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「貧困ビジネス」の実態…劣悪環境と抜け出せぬ仕組み

これが「貧困ビジネス」の実態…劣悪環境と抜け出せぬ仕組み

産経新聞 3月8日(日)8時35分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150308-00000507-san-soci

 埼玉県内では昨年10月、生活困窮者のための「無料・低額宿泊所」の売上金を隠し、所得税約6300万円を脱税したとして、低額宿泊施設「ユニティー出発(たびだち)」を運営する和合秀典被告=所得税法違反罪で起訴=が逮捕された。記者は、いわゆる「貧困ビジネス」トラブルの被害者を支援する団体が主催した「貧困ビジネスツアー」に参加。宿泊所を訪れ、元居住者の話を聞くことで、改めて貧困ビジネスの仕組みの「巧妙さ」に驚かされた。(さいたま総局 菅野真沙美)

■部屋を仕切るベニヤ板

 「ここもそうです」。貧困ビジネス被害者の支援などを行う、弁護士・司法書士・社会福祉士などの有志で構成されている市民団体「反貧困ネットワーク埼玉」の案内で、戸田市内のとある宿泊所の側に車を止めた。

 ツアーで訪れた他の数カ所の宿泊所も同様だが、施設は一見すると普通のアパートに見える。周囲もごく普通の一戸建てや工場が並び、劣悪な環境という印象は全く受けない。

 しかし「あそこから中が見えるでしょう」。そう示され窓に目を向けると、さほど広くないと思われる薄暗い室内を、ベニヤ板のようなもので仕切っている様子がうかがえた。また、ほとんどの部屋にカーテンがかけられておらず、干した衣類が丸見えなのも印象的だった。

■「上の者に確認します」

 反貧困ネットワーク埼玉のスタッフが入り口で声をかけると、一人の男性が現れた。居住者だという。スタッフが「無料電話相談のチラシを入居者に配らせてほしい」と申出ると、応対した男性は「上の者に確認してみないと。一応受け取っておきます」と答えた。「中を見せてもらえないでしょうか」。報道陣が声をかけると再び「上の者に確認してみないと」。しばらくやりとりは続いたが、結局中に入る許可は得られず、その間に初老の男性が2、3人、うつむいたまま足早に横を通り過ぎていった。

■「何のために生きているのか」

 さいたま市見沼区内の宿泊所に入居していた60代の男性は、「何のために生きているのかという気持ちになった」と入居当時を振り返った。男性は支給される生活保護費約12万円のうち、約11万円を施設に支払っていた。施設ではそのカネのうち、保護費支給日に1万円、その後は2日に1回1千円が支給されるという。「仕事を探すためのカネだと説明されるが、実際は部屋でじっとしているぐらいしかできない」

 同市岩槻区の施設で生活していた40代後半の男性は、仕事に失敗しホームレス生活をしているときに宿泊所職員に声をかけられた。施設の環境は「プレハブを改造した3畳程度のスペースに生活していた。夏が暑く、冬は寒い」。風呂は週に3回、決められた時間のみ許されていたという。

■二言目には「出て行け」

 男性らは一度施設に入ってしまうと抜け出すのが困難な状況についても語った。40代男性は「もう一度定職につこうとしても、ホームレスだった時期があると書類だけで不採用にされてしまうことが多い。施設は何もサポートをしてくれない」。面接に行くカネを工面できないこともある。60代男性も「二言目には職員から『出ていけ』と言われる」と話す。「『住所がないと公的支援を受けられなくなるが、それでもいいのか』と脅される。そう言われてしまうと、頭の中は『今晩どこに行けばいいんだろう』という思いでいっぱいになってしまう」

■被害解決に向けて

 反貧困ネットワーク埼玉は「行政の側も悪質な無料・低額宿泊所を便利に使ってしまっていて、居住者の劣悪な環境に目をつぶっている点があることは否めない」と指摘する。貧困が拡大する中で、福祉事務所のケースワーカーが不足し、自立支援が十分にできないなどの悪影響が生じている。一般のアパートへの入居となれば、ケースワーカーは家庭訪問を行って状況の確認を行い、トラブルに対処する必要があるが、宿泊所にいれば施設が代行してくれることも貧困ビジネスを助長させる要因となっている。

 同団体は貧困ビジネス被害者に対する相談や、アパートへの入居斡旋(あっせん)などを行っている。しかし、宿泊所側が団体の発信している情報を遮断し、入居者に知らせないことも多いため、福祉事務所へ協力を求めるが、拒絶されることもあるという。「一部自治体は宿泊所と悪い意味でのもたれ合いの関係になってしまっている。負担増を覚悟で対応に当たらなければ貧困ビジネスによる被害は拡大し続ける」と行政に対しても改善を求めた。
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