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水平社宣言 思いは今(5)

水平社宣言 思いは今(5)

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2012年04月14日

 ■心の垣根 取り払おう

 ◎部落解放同盟

 部落解放同盟県連合会(県連、奈良市)は近年、各支部で部落差別とどう向き合うかを考える研修会を開いている。

 「部落民の生活環境は向上し、職業差別、結婚差別も改善された。今後は行政闘争からの脱却を図り、住民対象の活動に力を入れたい。たとえ差別を受けても、自己を肯定できる人間を育てたい」。辻本正教・副委員長は話す。

 変化のきっかけは2006年に発覚した奈良市環境清美部職員の長期病欠問題と職務強要事件だ。職員は県連支部長=除名=の立場を悪用して市幹部に圧力をかけていたことから、県連にも批判が寄せられた。

 県連は翌年、行政と部落解放運動のあり方提言委員会(座長・八木晃介花園大教授)を設置。「行政への依存体質からの脱却」「団体交渉を一般公開」「差別や地区住民の生活の実態調査」などの提言を受け、09年、県内6地区約1千世帯にアンケートを実施した。県連の活動や必要性についても尋ねており、今年度中にとりまとめて公開する予定だ。辻本副委員長は「事件は元支部長が個人的に起こし、県連とは関係ない。ただ、県連も住民に本当に必要な団体に変わらなければならない」と話す。

 奈良市人権文化推進室によると、県連との団体交渉は05年を最後に行われず、協議も08年以降はない。改良住宅の家賃定額制を除き、同和地区への優遇措置はすべて廃止された。

 ◆脱・行政依存、新たな活動模索

 「差別発言をした者を糾弾してきたが、大多数はその場で謝罪して終わり。部落は怖いというイメージを植え付けるだけだった」。県議で、NPO法人なら人権情報センター(田原本町)の山下力副理事長は自戒を込めて話す。

 センターは、1993年に活動方針の違いから県連と分かれた県部落解放同盟支部連合会(同)の流れをくむ。部落差別だけが人権問題ではないとして、障害者や在日朝鮮・韓国人への差別など幅広いテーマを取り上げる。

 県内で以前、知的障害者授産施設ができる時、近くの部落住民から「障害者は何をするか分からない」と反対運動が起きた。「部落民の中にも障害者や在日朝鮮・韓国人に対する差別がないと言えるのか」と山下副理事長は問う。

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 「部落だからと言って、就職や結婚で差別されるというケースは今ではほとんどない」と話すのは、共産党系の全国地域人権運動総連合(東京)の神沢和明幹事。奈良の支部は数年前に閉鎖されたが、存続を訴える声はなかったという。

 保守系の自由同和会(同)の平河秀樹・事務局長は「同和問題は解消の方向にある。団体は行政依存からの脱却を図るべきだ」と話す。

 人権問題に詳しい奈良教育大の中川喜代子名誉教授(社会学)は、隣保館など地区の公共施設を開放し、部落内外の人がイベントや生涯学習を通じてともに活動する例が全国で増えていると指摘。「交流を通し、地区外の住民の心の中に残る差別意識を取り払うことができる。人権団体は、部落の特性や運動の実績を生かし、周辺地区を巻き込んだ人権文化あふれる街づくりの仕掛け役になってほしい」と望む。

(田中祐也)=おわり

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 ■奈良市職員の長期病欠問題と職務強要事件

 2006年秋、環境清美部(当時)の男性職員=懲戒免職=が病気休暇や休職を繰り返し、約5年10カ月の間に8日間しか出勤しなかったにもかかわらず、ほぼ満額の給与を受け取っていたことが発覚。実質的に経営していた建設業の営業を市役所でしていたこともわかった。職員は県連支部長として市との協議に出席。市幹部を脅して談合防止の入札制度導入を延期させたとして職務強要容疑で逮捕され、07年、懲役1年6カ月執行猶予3年の有罪判決を受けた(確定)。

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