高知民報 2012年4月8日
http://www11.ocn.ne.jp/~jcpkochi/minpo/topic/2012/120408kaido.html
古地図扱い配慮欠く? 解同高知市協で90人に囲まれ「学習」 高知市副市長謝罪
高知市史 「描かれた高知市」 問題の古地図は掲載されていない
高知市発行「描かれた高知市 市史絵図地図編」をめぐり、部落解放同盟高知市連絡協議会(竹内千賀子議長、高知市議)が、吉岡章副市長以下の市幹部を「歴史的事実や人権が踏みにじられた」(解放新聞号外高知市協ニュース3月22日号)と4月2日、同市協事務所に呼び付けて90人が参加した「学習会」を開き、吉岡副市長が謝罪していたことが分かりました。市幹部が大人数に取り囲まれる旧態依然とした自主性を欠く交渉が繰り返されました。
発端は本年2月、市史の編集過程で掲載を予定していた江戸時代の古地図に、当時の被差別部落の場所を特定する記載があったことから、市史編纂担当課である総合政策課が解放同盟側に掲載の可否を相談したことでした。
この古地図は1984年に週刊朝日百科(朝日新聞社)に掲載し、部落解放同盟が糾弾闘争を展開して、高知市も朝日新聞に販売停止を求めた経過があったものですが、今回は「史料改ざんになる黒塗りはしてはならないので、市の判断で掲載はしなかった」(弘瀬優総合政策課長)。
解放同盟側が問題視したのは、28年前の事件を吉岡副市長以下の幹部が「知らなかったこと」。掲載の前に問い合わせたことを「人権を踏みにじった」と批判し、それを市が謝罪するという奇妙な構図です。
「学習会」には吉岡副市長、中沢慎二総務部長、森田恵介市民協働部長ら6人の市幹部が参加。解放同盟からは森田益子顧問、竹内市議など90人が出席しました。「出席者からは激しい言葉も出た」という証言もあり、人数的にも対等な学習といえるようなものではありません。特定市議が代表を務める団体が数を力に執行部に圧力をかける図式も極めて不正常です。
吉岡副市長は取材に答え「過去の重要問題の引き継ぎができていないことを謝罪した。勤務に支障のない夜間、課長以上の幹部だけで行ったので問題ない」とコメントしました。
今回、何か問題が生じたことに対してではなく、「ない」ことが問題にされました。数十年前の事案で引き継ぎがされていないことは無数にあり、この論法では解放同盟の意図次第でいくらでも拡大できることになります。
高知県は2001年度から県政を歪める根源であった同和団体との密室交渉を抜本的に改め、人数と時間を制限し、団体へ出向くことはしない、報道機関への公開、ウェブサイトでの内容公開に切り替え、尾﨑県政下でも同様に引き継がれています。
同市のある幹部からは「このような形で幹部が呼び出されて謝罪をさせられる対応は、解放同盟以外にはあり得ず、市民に説明できない。県のような交渉のルール化が必要な時期だ」という声が聞かれました。
岡崎誠也市長は4月3日、解同市協主催「全国水平社創立90周年記念集会」で「大変迷惑をかけた。庁議で徹底し、人権研修でとりあげていく」と発言。5日の庁議でこの問題が報告されています。(2012年4月8日 高知民報)
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2012年3月25日
県「人権意識調査」に批判続出
高知県は2012年度に人権に関する県民意識調査を実施するための予算を2月県議会に提案。予算は認められたものの、調査の同和偏重、時代錯誤的な設問に対し3月12、13日の文化厚生委員会で多数の委員から批判が噴出し、執行部は今後の同和問題のスタンスに起動修正が迫られました。
最も批判が強くあったのが同和問題について「かりに、あなたにお子さんがいて、そのお子さんが結婚しようとしている相手が、同和地区出身の人だと分かった場合、あなたはどうしますか」という設問。
米田稔議員(共産)は「仮定のアンケートでしかなく、実態調査ではない。行政は実態にもとづいた取り組みをしなければならない。結婚差別は県が把握している差別事象にも上がっておらず実態に反する」と批判。
他の委員からも「なぜ同和問題が一番はじめに出てくるのか」、「誘導的」、「同和関連法が終結していることをきちんと書くべき」などの指摘がありました。
県人権課は「県としては結婚や就職に関して部落差別は根深いととらえている。意識調査は人権条例に定められているものであり、前回(10年前)と基本的に同じ設問で意識の変化を調べるもの。設問に文言を挿入することなどを検討する」と答弁。
調査の結果を同和行政の根拠法が残存していた2000年に制定され現在も生きている「県人権施策基本方針」の見直しに活用するとしました。
県文化生活部幹部からは「党派を超え、これほど批判が強いとは思っていなかった。この教訓は基本方針の見直しに生かす」という声が聞かれました。(2012年3月25日)
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2012年3月4日
隣保館調査に苦慮 県下自治体 同和地区線引きに抵抗感
2月末を期日に全国的に取り組まれている「今後隣保館が取り組むべき地域福祉課題を明らかにする実態調査」(社会福祉法人・大阪府総合福祉協会が厚労省の委託を請け、全国隣保館連絡協議会(全隣協)に再委託)への対応に県下の自治体が苦慮しています。
調査は「地域住民」=かつての同和地区の線引き・「周辺地域」=小学校区・市町村全体を、年齢構成、人口動態、世帯の状況、収入、生活保護、障害者の状況、介護保険、乳幼児検診、教育、住宅の状況など事細かに調べて比較するもの。
項目が多岐に渡り、行政が把握できていない情報も多くあることから「今、持っている情報しか出せない。この調査のために新たに調べることはしないので、空白で出すところも出てくる」(高知市)。
同和地区の線引きを根拠付ける法が失効して10年が経過している現在、改めて同和地区に線引きしてデータを集めることへの抵抗感を持つ自治体も多く、県が尾﨑正直知事名で「今回の調査の一部が地域を特定しているため、県の方針に基づき文書等による要請は行わない」とする状況もあって、「回答するかどうか最後まで悩んだが、市長の判断で出すことになった(県東部の市)」という声も聞かれました。
このように各自治体が悩みながらも調査に応じるのは、隣保館運営に国の補助金がついており、財政難の中で少しでも財源を確保したいという思いが背景にあります。
隣保館運営補助金(年間)は香美市で1000万円弱(1館)、高知市で(13館、約7000万円)など、自治体にとって無視できない財源。国はこの補助金を廃止して一括交付金化する動きを見せており、自治体にすれば、隣保館存続=補助金継続につながる調査には協力せざるえないというのが実態です。
部落解放同盟は部落の低位性を明らかにして補助金継続に役立てようと調査を強く求めてきた経緯がありますが、この調査は部落関係者=属人をカウントはせず、住所だけで面的に対象を把握する=属地であるため、市街地にある旧同和地区では圧倒的多数が地区外から若い世代宇が転入するなど混住が大幅にすすんでおり、「過疎地を含まない分、意外と指標が高い可能性もある(県東部の市の隣保館関係者)」という指摘も。解放同盟が狙う「部落の低位性」を証明するものにはならない可能性もあります。(2012年3月4日 高知民報)
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2012年2月12日
旧同和地区調査が全国で 県は解放同盟の協力要請拒否
「今後隣保館が取り組むべき地域福祉課題を明らかにする実態調査」が全国的に取り組まれていますが(2月末まで)、この調査は「地域住民」と称し、旧同和地区住民の低位性を明らかにしようとするもの。部落解放同盟が強く求めてきた被差別部落調査的色合いの濃い重大な問題を持つ調査ですが、高知県では県が調査への協力を拒否し、また調査とはいっても旧線引き内エリア(属地のみ)の行政データを電算上でマッチングする作業にとどまるために、混住が進む地域で「属地属人主義」にこだわる高知市の考え方とは矛盾が見られるなど、注目される点もあります。
この調査は社会福祉法人・大阪府総合福祉協会(大阪府の外郭団体)が、厚労省の委託を請けた形になっていますが、全国の市町村立隣保館が加入する「全国隣保館連絡協議会(全隣協)に再委託され、実質的には全隣協がイニシアティブを持った調査。
川崎正明・全隣協会長名で昨年11月28日付に市町村や隣保館長に出された依頼文書には、この調査の目的が「隣保館運営費補助金制度存続」のための取り組みであることが示されています。
調査の核心は「地域住民」で、かつての同和地区と同一線引き内の人口動態、世帯状況、課税、生活保護、障害者の割合、介護保険認定者、乳幼児検診未受診者、進学、就学援助、市営住宅に住む住民の状況などを事細かに、①「地域住民」(旧線引き内)、②「周辺地域住民」(小学校校区)、③市町村全体と比べる内容になっています。
部落解放同盟県連は県に対し、各市町村に文書で調査への協力依頼をするよう求めていましたが、県は昨年12月22日、尾﨑正直知事名で「今回の調査の一部が地域を特定しているため、県の方針に基づき文書等による要請は行わない」と協力を拒否しています。
高知市人権同和・男女共同参画課は「属地属人でない調査は高知市の方針とは違うが、エリア内の住所で一括しデータをマッチングさせることになる。行政が情報を持っていない質問項目もあるので、どこまで回答できるか検討しているところだ」と話しました。
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