「はだしのゲン」回収 泉佐野の市立小中の図書室
http://www.asahi.com/articles/ASG3M62WFG3MPTIL01S.html
2014年3月20日07時10分
戦争や原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」を大阪府泉佐野市教委が1月、市立小中学校の図書室から回収し、子どもたちが今月19日まで読めない状態になっていたことがわかった。作品に「差別的表現が多い」として問題視した千代松大耕(ひろやす)市長(40)の要請を受け、中藤辰洋教育長が指示したという。
市教委は20日、各校に返すとともに、差別的表現について何らかの指導をするよう求める方針だという。
市教委や校長らによると、昨年11月、中藤教育長が一部の小中学校に「市長が『ゲン』を問題視している。図書室から校長室に移して子どもらの目に触れないようにしてほしい」と口頭で要請。今年1月には、市立小中学校18校のうち、「ゲン」を所有する小学校8校、中学校5校に対し、市教委に漫画を持ってくるよう指示した。集めた作品は市教委が保管していた。
松江市教委で「暴力描写が過激だ」として市立小中学校の図書室で閲覧を制限していた問題が昨年8月に発覚したのを受け、泉佐野市教委は各校に「ゲン」の所有状況を調査していた。
千代松市長によると、市長自身も作品を読んだうえで、「きちがい」「乞食(こじき)」「ルンペン」などの言葉について、教育長に「問題が多い」と伝えた。時期は覚えていないという。
千代松市長は取材に対し、「漫画の内容ではなく、差別的な表現が問題だと思った。泉佐野は市全体として人権教育に力を入れており、教委には、漫画を読んだ子への個別指導が必要ではないかと伝えた」と話した。
一方、泉佐野市立校長会は1月23日、「特定の価値観や思想に基づき、読むことさえできなくするのは子どもたちへの著しい人権侵害だ」として、回収指示の撤回と漫画の返却を求める要望書を教育長に提出していた。
中藤教育長は「市教委が閲覧制限のようなことをしたのは望ましいとは言えないが、不適切な表現があるのは事実。市長が求めるように、読んだ子を特定して個別指導するのは物理的にも困難だが、何らかの指導は必要だ」と話した。(
「なぜゲンだけなのか」 回収協力の校長「悔やんでる」
http://www.asahi.com/articles/ASG3M7G13G3MPTIL033.html
2014年3月20日07時15分
大阪府泉佐野市の小中学校図書室から、子どもたちの知らない間に「はだしのゲン」が消えていた。きっかけは作品の「差別的表現」を問題視した市長の意向だった。市長の価値観で教育行政が左右された事態を校長らは批判。市教委は20日に返す方針を示した。
「はだしのゲン」回収 泉佐野の市立小中の図書室
「いかなる理由があっても、市教委が一方的に蔵書の閉架や回収を行うことは校長として違和感を禁じ得ず、到底受け入れられない」
市立小中学校の校長でつくる市立校長会は1月23日、強い調子で回収に抗議する文書を中藤辰洋教育長に手渡した。だが教育長は市長の意向を理由に「何らかの指導が必要」と譲らず、「閲覧記録を確認するなどして読んだ子を特定し、個別に指導できないか」と打診したという。
校長会はこれを拒否。「不適切な表現があるからといって一律に閲覧制限をするのは教育になじまない」「大量の蔵書から不適切な表現が含まれる作品を拾い出し、語句を逐一訂正指導するようなことは不可能」などとする文書を再び教育長に出し、回収指示の撤回と本の返却を求めていた。
校長の一人は「教育長の指示とはいえ、回収に協力してしまったことを悔やんでいる。差別的表現のある本はほかにもあるのに、なぜゲンだけなのか。狙い撃ちにされたとしか思えない」と話す。
別の校長は「昨年夏、松江であれだけゲンの閲覧制限が問題になったのに……。市教委はあの教訓から一体何を学んだのか」。
千代松大耕(ひろやす)市長は2011年4月の市長選に市議から立候補し、現在1期目。教職員に入学式や卒業式での君が代の起立斉唱を義務づける条例を大阪府・市に続いて制定したほか、府独自の学力テストの学校別成績を市教委の反対を押し切って公表したり、教育行政への首長の関与を明文化した条例を制定したりするなど、以前から教育行政に強い関心を持ってきた。
「ゲン」の中には、君が代や天皇制を批判する箇所も出てくるが、市長は「そこを問題視したわけではない」と説明している。
20日に返す方針について、中藤教育長は「早く返すべきだとは思っていた」と説明。返す際の「指導」の内容については「検討中」としている。(編
はだしのゲン:小中学校13校の図書室から回収 泉佐野
http://mainichi.jp/select/news/20140320k0000e040203000c.html
毎日新聞 2014年03月20日 11時47分(最終更新 03月20日 12時23分)
◇市長が「差別的な表現が多く、放置できない」
広島に投下された原爆の悲惨さをテーマにした漫画「はだしのゲン」128冊が大阪府泉佐野市の小中学校13校の図書室から約2カ月にわたり撤去されていたことが分かった。千代松大耕(ひろやす)市長(40)が「差別的な表現が多く、放置できない」として市教委に対応を指示。今年1月、中藤辰洋教育長(61)が図書室から撤去し市教委に集めるよう各校に指示したという。市教委は「問題になる表現の把握など今後の指導の準備が済んだ」とし、20日午後の校長会で各校に返却する。
市教委によると、「はだしのゲン」は小学校13校のうち8校と中学校全5校で図書室に開架で保管されていた。昨年11月、「『乞食』や『ルンペン』など、人権にかかわるような表現が多く、見過ごすわけにはいかない」として、市長が教育長に対応の検討を指示した。教育長は同月、校長会を通じ、「はだしのゲン」を図書室から撤去し、別の場所に保管するよう要請。しかし、各校が従わなかったので、今年1月には、「市教育委員(7人)にも読んでもらい、議論してもらう必要がある」として、回収を指示したという。
これに対し、同市立校長会(会長=宮本純子・長南中校長)は「学校図書館の運営権限は校長にあり、市教委が一方的に蔵書の回収を行うことは受け入れられない」「特定の価値観や思想に基づいて読むことさえできなくするのは児童への人権侵害」などとする抗議文を1〜2月に計2回、市教委に提出。回収指示の撤回と本の返却を求めた。
「はだしのゲン」は広島原爆で肉親を亡くした故・中沢啓治氏の自伝的漫画。松江市教委が「過激な描写がある」などとして学校図書室での閲覧を制限していたことが昨年8月に発覚。千代松市長によると、その後、市民から「市長は内容についてどう思うか」と問い合わせを受け、実際に読んだという。「反戦や生命の大切さなど作品の大きなテーマを否定しているわけではない。人権行政を進める立場として、不適切な言葉を放置していいのかという問題提起だ」と説明している。
中藤教育長は「作品自体ではなく差別的表現に問題があるということだ。学校現場には、使ってはいけない言葉などの指導をしてほしいと思っている」と話した。今後、「はだしのゲン」の中の問題となる表現をリスト化して指導用に使うなどの方法を検討するという。
はだしのゲン、差別的表現多い…問題視した市長
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140320-OYT1T00347.htm
原爆の悲惨さなどを描いた漫画家・中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」について、大阪府泉佐野市教育委員会が市立小中学校の図書室から回収し、閲覧制限していたことがわかった。
作品に「差別的表現が多い」として、千代松大耕ひろやす市長が要請、中藤辰洋教育長が指示した。市教委は20日、閲覧制限を撤回し、各校に「ゲン」を返却する。
市教委などによると、昨年11月、千代松市長が「きちがい」「乞食こじき」「ルンペン」などを挙げ、「問題があるので何らかの対応が必要」と中藤教育長に伝えた。教育長は市立小中学校全18校を調査し、「ゲン」を図書室から校長室に移すよう指示。今年1月、所有する13校から128冊を回収した。
(2014年3月20日13時41分 読売新聞)
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