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高裁も人種差別と初判断~京都朝鮮学校ヘイトスピーチ事件~ 京都支部 谷文彰

自由法曹団 団通信1497号(2014年8月11日)
http://www.jlaf.jp/tsushin/2014/1497.html#04

高裁も人種差別と初判断
~京都朝鮮学校ヘイトスピーチ事件~

京都支部  谷   文 彰

一 控訴審で初めて人種差別性を認定した大阪高裁
 本年七月八日、大阪高等裁判所第八民事部は、「在日特権を許さない市民の会」(通称、「在特会」)らによる控訴をすべて棄却する判決を下した。この判決は、昨年、京都地方裁判所が、在特会らによるヘイトスピーチに対して日本で初めて違法性と人種差別性を認定し、高額の損害賠償と学校周辺での街宣等の禁止を命ずる判決を下した事件の控訴審判決として下されたものである(地裁判決の概要は、平成二五年一一月一日付団通信一四六九号を参照されたい。なお、学校側は控訴していない。)。
 大阪高裁は単に在特会らの控訴を棄却しただけではない。内容としても、「人種差別」であることを明確に認め、子どもたちのいる場所で行われたことやインターネット上に動画をアップロードしたことといった事案の特殊性を適切に評価し、さらには、学校は「教育業務として在日朝鮮人の民族教育を行う利益を有する」と認定するなど、画期的だった京都地裁判決をさらに前進させる内容となっている。
 ヘイトスピーチを抑制し、人種差別を根絶し、何よりも子どもたちが安心して学ぶことのできる環境を護っていくために、今回の判決もまた、大きな意義を有していることは間違いない。
・大阪高裁判決の概要
 まず大阪高等裁判所は、在特会らの言動について、「本件示威活動における発言は…人種差別撤廃条約一条一項にいう『人種差別』に該当する」と認定した。高等裁判所レベルで、このように人種差別撤廃条約一条一項の「人種差別」に該当するとの判断がされたのは初めてのことである。
 その上で、人種差別行為を無形損害の算定にどのように考慮すべきかという点については、「私人間において一定の集団に属する者の全体に対する人種差別的な発言が行われた場合には…これによって生じた損害を加害者に賠償させることを通じて、人種差別を撤廃すべきものとする人種差別撤廃条約の趣旨を私人間においても実現すべきものである」、そのような「人種差別撤廃条約の趣旨は、当該行為の悪質性を基礎づけることになり、理不尽、不条理な不法行為による被害感情、精神的苦痛などの無形損害の大きさという観点から当然に考慮される」と述べる。そして、在特会らの「本件活動は、その全体を通じ、在日朝鮮人及びその子弟を教育対象とする被控訴人に対する社会的な偏見や差別意識を助長し増幅させる悪質な行為であることは明らかである」とし、さらに、インターネット上に動画がアップロードされたことによって「今後もその被害が拡散、再生産される可能性があること」や「児童・園児には当然のことながら何らの落ち度がないにもかかわらず、その民族的出自の故だけで、控訴人らの侮蔑的、卑俗的な攻撃にさらされたものであって、人種差別という不条理な行為によって被った精神的被害の程度は多大であった」ことなども考慮して、京都地裁の認定した無形損害額(合計一一〇〇万円)は正当であると判示した。被害の実情に真摯に目を向け、被害者に寄り添った丁寧な判断といえよう。
 さらに、学校側が最も重視していた民族教育事業については、「人格的利益の内容として、学校法人としての存在意義、適格性等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を保持し、本件学校における教育業務として在日朝鮮人の民族教育を行う利益を有する」、「本件活動により、本件学校における教育事業が妨害され、本件学校の教育環境が損なわれただけでなく、我が国で在日朝鮮人の民族教育を行う社会環境も損なわれた」などとして、朝鮮学校の行っている民族教育が法的保護の下にあると明確に認めて、それが大きな影響を被ったことを慰謝料算定や差止めの成否を判断するにあたって重視した。民族教育事業が人格的利益の内容をなすとの判断も、初めてのことである。
 他方で、在特会らの、公益を図る目的があり、表現の自由の範囲内として違法とはならないとの主張に対しては、「本件学校における教育業務を妨害し、被控訴人の学校法人としての名誉を著しく損なうものであって、憲法一三条にいう『公共の福祉』に反しており、表現の自由の濫用であって、法的保護に値しない」と一蹴している。在特会らの本件でのヘイトスピーチ等が憲法秩序の下で許されない、憲法的価値を有しない行為であると認めたといえ、地裁判決と同様の立場に立っている。
・今後に向けて
 前回の報告の際、地裁判決が予想以上に画期的であったため代理人としては悩ましい部分もあるなどと述べたが、すべて杞憂に終わった。ヘイトスピーチによる被害は未だとどまることを知らず、国連もヘイトスピーチに対して適切な対応を取るように日本政府に対して求める中で、法曹関係者としても何らかの対応が必要なのではないか。裁判所には、もしかするとそうした問題意識があったのかもしれない。
 もちろん高裁判決はマスコミでも大きく報道され、ヘイトスピーチに強い警鐘を鳴らすものとして社説等でも高く評価されている。
学校関係者も、「希望の一歩となった」、「子どもたちの未来のために、裁判をしてよかった」、「朝鮮人として学び、朝鮮の言葉を話すということを、日本の人たちは守ってくれるのだと子どもらに伝えたい」と述べてくれた。あの日、卑劣な街宣にさらされた子どもたちも、「在日朝鮮人として誇りを持って生きていけます」、「これからは自分も学校をまもるためにがんばります」と話してくれている。「日本人」によって受けた傷を「日本の」裁判所に訴えることには、周りからは想像もできないような苦悩と葛藤があっただろう。その中で勇気を振り絞って立ち上がられたみなさんに、心から敬意を表したい。今回の判決も機に、深く傷つけられた子どもたちの心が少しでも癒されることを改めて願うばかりである。
 在特会側は早々に上告し、裁判はまだ続く。みなさまのこれまでのご支援・ご協力に感謝申し上げるとともに、より一層のご支援・ご協力を改めて心よりお願いするものである。

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