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人権救済機関/白紙に戻して慎重に検討を 世界日報社

http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh111224.htm
世界日報社ホームページ2011.12.24

人権救済機関/白紙に戻して慎重に検討を
 人権擁護の名の下に、かえって「人権侵害」や「言論弾圧」を招かないか。このように危惧されてきたのが、政府が創設しようとする人権救済機関だ。このほど法務省は「人権救済機関設置法案」(仮称)の概要を発表したが、こうした疑念は払拭されていない。白紙に戻して慎重に検討すべきだ。

「人権侵害」の定義曖昧
 差別や虐待などの人権侵害が生ずれば速やかに救済し、人権を擁護する。民主主義社会に不可欠な機能であることは言うまでもない。そのために現行の司法制度があり、個別の法整備としては「児童虐待防止法」や「配偶者暴力(DV)防止法」「高齢者虐待防止法」などもある。それがなぜ、新たに人権救済機関が必要なのか、法務省は十分に説明していない。

 法務省案の概要によると、人権救済機関は法務省の外局とし、独立性の高い国家行政組織法に基づく「3条委員会」として設置する。侵害の調査は任意で、罰則規定は設けず、いわゆるメディア規制条項も削除する。幅広い事案で人権救済が図れるよう調停・仲裁を行うほか、勧告や告発ができ、人権擁護委員は「地方参政権を持つ人」としている。

 だが、依然として懸念が残る。救済機関の設置は国連の「パリ原則(国内人権機関の地位に関する原則)」に基づくが、これは主に警察や出入国当局、刑務所など公権力による人権侵害の救済措置を求めたものだ。それがなぜ、一般国民まで広げられたのか疑問である。

 かつての人権擁護法案は「人権侵害」の定義が曖昧で、恣意的運用の恐れがあり、言論弾圧を招きかねないと批判されたが、今回の法務省案もこうした問題を残している。

 一部の「人権団体」は自治体の戸籍係が「同性結婚」を拒むのを人権侵害とし、公立学校長が卒業式で国歌斉唱を「強制しない」と事前に生徒に説明しないことや、過激な性教育を行った教員の処分も人権侵害としてきた。「天皇制」を身分差別と断じる団体すらある。法務省案ではこうした歪められた「人権」が救済機関によって闊歩しかねない。

 しかも、相変わらず公権力の人権侵害に主眼を置かず、パリ原則から逸脱している。また人権擁護委員について旧人権擁護法案は国籍条項を設けず、北朝鮮や中国の工作員が委員に就きかねないといった懸念が示され、それで今回は「地方参政権を持つ人」としたと思われる。だが、なぜ国籍条項を明示しないのか、この点も疑問である。

 民主党が実現を目指す定住外国人への地方参政権付与を念頭に置いたものとすれば、外国人が恣意的に運用する疑念が晴れたとは言えない。

 真に必要なのは、現行の刑事司法制度の下で人権侵害の救済が十分行われているか、検証することである。信仰をめぐって拉致などの暴力行為がまかり通ってきた事案もある。

法務省案の法制化は危険
 人権救済を掲げて新たな人権侵害や言論弾圧がもたらされる過ちを犯してはならない。法務省案は依然として問題を残しており、法制化は危険である。

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