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新たな人権救済機関の設置動向に係わって 立法根拠そのものから国民的な検討を求める(談話)

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2011年12月16日
全国人権連事務局長 新井直樹

新たな人権救済機関の設置動向に係わって
立法根拠そのものから国民的な検討を求める(談話)

1,2003年8月末「郵政解散」にともない廃案となった人権擁護法案は、審議会答申を踏襲し次のような問題を持っていた。①政府からの独立性など国連が示す国内人権機構のあり方(パリ原則)とは異なる、②公権力や大企業による人権侵害を除外しており、もっとも必要性の高い救済ができない、③報道によるプライバシー侵害を特別救済手続きの対象としており、表現・報道の自由と国民の知る権利を奪う、④「人権」や「差別」についての明確な規定なしに、「差別的言動」を「特別救済手続」として規制の対象としたことが、国民の言論表現活動への抑圧であり憲法に抵触する、点である。
  こうした問題を含む法案の廃案運動を進め、人権審議会答申の問題を克服し国民の真の人権擁護を図るために民主団体と5団体連絡会を結成し取り組んだ。自公政権下で幾たびか法案提案に係わる策動があったが阻止してきた。

2,自公に替わり政権与党となった民主党の千葉法務大臣は、09年9月17日未明の就任記者会見で、人権救済機関を内閣府の外局に設置することを内閣提出法案で早急に実現したい旨発言、政務3役の名前による2010年6月の「中間報告」では、所管を内閣府とする他具体的な記述はなかった。

3,2011年8月2日の法務省「基本方針」は、6月8日民主党プロジェクトチーム(PT)が様々な批判をかわし法案が成立しやすいようにした「中間とりまとめ案」を踏襲している。基本的な枠組みはかつての人権擁護法案である。8月2日江田法務大臣の閣議後会見で、法案化作業を急ぐのは、国連からの度重なる「勧告」と政権交代を機にしていることをあげた。また9月2日法務大臣に就任した平岡氏は新たな人権救済機関設置を総理指示の重要案件であると表明、2012年1月からの通常国会に提案したい旨を発言。

4,民主党の「人権侵害救済機関検討プロジェクトチーム(PT)」(座長・川端達夫衆院議院運営委員長)が6月8日「人権侵害救済機関設置法案」に関する中間とりまとめ案を明らかにした。骨子は以下の通り。
 一、人権救済機関は強い権限を持つ三条委員会として設置する。
 一、同機関は内閣府ではなく法務省に設置する。
 一、人権擁護委員の国籍条項は地方参政権を有する者に限定する。
 一、調査拒否に対する過料の制裁は当面設けない。
 一、報道機関などによる人権侵害について特別の規定は設けない。
 一、5年をめどの見直し条項を設ける。

5,法務省が12月15日に示した法案概要は、8月2日の「基本方針」、12月6日付け新たな人権救済機関の設置についてのQ&Aを内容とする。人権委員会を法務省所管とするなど懸念事項に対し納得のいくものではない。

6,法務省や「解同」の狙い
①法務省は権益保持と、私人間の問題に介入し国民の言論表現活動抑圧を狙う意図がある。2002年11月7日の参議院法務委員会で、政府参考人の吉戒人権擁護局長は、「本法案は、同和地区の出身であるという社会的身分に基づくものも含めまして、人種等を理由とした社会生活における不当な差別的取扱いをこれは明確に禁止いたしております。とともに、いわゆる部落地名総鑑の頒布でありますとか、あるいは差別的取扱いを行う意思を表示する広告の配布等の不当な差別的取扱いにつながるおそれの極めて高い一定の行為を禁止するものである」と、部落解放同盟が1985年から展開している部落解放基本法にある差別禁止規定と「全く軌を一にする」との発言からも明らかである。

②部落解放同盟は組織と利権温存のため、人事掌握により、運動の生命線と位置づける「差別糾弾闘争」の合法化で国民分断・人権侵害の継続を狙っている。部落解放・人権政策確立要求中央集会基調提案(2004.02.03)では「パリ原則に基づく人権委員会創設を中心とする『人権侵害救済法」の早期制定を』で、『第4に、国や都道府県において設置される人権委員会の委員および事務局には、人権問題・差別問題に精通した人材を、それぞれの人権委員会が多様性・多元性に配慮して独自に採用すること』とし、本年に入っての要請行動でも同様の点を強調している。

7,全国人権連は、部落解放同盟の狙いを明らかにするとともに、以下の内容で法務省交渉を進めてきた。
①新たな人権侵害救済法案は国会で全会一致の可決となるようにする
②人権委員会は権力や大企業による人権侵害のみを強制救済の対象にする
③報道や表現規制を強制措置の対象からはずす
④言論や出版の領域は言論の自由を尊重する
⑤国連パリ原則にのっとった独立性と実効性が確保されるものにする
⑥国内人権機関の設置に関わる議論は、その必要性・有用性を国民公開で行い、拙速に提案すべきではない

7,いま地域社会には、超高齢社会に向かうなかで貧困と格差が極めて深刻な問題として現れている。また東日本大震災・原発問題が及ぼしている重大な人権侵害がいまも続いている。人権諸課題の解決に向けた住民の取り組みは広がっているが、行政による条件整備や住民への支援・調整が今ほど求められている時はない。政府にはこうした人権侵害に係わる救済措置を十分な予算をもって対応することが求められる。問題の多い人権機関設置を急ぐことや「差別と虐待」に人権侵害問題を限定することは許されない。

8,法務省「法案概要」に係わる疑問は依然と残り、要求も反映されていない。
① 新たな人権機関が必要なのかが不明である。人権侵犯事案で解決できない問題は司法でも解決できないのか。
② 法案で「差別」「人権侵害」「差別助長」をどう定義するのか。
③ 人権救済機関は公権力や大企業などでの人権侵害問題に対応できるのか。
④ 人権機関の所管について省は法務省としたが、私たちや多くのマスコミも内閣府の所管を求めている。基本骨格部分は5年後見直しとすべきではない。
⑤ 人権委員会の機構(中央、地方)について仕組みが不明である。
⑥ 国民間の言論や表現出版に係わる領域に「差別助長行為」などと介入せずに、国民の平等権侵害問題を救済対象とすべく列挙が必要と考える。

9,よって、新たな人権救済機関の設置に係わっては、人権施策推進審議会答申そのものもが同和対策終結以降を臨んだ事から来る重大な制約を持ち、「差別と虐待」からの救済を主としたことから、国際社会の動向や国民の願いとかけ離れたのであって、ここは原点に立ち返り、立法根拠とする、そのものから国民的な検討を行うことを求めるものである。

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