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2014年7月に作成された記事

佐世保高1女子同級生殺害事件の犯罪心理学

佐世保高1女子同級生殺害事件の犯罪心理学:人を殺してみたかった・遺体をバラバラにして解剖したかった

http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuimafumi/20140729-00037776/

碓井 真史 | 社会心理学者/新潟青陵大学大学院教授/スクールカウンセラー
2014年7月29日 21時46分

「人を殺してみたい解剖したい」心理、そしてなぜ友人を? (写真はイメージ)
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■長崎佐世保高1女子殺害事件:「人を殺してみたかった」「人を解剖してみたかった」「遺体をバラバラにしてみたかった」

とても勉強ができ、スポーツもでき、立派な家庭で育ち、県内有数の進学校に通う女子生徒(16)。その有能な女生徒が、同級性の女生徒を殺害しました。子どもが子どもを殺す。最悪の悲劇的犯罪です。

長崎県佐世保市で県立高校1年の松尾愛和(あいわ)さん(15)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された同級生の女子生徒(16)~捜査関係者によると、遺体は首と左手首が切断され、胴体の一部も切られていた。これまでの県警の調べに対し、女子生徒は「すべて私がやりました」などと殺害を認め、動機については「人を殺してみたかった」「遺体をバラバラにしてみたかった」といったことを話しているという。

出典:女子生徒「人を殺してみたかった」 佐世保の同級生殺害 朝日新聞デジタル 7月28日
一般の殺人動機の多くは、人間関係のもつれです。つい、カッとなって殺してしまったというものです。または、金目当ての殺人などもあるでしょう。これらは、もちろん悪いことですが、私たちにも理解できる動機です。

しかし犯行動機として、「人を殺してみたかった」「人を解剖してみたかった」「遺体をバラバラにしたかった」というのは、一般の人の理解を超えています。ここが、彼女の「病理性の高さ」と言えるでしょう。

おそらく、これらの供述はウソではないでしょう。彼女は、ただ殺したかった。そして、遺体を解剖しバラバラにしたかったのでしょう。

(このような供述は、どれほどご遺族の心を苦しめることでしょう。)

■人を殺してみたかった

普通の動機がない殺人の中には、「快楽殺人」があります。人を殺すことが快楽なのです。多くの場合、快楽殺人者は男性で、殺すことに性的快感を得ています。

今回は、性的快感を感じるような狭い意味での「快楽殺人」ではないでしょう。性的快感を得るという目的すらなく、ただ殺したかった「純粋殺人」ではないかと考えられます。

他の動機がなく、殺すこと自体が目的という意味での、「純粋殺人」です。

「人を殺してみたかっか」という供述で思い出すのは、
2000年に発生した、17歳高校3年生男子による愛知県豊川市主婦殺人事件(愛知体験殺人事件)です。

彼の犯行動機が、「人を殺してみたかった」「人を殺す体験がしたかった」でした。

彼も、今回の容疑者女生徒と同様に、成績優秀な高校生でした。彼は、「他人への共感性の欠如、抽象的概念の形成が不全、想像力の欠如、強いこだわり傾向」があり、「高機能広汎(こうはん)性発達障害あるいはアスペルガー症候群」とされ、医療少年院へ送致されました。

(アスペルガー障害だからといって、危険な犯罪を犯すわけでは決してありません。)

■遺体をバラバラにしてみたかった

バラバラ殺人事件は、その衝撃度から、きわめて残虐な犯人像を思い描かれます。しかし多くの場合、遺体を切断する理由は、単純です。遺体を処理したいが、重くて運べないというものです。

しかし、今回の遺体損壊は、身元を隠すためでもなく、遺体を処理するためのものでもありません。

容疑者の女生徒は、小動物の解剖をしていたと伝えられていますが、人間のこともバラバラにしてみたいと思ったのでしょう。首と手首の切断に加えて、胸から腹部にかけてもお大きく切開されていたとも報道されています。

(補足:4/30の報道によれば「ネコを解剖したことがあり、人間でもやってみたかった」と供述)

長崎・佐世保市で、高校1年生の女子生徒が同級生を殺害した事件で、逮捕された少女は「人を解剖してみたかった」と供述しており、遺体の腹部には切られた跡が残されていた。

出典:佐世保同級生殺害 遺体の腹部には切られた跡 フジテレビ系(FNN) 7月29日
この供述から思い出す事件は、2007年に発生した、高校3年生の男子による、会津若松頭部切断母親殺害事件があります。

この少年も優等生でした。

彼は供述しています。
「もっと(母親の遺体を)バラバラにするつもりだったが、ノコギリで切断する音が大きく、(同居の)弟に気づかれると思ってやめた」
「死体を切断して飾ってみたかった」
「グロテスクなものが好きだ」
「母親は好きでも嫌いでもない。恨みはない」
「(殺害するのは)弟でも良かったが、たまたま母親が泊まりに来た」
「遺体を切断してみたかった。だから殺した。だれでもよかった」
「誰でもいいから殺そうと考えていた」
「戦争やテロが起きないかなと思っていた」

この少年は、「比較的軽度な精神障害」があり「障害に対する充分な治療とともに、長時間継続的な教育を施す必要がある。その過程で真の反省を促し、更生させることが望ましい」とされ、医療少年院送致となりました。

家裁は、少年を次のように表現しています。

「少年は障害により、高い知能水準に比して内面の未熟さ、限局された興味へこだわる傾向、情性の希薄さ、他者への共感性が乏しいなどの特質があり、自分の劣等感を刺激されると不満などを蓄積する傾向がある。」

今回の事件の少女も、これまでの事件で「殺してみたかった」「バラバラにしたかった」と語った加害者少年達と、似たような特徴を持っていたのかもしれません。

■小学校時代の給食薬物混入事件

今回の佐世保高1女子殺害事件の容疑者女生徒は、小学校時代にクラスメイト複数の給食に複数回「漂白剤」を入れるという事件を起こしています。

そのときの動機は、報道されていないのでわかりません。

その同級生に対する怒りや恨みがあったのかもしれません。

あるいは、「毒を入れてみたかった」「毒を飲むとどうなるか、観察してみたかった」のかもしれません。

2005年に、静岡で高校1年の女子生徒によるタリウム母親毒殺未遂事件が起きています。

彼女も優等生です。県内でも有数の進学校に通い、化学部に所属していました。

この女生徒は、母親に毒物であるタリウムを与えながら、ネット上のブログで犯行の経緯を日記風に記録していました。内容は、事実と創作が混ざっていたようです。

母親との間に特別な確執はなく、母親のことを、「好きでも嫌いでもない」と語っています。

この事件も、「少女は幼児期から発達上の問題があり、人格のゆがみも認められる」とされ、医療少年院送致となりました。

類似事件で世界的に有名なのが、家族や友人を殺して記録をとっていた「グレアム・ヤング連続毒殺事件」であり、映画化もされています(「グレアムヤング毒殺日記」)。

■なぜ友人を殺害したのか

今回の事件の被害者は、容疑者の友人です。自宅に1人で遊びにくるような関係です。なぜ、この友人を殺害し、遺体を傷つけたのでしょうか。

可能性は、いろいろ考えられます。

・激しい争いがあった。

・激しい争いはなかったが、逆恨みした。

・争いはなかったが、大切な友人だからこそ、何かの理由で裏切られたと感じて絶望して殺害した。

・トラブルは何もなく、嫌いでもなかったが、好きでもなく、身近にいたので、殺してバラバラにした。

上記で紹介した事件も、誰でもいいから殺したかったと語り、そして家族や友人を殺害しています。

■容疑者少女の病理性:事件はなぜ起きたか

事件の背景として、彼女には、何らかの発達上の障害や、パーソナリティーの障害があったのかもしれません。

その彼女の中に、異常な空想が広がっていったのでしょう。人を殺すこと、そして遺体を解剖しバラバラにすることへの欲求が強くなっていったのでしょう。それは、一般の人には理解できない異常な好奇心です。その悪魔のような欲求を、彼女は、小動物の解剖などをしながら何とか抑えていたのかもしれません。

しかし、やさしかったお母さんが亡くなります。家庭環境が大きく変わります。その結果、ぎりぎりのところで保たれていた心のバランスが崩れてしまったのかもしれません。

神戸の酒鬼薔薇事件でも、やさしかったおばあちゃんがなくなった後、彼はネコ殺しを始め、ついに殺人に至いたり、幼児を殺害して遺体を切断する事件を起こしています。

■命を大切にする教育の限界と私たちの課題

佐世保市、長崎市では、10年前にも、子どもが子どもを殺す事件が起きています(2003年:長崎男児誘拐殺人事件・2004年:佐世保小6女児殺害事件)。

佐世保市長崎市で、長崎県全体で、10年前の事件以来、命を大切にする教育が行われてきました。これらの教育は、もちろん意味があったと思います。しかし、10年前の事件も、今回の事件も、酒鬼薔薇事件なども、病理性の高い加害者による事件です。

この病理性は、道徳教育によって改善するようなものではありません。一般の学校教育、家庭教育では、なかなか防止できないものでしょう。とても難しいのですが、給食異物混入事件など子どもの頃にトラブルを起こしたとき、それを一つのサインとしてとらえ、心理的、精神医学的な個別対応がもっとできていたらと思います。

そして、問題を抱えている少年達が犯罪を実行しないですむ、環境づくりでしょう。

今回の事件でも、学校を欠席しがちで一人暮らしの女子生徒の部屋を、先生方が定期的に訪問していました。関係者は努力していました。それでも事件は起きてしまいました。

ただ、もしも大好きなお母さんが生きていて、以前と変わらぬ家庭環境が続いていれば、今回の殺人事件は起きていなかったかもしれません。

彼女も家庭のことで悩んでいたでしょう。自分の心のゆがみのことでも、悩んでいたかもしれません。思春期、青年期の自分探しに失敗したのかもしれません。

犯罪への特効薬はありません。重い刑罰も、今回のように逃亡を考えていない加害者にはあまり効果がないでしょう。

それでも、愛されている環境、愛を実感できる人間関係、やりがいのある学校生活や仕事、楽しい趣味など。これらの「社会的絆」が、どんな場合も犯罪防止につながるでしょう。

今回の女生徒も、医療少年院送致になるかもしれません。犯罪を犯したのですから、制裁を受けるのは当然です。そしていずれ、社会に戻ってきます。心理的、医学的治療を施し、真に反省させるとともに、再犯を防止するためにも、社会的絆が必要です。

事件は起きてしまいました。

私たちが考えるべき事は、被害者の冥福を祈るとともに、被害者側の人々の保護と支援、学校の生徒たちなど傷ついている関係者の保護と支援、そして類似犯罪の防止に努力する事ではないでしょうか。

子どもを犯罪被害から守りましょう(犯罪から子どもを守ろう:岡山誘拐監禁事件から)。

子どもが加害者にならないように努力しましょう。

それは、トラブルが起きたときに、ただ穏便にすますことではありません(「子どもを守る」の本当の意味は?:心理学者が伝える正しい子どもの「傷つけ方」)。

そして、事件の教訓を生かし、少しでも光り輝く社会を作っていきたいと思います。

(加筆:7/29,22:35)
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犯罪防止
長崎・佐世保高1女子同級生殺害事件の犯罪心理学:教訓はなぜ生かされなかったか(事件の第一報を聞いて)

有能な加害者の心理
有能な人が人生で失敗するとき:犯罪・非行・不適応:大学院出身の岡山倉敷女児誘拐監禁事件容疑者・進学校の殺人者

被害者保護
ネットと世間に流れる「少女はなぜ逃げなかったか」に答える:岡山小5少女誘拐監禁事件被害者保護のために

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『なぜ少年は犯罪に走ったのか』碓井真史著 ワニのNEW新書
17歳愛知体験殺人・17歳佐賀バスジャック事件・15歳大分一家6人殺傷事件など

『誰でも良いから殺したかった:追いつめられた青少年の心理』碓井真史著 KKベストセラーズ
秋葉原通り魔事件を中心に

碓井 真史
社会心理学者/新潟青陵大学大学院教授/スクールカウンセラー
東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。テレビ新潟番組審議委員。好物はもんじゃ。HP『こころの散歩道』は総アクセス数5千万。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』。監修:『よくわかる人間関係の心理学』など。

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国連自由権規約委員会は日本政府に何を求めたか 海渡 雄一(弁護士・日弁連自由権規約WG座長)

国連自由権規約委員会は日本政府に何を求めたか
=死刑・代用監獄・慰安婦・秘密保護法・ヘイトスピーチ・技能実習生・福島原発事故=
http://www.labornetjp.org/news/2014/0730kaido

      海渡 雄一(弁護士・日弁連自由権規約WG座長)

内容

第1 自由権規約委員会とは

1 本論考作成の目的
2 刑務所改革と自由権規約委員会
3 国連の複合的な人権システム
4 自由権規約委員会の第6回政府報告書審査

第2 審査の概観と国際人権保障に関する課題

1 これまでの課題と新たな課題
2 進まぬ国際人権保障システムの更新と克服の方向性―個人通報と国内人権機関
3 日本政府の対応が評価された事項

第3 主要事項として取り上げられた代用監獄と死刑制度

1 袴田事件にふれた発言が3人の委員からなされた
2 代用監獄の廃止を明確に求めた勧告
3 死刑制度の廃止を真剣に検討せよ

第4 表現自由と知る権利の危機に警鐘

1 人権保障には厳しい制約を
2 秘密保護法は情報へのアクセスの権利を定めた規約19条を満たしていない

第5 ジェンダーと性暴力、性的マイノリティについて

1 ジェンダー平等について
2 ジェンダーに基づく暴力及びドメスティック・バイオレンス
3 性的マイノリティ
4 慰安婦問題をめぐって

第6 外国人の人権と人種差別をめぐる課題

1 ヘイトスピーチの処罰を法制化せよ
2 人身取引と技能実習制度について
3 難民・入管収容など
4 ムスリムに対する監視について

第7 マイノリティの人権とその保護

1 精神病院における非自発的入院について
2 子どもに対する体罰
3 先住民
4 福島原発事故被害者

第8 審査を踏まえた政府と私たちの課題

1 かみしめるべきロドリー議長の最終発言
2 次の政府報告書提出期限は2018 年7 月31 日
3 フォローアップ条項に選ばれた死刑,慰安婦,技能実習生,代用監獄
4 政府との建設的な対話を深め、困難な状況でも前進を目指そう

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「少女はなぜ逃げなかったか」

ネットと世間に流れる「少女はなぜ逃げなかったか」に答える:岡山小6少女誘拐監禁事件被害者保護のために

碓井 真史 | 社会心理学者/新潟青陵大学大学院教授/スクールカウンセラー
2014年7月21日 20時22分   

http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuimafumi/20140721-00037585/

■岡山小6少女誘拐監禁事件

被害者の少女は無事に保護されました。

岡山県で小学5年の女の子が行方不明になった事件で、藤原武容疑者(49)が監禁の疑いで逮捕されました。~捜査員が窓ガラスを割って突入。すると、部屋で布団の上に寝た状態でテレビを見ていた女の子と、脇のベッドに座っている容疑者を発見。捜査員が女の子の名前を問い掛けると、女の子は「はい」と答えたということです。
出典:岡山小5女児監禁 事件解決までの経緯を詳しく解説 テレビ朝日系(ANN) 7月21日
発見時の様子は、「布団の上に寝た状態でテレビを見ていた」と報道されています。

この報道を受け、「少女はなぜ逃げなかったのか」という疑問が出ているようです。ネット上でそんな発言をしている人は、悪気は全くないと思いますが、監禁被害者に対するこのような発想は、被害者と家族をさらに苦しめるでしょう。

■誘拐時の状況

藤原容疑者は、容疑を認めたうえで、犯行の動機について、「少女に興味があり、自分好みの女の子に育てたかった」と供述していることが新たにわかった。~女の子を「自分の妻です」と紹介し、言い逃れをしようとしたという。~女の子を連れ出した際は、刃物のようなものを突きつけて脅し、連れ出した~
出典:岡山・女子小5生監禁 逮捕の49歳男「少女に興味があった」 フジテレビ系(FNN) 7月21日
犯行動機は、営利誘拐等ではありませんでしたが、非常に自己中心的な動機です。そして、刃物で脅して少女を誘拐しています。

大人でも、どうでしょうか。突然、自分よりずっと大きくて力のある人が目の前に表れて、刃物で脅す。どんなに大きな恐怖と不安でしょうか。

この相手の言いなりになるしかないでしょう。現実に、刃物で刺されることの恐怖もあるでしょう。さらに一般的に言って、子どものなどの場合は、大きな相手に強く言われてしまうと、逆らえないことがあります。ヘビの前のカエルのような状態です。

車に無理矢理乗せられ、知らない家に連れて行かれる。これは、死の恐怖です。どれほど怖かったでしょう。

■監禁時の様子

営利誘拐であれば、ロープで縛って監禁するとった方法が取られるでしょう。犯人は、最初から短期の監禁しか考えていませんし、被害者に嫌われても問題はありません。

しかし、今回のような長期監禁を考える犯人は違います。今回の事件の詳細はまだ不明であり、一般論ではありますが、長期監禁事件の犯人は、被害者にやさしくします。

彼らは、力づくで監禁するだけでは満足しないのです。犯人としては、被害者と仲良くしたい、相手がすすんで自分と一緒にいるようにしたい(そう思いたい)と願っています。だから、相手が指示に従っている限りは、やさしくするのです。

ただし、その優しさは、決して本当の意味での相手への愛ではありません。とても自己中心的な思いの中での、相手へのサービスです。

それは、大きな組織による監禁、洗脳、マインドコントロールなどの場合も同様です。相手に言うことを聞かせるためには、恐怖や激しい罰だけではなく、優しさを与えます。それが、相手を支配する有効な方法です。

おそらく今回の事件でも、犯人は被害者にお菓子を与えたり、テレビを見せたりしていたのでしょう。

■なぜ逃げられなかったのか

そのように鉄の鎖で縛られているのではないなら、「なぜ逃げられなかったのか」という疑問を持つ人がいます。被害者の方に何か問題があったのかと想像する人さえいるでしょう。

しかしそれは、とんでもない誤解です。

一般的に言って、被害者少女は「逃げなかった」のではなく「逃げられなかった」のです。

刃物を突きつけられ、力づくで誘拐監禁され、閉じ込められている。逃げようとしてひどい目に合ったり、逃げようとすればひどい目に合わせるぞ脅されたりするでしょう。そして、言うことを来ている限りは、縛られず、食事も与えられる。

そんな状況で、アクションドラマの主人公のように逃げ出すことなどできるでしょうか。体がロープで縛られなくても、心がロープで縛られて、人は逃げられなくなるのです。

もしも被害者少女が、取り乱し、大騒ぎをしていたらどうでしょうか。これまでも多くの犯罪で起きてしまったことですが、「騒がれたので殺した」ということが起きていたかもしれません。

静かに指示に従ったのは、生き残るための必死の努力とも言えるでしょう。

■被害者保護のために

ある女性から以前メールをもらいました。

「子どもの頃、犯罪被害にあった。どうしようもなくて、男の言いなりになってしまった。その時、なぜ言いなりになったのか、なぜ逃げなかったのかと責められて辛かった。大きな事件報道で、また「なぜ逃げなかったのか」という声が上がっていて、とても悲しい。」

今回の事件の詳細はわかりません。ただ、被害者に非は全くありません。被害者も、家族も、地域の人も、事件解決のために最大限の努力をしてきたことでしょう。

事件の全貌を明らかにし、正しい裁判を行うことは大切です。同時に、被害者保護は何よりも大切です。私たちの発言が、心ならずも被害者を責めることがないように、被害者保護につながるような発言をしてきたいと思います。

私たちみんなで、しっかり子どもを守りましょう。

→この記事を書いた理由について:「ネット上で、憶測、可能性、一般論を語るなら:岡山小6誘拐監禁事件から考える被害者保護」(7/22アップ)

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変質者犯罪から子ども守ろう:少女誘拐監禁事件の犯罪心理学(岡山小6誘拐監禁事件から)

「子どもを守る」の本当の意味は?:子どもを甘やかせず、子どもを被害者にも加害者にもしないために」

少女誘拐監禁事件の犯罪心理学:なぜ彼らは少女を狙うのか

長期監禁事件の犯罪心理学:アメリカ監禁事件、オハイオで10年監禁の3女性保護:加害者の心・被害者の心

監禁の心理学:逃げられない理由・脱出できた理由:『ミヤネ屋』で語ったアメリカ監禁事件と心の監禁

新潟女性長期監禁事件の犯罪心理

碓井 真史
社会心理学者/新潟青陵大学大学院教授/スクールカウンセラー

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。テレビ新潟番組審議委員。好物はもんじゃ。HP『こころの散歩道』は総アクセス数5千万。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』。監修:『よくわかる人間関係の心理学』など。

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都議会やじ差別発言、アメリカだったら…

都議会やじ差別発言、アメリカだったら…
米国在住ジャーナリスト 長野美穂
2014/7/17 6:30
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK11009_R10C14A7000000/

日経ウーマンオンライン

 「都議会での例の問題発言について、アメリカではどう受け止められているか、長野さん、コメントしてくれませんか? 今なら明日の朝刊に間に合いますんで!」。

 LA時間の深夜、日本の某新聞社の記者さんから電話がかかってきた。

 今では日本国内外であまりにも有名になった都議会の例のシーン。最初にそれをCNNの報道で見た時、一番印象に残ったのは、塩村議員のとっさの反応と、それを受けての周囲の議員たちの反応だった。

 驚いてはっと顔を上げ、発言者の方向を見た彼女は、とっさに言葉に詰まった。そして、次の瞬間には表情がぎこちないほほ笑みに変わった。首を傾けながら「ふーっ」と息を吐き出し、ほほ笑みとも困惑とも取れる表情を浮かべてスピーチを続けようとする彼女。そして彼女を取りまいたのは周囲からの笑い声だった。

 見た瞬間、いやーな感じがわき上がってきた。昔、自分がセーラー服を着た中学生だった頃、身動き取れないほど混んだ朝の電車の中で、痴漢に遭って「やめてください」と小さく声を上げても、周囲の大人の男性たちが誰ひとりとして助けてくれなかった時の「あの感覚」が蘇ってきた。

 「キャリー」というホラー映画で、主人公のキャリーが天井から降ってきた豚の血を浴びせられるいじめ場面があるが、まるでそのシーンを見せられているような気もした。

 投げつけられた差別発言のひどさは当然ながら、侮辱を受けた女性議員が、我慢して無理にほほ笑んで「自衛」するしかなかったその場の空気。そこに日本社会の闇の深さが見えて、切なくて、胸が痛んだ。

 議長が差別発言にストップをかけるでもなく、彼女を擁護して「やめろよ」と立ち上がる男性議員がひとりもいない環境で、女性議員がサバイバルするために瞬間的に身につけるしかなかったあの「微笑」なのだと思うと何とも悔しくて切ない。

 小さい頃から常に気配りや女子力を要求され、嫌がらせは上手にやり過ごせ、と社会から刷り込まれて育った日本女性が、公の場で、腹の底からの本気の怒りを表現することをずっと許されないできた社会の無言の圧力。

 そして、その根の深い閉塞感。

 これは日本で生まれ育った女性なら、肌でいやっていうほどわかるから、よけいに、はらわたが煮えくりかえるわけだ。

■差別を受ける側が安心して怒れない理由

 「アメリカやイギリスの女性なら、あの場面で黙って我慢しない。激怒して当然だし、そうしてるはずだ。日本女性ももっと強くなって男勝りになって欲しい」という趣旨のコラムをネット上で読んだが、筆者の男性は、なぜ塩村議員があの場でとっさにほほ笑んで「自衛」するしか手がなかったのか、その理由がわかっていないのか? と歯がゆく思う。

 アメリカ人女性なら、恐らくあの場でスピーチを中断し、発言が飛んできた方向に向かって「今の発言は誰ですか? どういうつもりですか?」と追及するだろう。でも、それは、アメリカ人女性の個人個人が勇気があって強いからではない。

 アメリカ社会、特に議会などという公人ばかりが集まる場面では「差別発言はそれだけでアウト」という「建前」が徹底しているからだ。

 米国でも国政に携わる連邦議会の議員が連邦議会内で発言をする場合、その発言を理由に訴訟を起こされることはないという「議員特権」が与えられている。

 だから例え連邦議会内で連邦議員が鈴木議員と同じ発言をしたとしてもその議員が訴えられることはない。

 だが、セクハラ発言や差別発言は、言った瞬間に自らの政治生命をその場で終了させる自殺行為だということは、住民から票を入れてもらって現在の職につけた人間なら、当然知っているのが当たり前だ。

■男女平等の「建前」が公の場で徹底しているということの意味

 公の場では「男女平等」の「建前」が徹底しているアメリカ社会では、女性が侮辱されて本気で怒っていい時に、女性が「女子力」という名の「手加減」や「ほほ笑み」を周囲から要求される社会ではない。

 そういう社会で赤ちゃんの時から育ってきたアメリカ女性たちが、「結婚したらいいんじゃないか」というスカッド・ミサイルを撃ち込まれたら、その場で瞬間的に厳しく抗議できるのは、当たり前のことなのだ。

 女性が腹の底から本気の怒りを顔いっぱいに100%自由に表して理不尽な扱いに怒ることが「レディらしくない」と批判されることがなく、当然「正しいこと」と完全に容認されている社会だからこそ、アメリカ人女性は安心して怒ることができるのだ。

 アメリカでも昔、南部の黒人奴隷には白人の主人に怒る権利などなかった。理不尽な差別に怒りを表現したら、必ず仕返しされるか、下手したら半殺しにされるとわかっているから怒りを抑圧するしかなかった。

 つまり、自分の人権が完全に保証されている場だと肌で感じられなければ、人は安心して怒りを自由に表現することなどできないのだ。

(1/4ページ)

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ヘイトスピーチに対策迫る

ヘイトスピーチに対策迫る=国連人権規約委の対日審査
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2014071600137

 【ジュネーブ時事】拷問禁止や表現の自由などに関する国連人権規約委員会の対日審査が15日、ジュネーブの国連欧州本部で開かれ、街宣活動で人種や国籍などによる差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)対策で法整備の必要性が指摘された。審査は16日まで。
 審査でイスラエルの委員が、日本では昨年、主に在日韓国・朝鮮人らに対する差別的デモが360回以上行われたと指摘。日本政府にヘイトスピーチや人種差別行為を処罰する法整備を進めるかどうかをただした。
 このほか、死刑制度や男女機会均等などで、人権がどの程度保障されているのかが問われた。16日は従軍慰安婦問題も議題となる見通し。 
 対日審査は2008年以来、約6年ぶり。規約委の改善勧告に当たる「最終見解」が24日に公表される。(2014/07/16-09:05)



ヘイトスピーチなどに質問相次ぐ 国連規約人権委
http://digital.asahi.com/articles/ASG7J5D18G7JUHBI01J.html?_requesturl=articles%2FASG7J5D18G7JUHBI01J.htmlamp;iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG7J5D18G7JUHBI01J

 スイス・ジュネーブで開催中の国連規約人権委員会は16日までの2日間、日本の人権状況について審査した。2008年以来約6年ぶり。委員からは人種差別的なヘイトスピーチ(憎悪表現)や死刑制度、司法機関による捜査のあり方などについて質問が相次いだ。

 審査は、委員からの事前質問に日本政府側が答える形で行われ、回答に対する質疑もあった。

 ヘイトスピーチについては、委員側から「禁止するための具体的な法律はないのか」との質問が出た。日本政府側は「特定の個人や団体の信用を害する内容であれば、刑法の名誉毀損罪などで処罰可能」とし、民法上や刑法上で該当しない場合の対処については、「表現の自由との関係から慎重に検討しなくてはならない」と述べた。

 委員側からは、死刑制度の一時停止の可能性や、「袴田事件」に関連して死刑囚の人権についての質問も出た。日本政府側は、死刑制度について「世論の支持」などを理由に一時停止の可能性を否定。「人の死が伴わないときに死刑が科されたことはない」「(健康診断などで)死刑確定者の心身の状況の把握に努めている」と主張した。

 誤認逮捕があったパソコン遠隔操作事件の捜査についての質問に、日本政府側は「自白の強要は確認できなかった」と回答した。

 旧日本軍慰安婦問題について、委員から「性奴隷」という表現を使うべきだと問われ、日本政府側は「『性奴隷』という表現は不適切」と答えた。

 委員側と日本政府側の議論は全般的にかみ合わなかった。終了後、日本から来たNGOなどが共同会見を開き、日本弁護士連合会の海渡雄一弁護士は「(委員会で)審査されるのは恥ずかしくないが、指摘されたら次には一歩でも進めてくるのが普通。(日本政府の返答が以前の審査と比べても)変化があまりに乏しい。ちょっと恥ずかしい」と話した。

 委員会は今月下旬、「最終見解」の形で日本に対する改善勧告を採択する。(ジュネーブ=松尾一郎)






慰安婦問題など日本の人権状況を審査 国連本部で
2014.7.15 17:46 [「慰安婦」問題]
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140715/erp14071517460013-n1.htm

 表現の自由や、拷問や残虐な刑罰の禁止などを規定した自由権規約の締約国である日本政府が、規定内容をどのように保障しているかを審査する会合が15、16両日の日程で国連欧州本部(スイス・ジュネーブ)で開かれる。日本に対する審査は6回目で2008年以来、6年ぶり。今回は前回に続き、非政府組織(NGO)から問題提起されている慰安婦問題や死刑制度のほか、特定秘密保護法や街宣活動で民族差別などをあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)などをめぐり、日本政府が対応状況の報告を求められる見通し。審査を行う自由権規約委員会は24日に最終見解を公表する。今回は、「慰安婦は性奴隷ではない」と主張する団体「慰安婦の真実国民運動」のメンバーが日本の保守系団体として初めて現地入りし、委員に実情を訴えるとともに審査会を傍聴する。(ジュネーブ 田北真樹子)

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子どもの貧困16.3%、過去最悪

<生活基礎調査>子どもの貧困16.3%、過去最悪

毎日新聞 7月15日(火)21時27分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140715-00000111-mai-soci

 厚生労働省は15日、2013年の「国民生活基礎調査」を公表した。お金の面で普通の暮らしが難しい人の割合を示す「相対的貧困率」(12年)は16.1%で、記録が残る1985年以降、過去最悪だった前回調査(09年、16%)より0.1ポイント悪化した。17歳以下の子どもの貧困率は前回を0.6ポイント上回る16.3%に達し、初めて全体の貧困率を上回った。同省は、非正規雇用の増加による所得の減少などが影響したとみている。

 毎年調べている、1世帯当たりの平均所得(12年)は、前年比2%減の537万2000円で、85年以降、過去4番目の低さだった。暮らし向きを尋ねたところ、「大変苦しい」「やや苦しい」と答えた人が計59.9%に上り、上昇傾向が続いている。

 こうした中、12年の相対的貧困率は85年(12%)から27年で計4.1ポイント上昇。背景には非正規雇用の割合が全体の36.7%(13年、総務省調査)に達したことに加え、低所得の単身高齢者の増加がある。子どもの貧困率も85年(10.9%)より5.4ポイント悪化した。6人に1人は貧しい計算だ。

 また、単独世帯の増加に伴い、1世帯の平均人数は2.51人(13年)と過去最低になった。5人だった53年から半減した。65歳以上の高齢者が65歳以上を介護している世帯の割合は51.2%(13年)。初めて半分を超え、「老老介護」の増加ぶりが浮かんだ。

 調査は13年6~7月に実施。抽出した29万5000世帯中、23万世帯から有効回答を得た。所得に関する質問には3万6000世帯のうち、2万6000世帯が答えた。政府は今年1月に施行された「子どもの貧困対策法」に基づき、近く大綱を閣議決定する。【佐藤丈一】

 【ことば】相対的貧困率

 世帯所得から税や社会保険料を除いて計算した、国民一人一人の年間手取り額を少ない方から並べると、2012年は244万円が真ん中に来る。相対的貧困率は手取りが真ん中の半分(12年は122万円)に届かない人の割合を指す。子ども(0~17歳)の貧困率は同居する親の所得などで計算する。調査は3年に1度。厚労省は民主党政権当時の09年、貧困率を初めて公表した。
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貧困|スマ町銀座商店街

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「今、改めて生活保護と扶養義務のあり方を考える」

2014/07/12 【兵庫】近畿弁護士会連合会 人権擁護委員会夏期研修会
「今、改めて生活保護と扶養義務のあり方を考える」(動画)

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/153564

2014年7月12日(土)13時半より、神戸市中央区・神戸クリスタルタワーで近畿弁護士会連合会人権擁護委員会夏期研修会「今、改めて生活保護と扶養義務のあり方を考える」が行われた。生活保護バッシング報道などを経て成立し7月より施行された改正生活保護法と扶養義務強化の問題について、社会保障法に詳しい筑波大学教授・本澤巳代子氏や支援活動を行ってきたパネリストらが議論した。

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7月15、16日にジュネーブ、国連の自由権規約委員会

日本の人権状況を、国連人権委員会がチェック!
http://www.labornetjp.org/news/2014/1404982656725staff01

来る7月15、16日にジュネーブにおいて、国連の自由権規約委員会
が6年ぶりに日本の人権状況を審査します。アムネスティも委員会
に事前にレポートを提出し、日本政府がとるべき対策について提言
しました。

■自由権規約とは?
自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)は、社会権
規約と並び、最も基本的な国際人権条約のひとつです。1966年に成
立し、日本は79年に批准しています。

自由権規約委員会は、自由権規約の締約国が、規約に規定されてい
る人権を保障しているか、保障するためにどのような対策を講じて
いるかを定期的に審査します。

審査前に、政府は委員会に報告書を提出し、委員会も政府に対して
質問を出します。NGOも人権状況に関する情報を委員会に提供する
ことができます。日本政府の報告書の審査直前には、委員がNGO関
係者と会合を持ち、直接情報提供を受ける機会があります。

■注目点は?
委員会の関心は多岐にわたりますが、とりわけ、死刑(生命に対す
る権利)や代用監獄(公正な裁判を受ける権利、拷問の禁止)への
関心の高さは、事前の質問の多さからもうかがえます。1日11~12
時間、20日以上にわたって取調べを受けた末にウソの自白をして死
刑判決を受け、この3月に48年ぶりに釈放された袴田巌さんの事件
を考えても、前回よりさらに鋭い質問が委員会から日本政府に突き
付けられるでしょう。

さらに、在日コリアンに対するヘイトスピーチや排外主義、昨年12
月に採決が強行された特定秘密保護法についても、多くのNGOが共
同で情報を委員会に提供しており、委員会が日本政府に対してどの
ような勧告を出すのか、注目されています。

日本の人権状況を包括的に、そして客観的に知る機会です。
ぜひ注目してください!

▽ダウンロードはこちら
 「国連自由権規約委員会 第111会期 日本審査に向けた
 アムネスティの提言書」(日本語訳版)
http://www.amnesty.or.jp/library/report/pdf/ICCPR2014.pdf

▽アムネスティでは、さまざまな報告書を発行しています。
 以下で過去の報告書をご覧いただけます。
http://www.amnesty.or.jp/library/report/

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<集団的自衛権>81年見解を変更 戦後安保の大転換

<集団的自衛権>81年見解を変更 戦後安保の大転換

毎日新聞 7月1日(火)21時46分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140701-00000144-mai-pol

集団的自衛権行使に関する政府解釈変更を決定する臨時閣議に臨む安倍晋三首相(左)と太田昭宏国交相=首相官邸で2014年7月1日午後4時57分、藤井太郎撮影

 政府は1日、臨時閣議を開き、憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認すると決めた。集団的自衛権は自国が攻撃を受けていなくても、他国同士の戦争に参加し、一方の国を防衛する権利。政府は1981年の政府答弁書の「憲法上許されない」との見解を堅持してきたが、安全保障環境の変化を理由に容認に踏み切った。自国防衛以外の目的で武力行使が可能となり、戦後日本の安保政策は大きく転換する。

【写真で振り返る】集団的自衛権 7・1ドキュメント

 閣議決定文の名称は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」。安倍晋三首相は閣議後に首相官邸で記者会見し、「海外派兵は一般に許されないとの原則は全く変わらない。日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなる」と理解を求め、内閣官房に関連法案作成チームを設ける考えを示した。

 今回の閣議決定は、81年見解の基となった72年国会提出資料の「国民の権利を守るための必要最小限度の武力行使は許容される」との考え方について「基本的な論理」とし、「今後とも維持されなければならない」と位置付けている。

 そのうえで「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生し、「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が覆される明白な危険」があれば日本が武力行使できると明記。「国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合がある」との表現で、集団的自衛権の行使容認に加え、集団安全保障も否定していない。

 併せて、従来の「自衛権発動の3要件」に代わる武力行使の新3要件を策定。日本か他国かにかかわらず「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が覆される明白な危険」があれば武力行使できるとした。公明党の山口那津男代表は記者会見で「憲法の規範性を維持する役割を果たせた」と強調。ただ、自衛隊の活動範囲や、何が「明白な危険」に当たるかは示さず、政権に裁量の余地を残している。

 このほか閣議決定では、武力攻撃に至らない侵害▽国連決議に基づく多国籍軍支援▽国連平和維持活動(PKO)--などで自衛隊の活動を拡大するため、法整備を進める方針も示した。【青木純、高本耕太】

 ◇従来の政府見解

 政府は1972年、参院決算委員会に、集団的自衛権と憲法との関係に関する政府資料を提出。「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される急迫、不正の事態」では「必要最小限度の範囲」の自衛の措置が認められるが、日本が攻撃されていない集団的自衛権は「憲法上許されない」との判断を示した。81年には、集団的自衛権の行使は「必要最小限度の範囲を超えるもので、憲法上許されない」との政府答弁書を閣議決定し、以来、こうした解釈が定着している。
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最終更新:7月2日(水)2時48分

毎日新聞



集団的自衛権行使容認の閣議決定を許さない
緊急官邸前行動に3000人
http://www.zenroren.gr.jp/jp/news/2014/news140701_01.html

 「集団的自衛権行使容認許さない!」「閣議決定はやめろ!」「9条壊すな!」-7月1日昼、首相官邸前に3000人が結集し、怒りの声をあげた。戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター(憲法共同センター)は、午後にも開かれる臨時閣議で集団的自衛権行使容認が決定されという情勢のもと緊急官邸前行動を実施しました。
 全労連の大黒議長が主催者あいさつし、日本共産党の紙智子、吉良よし子両参議院議員が駆けつけあいさつ。自治労連、民青同盟、埼玉共同センターの代表が次々と発言。全労連の盛本常任幹事が行動提起を行い、シュプレヒコールで行動を閉じました。

大黒議長あいさつ

 本日安倍内閣が「集団的自衛権の行使容認」を閣議決定しようとしている暴挙に満身の怒りを込めて抗議します。
 歴代内閣が「集団的自衛権の行使」は憲法違反だとしてきたのは、憲法9条の「戦争放棄」と「国の交戦権はこれを認めない」とする条項があるからです。少なくとも尊重してきたからです。しかし、安倍首相は、「集団的自衛権の行使は、戦争に巻き込まれる恐れがある」という国民の危機感を無視して、いとも簡単に転換しようというのです。
 この間、国民の批判を恐れて、「限定的」と言いつつ、しかも、安倍首相自身が5月28日の国会答弁では「集団安全保障の中で武力の行使を目的とした戦闘に参加することはない」としていたものを、6月29日、政府が作った「想定問答集」では「『新三要件』を満たすならば、憲法上の「武力の行使」は許される」となっています。「新三要件」とは、「密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、根底から覆される明白な危険がある」と判断した時、「国民を守るために他の適当な手段がない」「最小限の武力行為にとどまるべき」だというのです。だれがどのように判断するかは、「特定秘密法」で秘密にされる、結局、時の権力者の言うがままに、「武力の行使」が可能になるということです。こんな勝手な解釈は許されるはずはありません。まさに憲法違反です。では、なぜこんな手の込んだやり方で、強行しようとしているのか、反対世論が日に日に強まり、国会開会中では、まともに国会論戦を乗り切る自信がないからだと思います。
 公明党も、地方議員や支持母体である創価学会内部の反対意見を押し切って、閣議決定に手を貸し、「平和の党」の看板は通用しません。
 たたかいはこれからです。「集団的自衛権の行使容認」を閣議決定しただけでは何も動きません。「自衛隊法の改定」などこれから法案審議を通じて、安倍首相の本性であるファッショ政治と「軍国主義」復活に未来はありません。安倍暴走政治に対する反撃が、「原発なくせ、再稼働反対」「TPP交渉からの撤退」「消費税引き上げと社会保障改悪反対」「普天間基地撤去・米軍基地建設反対」など大きな広がりを持った「一点共闘」に発展して来ています。
 あの侵略戦争と国民の犠牲によってたらしたこの国の平和を一内閣の勝手な判断で「殺し、殺され合う」戦場に、子どもたちを駆り出させるわけにはいきません。政治を変えるために力を合わせ、国民的共同を大きくして安倍内閣を退陣に追い込むたたかいを繰り広げましょう。

行動提起
 (1)集団的自衛権の行使容認が、戦争する国づくりにつながること、それを閣議決定で決めることは、立憲主義の否定で許されないことなどを、宣伝・対話で国民に語り広げよう。本日夕方17:30~新宿駅西口宣伝に参加しよう。
 (2)憲法解釈の変更を閣議決定で決めないことを要請するFAXを、安倍首相、自民党・公明党、大臣と両党の国会議員に送ろう。
 (3)9月議会へ向けて、集団的自衛権行使に反対する地方議会での意見書採択運動を進めよう。
 (4)地元国会議員への要請を強めよう。
 (5)7月14日 18:30~ 全労連会館2Fホールで開く、「集団的自衛権行使に反対する学習決起集会」へ参加しよう。






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(集団的自衛権)武力行使、政権の裁量 閣議決定、何が変わるのか

(集団的自衛権)武力行使、政権の裁量 閣議決定、何が変わるのか

2014年7月1日05時00分

http://www.asahi.com/articles/DA3S11218373.html?ref=nmail

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