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悪循環 自治の空洞化  毎日新聞 2015年05月01日

記者の目:統一地方選取材を終えて/上=和田浩幸(東京社会部、現・さいたま支局)
毎日新聞 2015年05月01日 東京朝刊

http://mainichi.jp/shimen/news/20150501ddm005070018000c.html

 ◇悪循環 自治の空洞化

 このままでは地方自治が崩壊してしまうのではないか。深刻な人口減少や高齢化に苦しむ全国各地の自治の現場を訪ね、「自治はどこへ」というタイトルで昨年12月から随時報告してきた。地域の衰退で自治の担い手が減り、選挙で「無投票」が増え、その無投票がさらに自治の活力を奪う−−という悪循環を取材で目の当たりにした。そんな自治体の多くは、安倍政権が旗を振る「地方創生」の出発点にすら立てそうにない。26日に終わった統一地方選の結果も踏まえての実感だ。

 記者駆け出しのころから、首長選や議員選の結果を伝える小さな記事を地域面に何度も書いてきた。小さな自治体で度々起こる無投票は、関係者があうんの呼吸で事前に代表者を決め、人間関係が濃密な社会に波風を立てないという構図が常識だと思い込んでいた。

 何かがおかしいと感じたのは、昨年8月に取材した東京都の神津島村議補欠選挙がきっかけだった。改選数2で立候補者は1人。翌月、村長選と同時に行われた改選数1の補選には立候補はなかった。当選確実で、なぜ誰も手を挙げないのかという私の疑問に、村の関係者は「すぐに改選されるので誰もやりたがらない」と解説した。

 ◇議員成り手なく無投票選挙増加

 ところが、統一選の後半戦として先月21日に告示された村議の本選挙は、議員定数を10から8に減らしたにもかかわらず立候補は7人にとどまり、候補者が定数に届かない「欠員無投票」となった。4年の任期が与えられても、議員の成り手がいないのだ。

 今回、統一選の議員選の無投票は104市町村に上り、1176人が有権者の審判を受けずに議員となった。前回統一選より11市町村167人増加している。欠員無投票は神津島村を含む4町村議選で、前回より1自治体増えた。

 私は21日の村議選告示を前に、かつて日航機が墜落した御巣鷹の尾根のふもとの群馬県上野村に入った。人口約1300人の村では議員選に向けた動きが鈍く、告示2週間前に駆け込みで定数を10から8に減らした。結果的に9人が立って選挙戦になったが、定数削減がなければ欠員無投票になるところだった。

 「はやり病への頓服薬。その場しのぎに過ぎない」。ベテラン議員の仲沢太郎さん(79)は、村議会で定数削減にただ一人反対した。議員報酬は月額14万6300円に抑えられているが、村民の間では一層の議会改革(リストラ)を求める声が強まっていた。だが、仲沢さんは「報酬を減らしてでも定数は維持すべきだった」と主張する。「人口が減り続ける村で、政策を論議する人数を減らすのは本末転倒だ。欠員無投票となることより、担い手不足を根本的に解決しようという議論がないことの方が問題です」

 村議選はかつて10回以上連続で選挙となり、投票率も毎回90%を超えた。山間部の村民は戦後、高投票率を背景に政治家を動かし、道路やトンネルを通して生活を向上させてきた。1990年ごろから人口減対策の一環でいち早く移住者を受け入れ、現在は人口の18%に当たる約230人が定住する。村には将来を見越して政策を打ち出してきた伝統がある。そんな上野村ですら、自治が土台から揺らいでいる。

 ◇夜間・休日議会、欧米では導入

 生計が成り立たない低額報酬は議員不足の一因かもしれない。だが、それが問題の本質ではないだろう。長崎県小値賀(おぢか)町は満50歳以下の議員の報酬を月額18万円から30万円に引き上げたが、町議選で条件を満たす候補は出てこなかった。山形県庄内町では2013年、報酬増を求める議会に対し、日当のみの「ボランティア議員」による夜間・休日議会の構想を町長が逆提案した。実現はしていないが、仕事を続けながら自治も担えるとして、欧米などでは既に導入されている制度だ。

 告示日に取材した群馬県川場村議選で、午後に立候補を決意し無投票を阻止した42歳の男性は私に言った。「人材はいるが、年が若いと『まだ早い』という雰囲気が議会にある」。議会側には古い慣習や体質を変える努力が不足しているということだろう。

 一方で、担い手不足が若い世代にチャンスを与えている現実もある。今回の統一選ではないが、カネも地盤もないが当時26歳の青年は、「就活選挙」と陰口をたたかれながら山形県酒田市議に当選し、ベテラン議員も一目置く存在となった。資質を欠く人物が当選するリスクもあるが、有権者の見る目が確かなら、有望な人材が育つはずだ。

 自治の空洞化に歯止めをかけるため何が必要か。議論に必要な材料を今後も探し、伝えていきたい。

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