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人権侵害救済法Q&A 解放新聞大阪版2011年5月23日

解放新聞大阪版 第1872号 2011年5月23日より

http://blhrri.org/topics/topics_0299.html

人権侵害救済法Q&A
次期臨時国会で提出へ ~ 超党派の合意めざした取り組みを

  政府・民主党は「人権侵害救済法案」を次期臨時国会に提出する方針を固めた。2002年の小泉内閣による「人権擁護法案」の提出・廃案から実質的な国会審議は行われてこなかったが、次期臨時国会では不当な差別や虐待の被害者救済を目的とした「国内人権委員会」の設置を柱とする「人権侵害救済法案」の制定が大きく動き出すことになる。そこで法制定をめぐるこれまでの経過や議論、「人権擁護法案」との違いなどについてあらためてQ&Aの形でまとめてみた。次期臨時国会での制定に向けて、大きく世論を盛り上げていこう。

Q1 「人権擁護法案」はどうなったのですか
同和対策の特別法終了を見据えて設置された人権擁護推進審議会が2001年5月に「人権救済制度の在り方について」を答申しました。この答申を踏まえて2002年3月、小泉内閣は国の責任のもとに「人権擁護法案」を国会ら提出しました。しかし、この法案は設置される人権委員会の「独立性」「実効性」への疑問やメディア規制が盛り込まれているなど、様々な問題があったことから4度の国会で審議されたものの衆議院の解散に伴って自然廃案となりました。
2005年に再提出の動きがありましたが、当時の政権与党である自民党内に強い反対意見が出て、結局その後自公政権では提出されることはなく現在にいたっています。

Q2 反対する人たちの主張はどのようなものですか
「人権擁護法案」はそれ自体に問題を含んだ法案でしたが、当時はその法案の内容すら踏まえない荒唐無稽な反対論が横行していました。代表的なものは産経新聞の「正論」に掲載された西尾幹二氏の論文です。誤読、もしくは意図的な読み替えにもとづいて、例えば「拉致被害者の家族が政府と北朝鮮を非難する声明を出したら、人権委員会に出頭を求められ、自宅が立ち入り検査され、園曽の政治的発言が禁じられる」など有りもしない「不安」をあおって批判をしたものでした。自民党の一部やネット上の反対論の多くも、この論文と同様の視点に貫かれています。

Q3 民主党はどのような対応をとってきたのですか
民主党は野党時代から「人権侵害救済法」の制定に取り組んできました。2002年に「人権擁護法案」の対案としてまとめられた「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案大綱」の段階、さらに2005年にも民衆党案がまとめられています。法律の名称、人権委員会の在り方、人権委員の構成など、より私たちの主張に近い考え方で「救済法」制定に向けた努力が積み重ねられてきました。2009年の衆議院選挙に際しての政権公約(マニフェスト)でも「人権侵害救済機関を創設」と明記されています

Q4 政権交代後の動きはどうなっていましたか
2009年の歴史的な政権交代後、千葉法務大臣が就任会見の冒頭で「人権侵害救済機関の設置」に取り組むことを表明しました。2010年3月には松岡徹参議院議員の質問に対して鳩山総理が「できる限り早期に提出できるよう努力をお約束します」と答弁など積極的な姿勢を示していました。
しかしその後、「普天間基地」の問題や「政治と金」の問題で国会が混乱を極めたことから、民主党の鳩山代表・小沢幹事長が辞任。菅政権の発足後は法務省の政務三役名で「新たな人権救済機関の設置について(中間報告)」が公表されましたが、直後の参議院選挙で菅総理の唐突な消費税発言などで大敗。衆参のねじれ現象のなかで、国会運営は難しい状況となり、「救済法」の議論も難しい状態が続いてきました。

Q5 「人権侵害救済法案」と「人権擁護法案」はどこが違うのですか
民主党は4月に「人権侵害救済機関検討プロジェクトチーム」(川端達夫座長)を設置し、今国会中に法案の骨子をまとめる予定です。ベースとなるのは2005年に作成された民主党案で、これをもとに民主党内で骨子がまとめられ、人権侵害の定義、国・地方の組織の在り方などについて法務省で制度設計が行われることになります。
具体的な法案はこれからですが、2005年案と「人権擁護法案」を比較すると、最大の違いは設置される人権委員会の位置づけです。民主党案では「内閣府の外局」となっていますが、人権擁護法案では「法務局の外局」と位置づけられています。また人権擁護法案で批判の強かったメディア規制の条項は、民主党案にはありません。

Q6 「人権侵害救済法案」の実現には何が必要ですか
人権は党派を超えた課題であり、超党派的な合意にもとづく法制定が求められることから民主党はもとより、与野党を超えた幅広い働きかけが必要です。今年2月には超党派の国会議員でつくる「21世紀人権政策懇話会」で民主、自民、公明、国民、みんな、社民の各党の連名で菅総理、江田法務大臣に要請書が提出されています。
一方で国会内外の反対勢力も「人権侵害救済法」「外国人地方参政権付与法案」「選択制夫婦別姓法案」の三つの法案を「日本解体3法案」と位置づけるなど反対の動きを活発化させています。
こうした動きに歯止めをかけるためにも深刻な差別・人権侵害の実態を「立法事実」を突きつけるとともに、▽人種差別撤廃委員会の度重なる勧告、▽世界で100を超える国がすでに国内人権委員会を設置、▽日本は国連人権理事国などを背景に、政治の責任、政府の責任、国際責任という観点から、超党派での合意をめざした取り組みが求められています。

[参考資料:2009民主党マニフェスト(抜粋)]
人権侵害救済機関を創設し、人権条約選択議定書を批准する
(政策目的)
○人権が尊重される社会をめざし、人権侵害からの迅速かつ実効性ある救済を図る
(具体策)
○内閣府の外局として人権侵害救済機関を創設する
○個人が国際機関に対して直接に人権侵害の救済を求める個人通報制度を定めている関係条約の選択議定書を批准する

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