2ちゃん、匿名の代償 ライバル作家を中傷…身元ばれて信頼失う
2ちゃん、匿名の代償 ライバル作家を中傷…身元ばれて信頼失う
2013年12月23日05時00分
http://digital.asahi.com/articles/DA2S10894758.html?_requesturl=articles/DA2S10894758.html&ref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA2S10894758
ネット掲示板「2ちゃんねる」から今年8月下旬、3万件以上の会員情報が流出した問題が思わぬ事態を引き起こしている。相手をののしり、自作自演の書き込みをした人たちが、ネット上で次々と特定されている。当の本人たちに何が起き、何を思うのか。
■「愚かでした」
気鋭の男性小説家(35)はこの秋、作家仲間や出版社へのおわびに追われた。
作家は2ちゃんねるの掲示板で、ライバル視していた小説家を「虚言癖がある」と攻撃し、別の小説家の作品が原作の漫画については、アンケートをした出版社を「打ち切り確定なのに資源の無駄」と批判。一方、自身を「(出版社が)『作家買い』をする例外中の例外」と自賛していた。
一連の騒ぎで、ネットで暴言や中傷を繰り返していたことが発覚し、仕事上の関係先や信頼を失った。
作家は取材に「相手を見下したい、おとしめたいという漠然とした悪意があった。相手の欠点とみた部分を、一方的に罵倒する書き込みは快感だった」と振り返る。賛同する書き込みを見つけると、快感がさらに増したという。
高校卒業後にフリーターを6年ほど経験し、ニートとなっていた3年目に書いた小説が入賞。作品の評価が気になり、2ちゃんねるに頻繁にアクセスするようになった。「匿名での書き込みで歯止めが利かなくなった。愚かな行為でした」
■おびえる毎日
関東地方に住む30代の会社員男性は、ネットに自分の情報がさらされないか、毎日おびえている。2ちゃんねるで自作自演を10年ほど続けていた。返信が来るのが、ただ楽しかった。
特に不幸話は人を引きつけた。借金がある離婚男性を装い「死のうと思います」と、架空の身の上話で同情を誘った。
「がんばれ!」「経験を生かして生きろ」。励ましの返信を改めて読み返すと心が痛む。「弱者のまねをするなんて最低の人間。ばれたら会社や隣近所にゆがんだ人間と思われる。仕事を辞めなければならない」
今回の問題について、2ちゃんねるのサーバー運営会社(米国)はホームページ上に「サイバー攻撃を受け、情報が流出した」と公表。会員制サービスの情報管理の仕組みを改め、再開するとしている。
記者は流出経緯や匿名の投稿者がネット上で明かされている事態について、運営会社と運営に携わる関係者に計4回、取材依頼のメールを送ったが、回答はない。
■リスク、もっと意識を
匿名の書き込みが誰のものか、投稿主の身元がわかってしまうことをネット用語で「身バレ」という。2ちゃんねるの会員情報流出から4カ月たった今も、ネット上では誰の書き込みか特定する動きが続いている。
ネットトラブル研究の第一人者で、多摩大学情報社会学研究所の田代光輝・客員研究員は「名前や住所という個人情報だけでなく、その人格までうかがえる情報が大量に流出した初めてのケースだ」と指摘する。
今回は会員情報に加えて、数十万件の書き込み履歴が流出したことで、個人が特定された。ただ、これまでも身近な人物が情報を漏らすなど、ブログや掲示板の投稿主が特定されたケースは多い。「ネットに匿名は存在しない。そう思って利用した方がいい」
「ネットの記録性にも目を向けて欲しい」と注意を呼びかけるのは、ネット上のコミュニケーションを研究する関西学院大の鈴木謙介准教授(社会学)だ。
ネットに記録された情報は拡散し、消し去ることは不可能に近い。検索も簡単だ。コンビニのアイスケースに入り込んだ写真など、若者たちによるツイッターへの悪のり投稿が夏以降、社会問題化。身内に発信したつもりが、拡散したケースもあった。経済産業省のキャリア官僚は、東日本大震災直後の匿名ブログでの不適切な投稿が、今年9月下旬に発覚し処分された。
鈴木准教授は「投稿する前に、自分にメリットのある書き込みかどうか、もう一度、心に問い直してほしい」と話している。
(須藤龍也)
■ネット利用、心がけ5カ条
(1)情報は漏れると心得よ
第三者の流出事故まで防げない
(2)匿名なんて、あり得ない
IPアドレスや履歴……足跡だらけ
(3)いつか、あなたも狙われる
過去の情報が特定の材料に
(4)失敗は闇夜とともに
夜中は気持ちが大きくなる
(5)飲んだら書くな 書くなら飲むな
お酒は判断を鈍らせる
(多摩大学・田代光輝客員研究員が監修)
◆キーワード
<2ちゃんねる会員情報3万件流出問題> 掲示板の書き込みを過去にさかのぼって検索できる有料サービス「2ちゃんねるビューア」の会員情報が8月下旬、ネット上に流出した。3万件以上の氏名や住所、クレジットカード番号などが含まれていた。同時に会員IDと結びつける情報や、数十万件に及ぶ書き込み履歴も流出。1件ずつ照らし合わせることで、書き込んだ人物が次々と特定されている。
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