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人権救済機関 政府から独立した権限を 西日本新聞社説

人権救済機関 政府から独立した権限を
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/258893

2011年8月18日 11:00 社説

 不当な差別や虐待などで人権を侵害された人々を救済するための法律をつくることについて、国民の間に異論があろうはずはない。

 その意味では、江田五月法相が「人権委員会」の創設による人権侵害救済の基本方針を示し、新たな法案作成を急ぐよう指示したことは評価できる。

 しかし、これまで人権救済を目的とした法案が国会に提出されたり、再提出の議論が起きるたびに、私たち報道機関は法案内容に異論を挟み、性急な法制化に反対してきた。

 なぜなのか。法案に規定された人権救済のための機関の権限や規制対象となる侵害事例に、言論・表現活動に公権力が介入する余地があり、報道の自由が脅かされる恐れがあったからだ。

 2002年に当時の自民党政権が国会に提出した「人権擁護法案」が廃案になったのも、そうした懸念が報道機関だけでなく、国民の世論として高まったからにほかならない。

 当時の法案には、事件当事者や公人などに対するメディアの「執拗(しつよう)で過剰な取材」を規制する条項や、救済機関の強制的な調査を拒否すれば罰則を科す規定が盛り込まれていた。

 救済機関が法務省の外局に置かれることも、独立性や中立性が保たれるのかという疑問を抱かせた。

 法律を恣意(しい)的に運用すれば、メディアに対する規制だけでなく、公権力による言論の監視や統制、制裁を伴う強制調査が可能になるのではないか。そんな国民の不安が法案成立を阻んできた。

 自民党政権は、その後もメディア規制を「凍結」するなどの修正案を示し、何度か法案の再提出を試みたが、10年近くたっても法制化に至っていない。

 今回、江田法相が示した基本方針では報道の自由を脅かすメディアの取材活動を規制する条項は消えた。救済機関に強制調査権を持たせることも除かれ、調査拒否に対する罰則も設けていない。

 自民党政権の旧法案で強い批判のあった条項や規定を「削除」した点は、評価したい。それでも問題は残る。

 新たな救済機関となる人権委員会は、公正取引委員会などと同様に独立性の高い国家行政組織法に基づく「三条委員会」と位置づけるが、旧法案どおり法務省の外局として設置するという。

 検察庁や刑務所、入国管理施設、少年の矯正・更生施設など法務省が所管する現場には、人権侵害の申し立てが少なくない。法務省の外局でこれに対応し、調査の独立性を貫き通せるのか。

 公権力による人権侵害の監視・調査機能に欠ける救済法案では意味がない。救済機関は、やはり政府から独立した委員会として設置するべきだ。

 でなければ、状況や立場は異なるが、原子力行政を担う経済産業省の外局として置かれた原子力安全・保安院と同じ轍(てつ)を踏むことになりかねない。

=2011/08/18付 西日本新聞朝刊

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