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論説 : 橋下市長発言/人権への認識を求めたい

論説 :  橋下市長発言/人権への認識を求めたい 

http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=538879033

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が、旧日本軍時代の従軍慰安婦について「当時は軍の規律を維持するために必要だった」と容認する考えを表明。先日沖縄を視察した際には、駐留する米軍の幹部に対して海兵隊員に風俗業者を活用させるよう求めたことを記者団に明らかにした。

 大都市の市長という公職にあり、衆院では第3党の地位を占める政党の共同代表の発言である。これが日本を代表し国民の大きな期待を集める政治家の歴史認識なのか。本人は極めて「率直」に語ったつもりなのかもしれないが、慎重さが足りないのではないか。

 従軍慰安婦については、第2次大戦中、命懸けで戦闘に臨む兵士には心休まる時間が必要だった。それが「慰安婦」だったという論理を展開した。維新の会のもう一人の共同代表、石原慎太郎氏も「軍と売春は付きものだ」と発言している。

 もう一つは、現在の在日米軍についての言及だ。祖国を離れて軍務に就く若者には、息抜きの場が必要だろう。それならば「風俗業」の女性を活用すればいい。そうすればかつての少女暴行事件のような一般人への被害が少なくなるという発想が橋下氏にはあるのかもしれない。その後「建前論では人間社会は回らない」とも橋下氏は強調したという。

 しかしその根底には女性を軽視し、男性の欲望をさまざまな理由のある女性に押しつけ、従属関係を認める考えがあるのではないか。「世界各国が慰安婦制度を持っていた」という橋下氏の言葉は事実だろう。だが歴史への反省から人間は前に進むのではないか。そして女性の人権が政治の焦点になった事実を直視するべきだ。

 それには、慰安婦を生んだ戦争時代への反省が必要だ。さらに、米軍が沖縄に存在する事態を少しでも解消しようという働き掛けもいる。現状を少しでもよく変えようという政治家の信念が欠けている。

 安倍内閣からも批判的な声が相次ぐ。「慰安婦制度は女性の人権に対する大変な侵害」(稲田朋美行政改革担当相)、「今の時点で慰安婦の必要性を強調する必要があるのか、大変疑問だ」(谷垣禎一法相)。当然の言葉だろう。

 日本は第2次大戦をどう総括したのか。他国へ軍隊を送り込むことは「侵略」以外の何ものでもない。それを安倍晋三首相は「学問的にさまざまな定義があり、絶対的な定義は定まっていない」と述べている。自民党の高市早苗政調会長も過去の植民地支配と侵略を認めた1995年の村山富市首相談話に対して「違和感がある」とした。

 こうした発言が現状で国益につながるとは思えない。従軍慰安婦に関しては、日本政府は93年、宮沢内閣時代に河野洋平官房長官談話を発表、95年には「女性のためのアジア平和国民基金」を設置した。

 戦争責任に向き合おうとする努力は続けられてきた。国連でも度々取り上げられ、今年4月に英国で開かれた主要国(G8)外相会合の主要議題は「紛争下での性暴力防止」だった。今でも戦時下の女性の人権は大きな国際的なテーマだ。橋下氏らには世界の現状を認識してもらいたい。

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