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婚外子の相続 少数者差別、司法が救え 中日新聞

婚外子の相続 少数者差別、司法が救え  中日新聞

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2013070102000103.html

2013年7月1日

 婚外子の遺産相続分は婚内子の半分、という民法の規定は憲法に反しないのか。最高裁が大法廷で審理している。少数者を守るのは司法の役割だ。「合憲」判断を見直し、早く「違憲」を示すべきだ。

 ある人に子どもが二人いるとして、一人が正式な配偶者との間の子、もう一人が結婚していない相手との子である場合、二人の子の遺産相続分は二対一になる。民法九〇〇条の定めだ。問われているのはこの差別が、法の下の平等を定めた憲法一四条に反しないのかどうかだ。

 最高裁は一九九五年に「合憲」判断をした上で、立法で解決するのが望ましいと補足していた。しかし、歴代政権や国会は怠った。婚外子差別の撤廃などを盛り込み、法制審議会が答申した民法改正要綱も放置し、差別の違憲性を問う訴訟が相次いだ。

 現在三件の裁判が大法廷で審理されている。父親の遺産相続をめぐり、東京、和歌山、盛岡で申し立てられたケースで、婚外子側は民法の規定は憲法違反として等しい分配を主張する。

 最高裁の審理は通常、三つある小法廷で行われるが、新しい憲法判断が必要になったり、過去の判例を変更したりする場合は、十五人の裁判官全員で構成する大法廷に移す。七月に原告と被告の意見を聴く弁論が行われ、今秋にも結論が出る見込みだ。

 婚外子の相続差別は、明治民法の規定が戦後も改められずに残ったものだ。「法律婚を守る」という名目で一応の合理性が認められてきたが、子どもに責任のない出生の仕方によって、法的な不利益が押しつけられていいはずがない。経済的な問題だけでなく、社会的な人格否定にもつながる。

 大法廷の「合憲」判断以降、小法廷は五回の合憲判断を重ねてきた。だが、そこにはいつも「違憲」だと述べる裁判官がいて、多数意見と少数意見は拮抗(きっこう)していた。

 日本の出生全体に占める婚外子の割合は2・2%。世論の壁もあり、国会は少数派のための法改正には及び腰だが、主要先進国で婚外子差別の規定を残すのは、もはや日本だけだ。立法府が動かないのなら、司法が救済に向けて一歩踏み出すべきだ。

 大法廷の判例があっても、近年は高裁で違憲判断が相次いでいる。差別をこれ以上残しておけないという下級審の意思も、最高裁の背中を押しているはずだ。今度こそ、社会の成熟を感じられるような違憲の「宣言」を聴きたい。





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