を呼びかけている。
 これに対し自民党は、法案の協議に応じつつも対応方針を決めていない。19日の協議会に出席した熊谷大議員は報道陣に、法案の禁止事項は解釈の間口が広いと指摘し「我々も、もっと勉強しなければいけない。継続して話し合いましょうということだ」と語るにとどめた。党内には法案に慎重な声も根強い。
 その中で、猪口邦子議員は毎日新聞の取材に「ヘイトスピーチのない社会に早く、どうたどりつくか考えるべきだ。現状は看過できず、時間的にも急いだ方がいい」と、法案の趣旨に一定の理解を示した。
 6日の法務委では、国民の間で人種差別は許されないとの「問題意識の主流化」を図らなければならないと指摘した。さらに「政治的指導力で、ヘイトスピーチを含む人種差別を完全に禁止するための啓発活動を総合的に強化すべきだ」と語った。
 その上で、法律をつくるのならば基本法として実効性を持たせることが不可欠と主張した。男女共同参画基本計画の策定に関わった経験を踏まえ、差別根絶に向けた基本計画の策定義務を政府に課すよう提案し、「項目立てをしていけば予算措置がやりやすくなり、現場の施策推進につながる」と促す。また、法案が差別の実態を調査して施策を議論する審議会を内閣府に設置するとしている点を挙げ、自身が少子化問題の担当相だった際、省庁横断的な審議官・局長級の議論の場や官邸での会議を開催したとして「それで社会的な認識が一気に深まり、メディアの関心も非常に高まった」と語った。
 ◇拡大解釈防ぐ方策、今後の議論に
 6日の法務委では法案と「表現の自由」との兼ね合いが議論された。ヘイトスピーチの定義を明確化するよう求める意見も出された。
 真山勇一議員(維新)は法案が禁止する差別の定義について「少し具体性に欠け抽象的。範囲が広げられる恐れも感じる」と懸念した。仁比聡平議員(共産)はヘイトスピーチを「社会から特定の方々を排除し、存在を否定するもの」と特徴付けた上で、恣意(しい)的な解釈拡大により法規制が乱用される可能性をなくすため、禁止行為の明確な定義を求めた。マイノリティーの言論規制に利用される恐れを指摘する声も上がった。
 外務省によると、経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中、30カ国が人種差別や差別の扇動に対して刑事罰を設けている。一方で、表現の萎縮や規制乱用についての懸念は海外でも指摘されてきた。
 こうした懸念に対し国連人種差別撤廃委員会は13年、各国が考慮すべき点を「一般的勧告」として採択し、不公正に対する抗議や社会の不満、反対を抑圧しないよう求めた。ヘイトスピーチに該当するかどうかは内容や発言者の地位などを踏まえて判断し、重大な差別のみ犯罪とするよう明記した。また、歴史的事実に関する意見は規制しないよう指摘した。
 今回の法案は、罰則を設けない理念法だ。人種差別の法規制について研究してきた師岡康子弁護士は「一般的勧告や京都朝鮮第一初級学校事件の判例などを基に差別表現のガイドラインを作ることで、萎縮効果を抑えられる」と説く。
 師岡弁護士はガイドラインで「差別とはマイノリティーに対するもの」と明記した上で、「動物や虫に例える」「生まれながらに邪悪な、あるいは劣った集団のように表現する」「絶滅や追放を訴える」など差別表現の類型を例示するよう提言する。法律上の差別表現の定義に関しても「『人種等を理由とする侮蔑、威嚇』『排斥』といった言葉で明確化するなど工夫の余地はある」と話す。
 与野党の協議会が設けられ、法案を修正し全会一致での可決を模索する動きもある中、拡大解釈を防ぐ方策は今後の議論に委ねられている。
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 ◇国連、差別全般に法整備勧告
 19日の4党による協議会では、人種差別全般までは話が及ばなかったという。ただ、国連はヘイトスピーチに限らず、差別をなくすための幅広い法整備を日本に求めている。
 昨年8月の国連人種差別撤廃委員会はヘイトスピーチ規制のほか、技能実習生ら外国人労働者の権利保護▽朝鮮学校の高校無償化▽アイヌや琉球・沖縄の先住民の権利保護−−なども挙げ、「人種差別を禁ずる特定かつ包括的な法律を制定する」よう勧告した。国連人権委員会も昨年7月、差別を助長する行為を禁止、処罰する法整備を勧告している。
 実際に、外国籍を理由に賃貸住宅への入居を拒んだり、サッカー場で「JAPANESE ONLY」と書いた横断幕が掲げられたり、在日韓国人の男性が公益財団法人の採用面接で勤務先の学校について「北か、南か」と聞かれたり、差別デモ以外の人権侵害も後を絶たない。
 在日外国人の生活や教育を支えてきた大阪市のNPO「コリアNGOセンター」の金光敏事務局長(43)は「街頭で差別を連呼するような行為に限定し『許さない』と定めるだけで、他の差別を放置するようなことがあってはならない」と訴える。
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 ◇人種差別撤廃施策推進法案の骨子
▽特定の人に対し、人種や民族を理由とする差別的な取り扱いや言動をしてはならない
▽人種や民族が共通する不特定の人に対し、著しく不安や迷惑を与える目的で、公然と差別的言動をしてはならない
▽国と地方自治体は差別防止施策を策定する
▽政府は、施策について国会に毎年報告する
▽国は、差別実態を明らかにする調査を行う
▽有識者でつくる「人種等差別防止政策審議会」を内閣府に置く

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