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隣保館 特別法終結の意義をふまえて抜本見直しが求められる

京都市同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会
報 告 書
平成21 年3 月6 日

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2 コミュニティセンターの在り方について
(1)概要及び経過
京都市は,大正8 年に,全国に先駆けて,三条地区に託児所を開設した。
当時,旧同和地区では,不良住宅が密集し,衛生状態も悪く,住民が教育を
受けることも十分ではない状況があり,そうした環境が幼児の育成に悪影響
を及ぼすとの考えから,幼児の保育や幼児を通じた父母の教育を目的として
開設したものであった。その後,家事見習所,公設浴場,トラホーム治療所
等を設置し,昭和11 年には,託児所と家事見習所を統合する形で隣保館を設
置した。
以降,隣保館は,福祉センター,屋内体育施設,学習センター(現在の学
習施設)等の機能を充実し,若年層の就労や読み書きのできない高齢者のた
めの生活上の相談をはじめ,生活実態の把握や,各種施策の周知に努めると
ともに,青少年対策事業や老人対策事業等の各種事業を実施してきた。
その後,平成14 年3 月末の「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特
別措置に関する法律」(以下「地対財特法」という。)の失効に伴い,平成14
年4 月,隣保館条例をコミュニティセンター条例として全面改正し,15 箇所
のコミュニティセンターを,「人権文化が息づくまちづくりを進めるための市
民の交流と地域コミュニティ活動の拠点」と位置付け,その利用対象を,区・
支所域,市全域へ拡大した。
また,従来の講座・教室,講演会等の地域交流促進事業を,「学びとふれあ
い」のための事業として再編し,現在は,参加対象範囲を市域へ拡大してい
る。
更に,コミュニティセンターの運営について,地域に根ざした運営組織が
事業運営を行うことが,住民の自立や地域コミュニティの振興につながると
の考えから,「学びとふれあい」のための事業の委託を進め,現在,6 箇所の
コミュニティセンターにおいて業務をNPO法人等へ委託している。
こうした経過のもと,現在,15 箇所のコミュニティセンターにおいて,相
談事業,貸館事業,交流事業(啓発事業)が実施されている。
(2)意義と役割
隣保館は,旧同和地区における身近な行政機関,行政と住民のパイプ役と
して,地域住民にとって必要不可欠な役割を担い,同和問題の解決に向け,
主として旧同和地区住民の生活改善や生活支援に取り組み,地域住民や関係
団体の努力と相俟って,住民の社会的,経済的,文化的生活の向上に大きく
貢献してきた。
また,地対財特法の失効後は,コミュニティセンターとして,人権文化の
息づくまちづくりを目指し,生活相談をはじめとする隣保事業に加え,市民
の交流とコミュニティ活動の振興という役割を担い,一部のコミュニティセ
ンターにおいて,地域に根ざしたNPO法人等が一部事業を受託することな
どにより,小学校区域全体でのコミュニティ形成の動きが芽生えつつあるな
どの成果を挙げてきた。
(3)現状と課題
しかしながら,これまでの長年にわたる生活支援を中心とした施策は,旧
同和地区の環境改善が大きく進み,住民の生活実態やニーズも変化する中で,
今日時点から振り返ってみれば過剰な面があったといわざるを得ず,また,
そのことが住民の行政に対する過度の依存を生み出し,住民の自立の妨げと
なっている側面があるといわざるを得ない。
また,住民の生活環境の変化にかかわらず,従来と同様の隣保事業を実施
していること自体が,コミュニティセンターが「特別な施設」であるという
印象を市民に与えている側面も否定できない。
特に,生活相談は,住環境や住民の生活実態の改善を背景に,年間の相談
件数が大幅に減少し,平成19 年度には,コミュニティセンター1 箇所1 日当
たりの相談件数は約1.8 件となっている。また,相談内容にも変化がみられ,
かつては教育や就労に関する相談が最も多かったが,平成19 年度では,住宅
や駐車場に関する相談が最も多く,一般的な問い合わせや,要望,苦情が中
心となっており,関係機関への取次ぎが多くを占めるなど,コミュニティセ
ンターで実施する意義が薄れている。
貸館事業における施設の利用については,広報の充実に努め,平成19 年度
の利用件数が,平成14 年度と比べ,屋内体育施設で約2.1 倍と倍増している
ものの,本館では,約1.2 倍にとどまり,平成19 年度の1 日当たりの利用件
数は,貸出施設1 箇所当たり,本館約0.2 件,屋内体育施設約1.5 件と,未だ
低い状況にある。また,結果として,少数の団体,サークルだけの利用にと
どまっているものもあり,特別扱いとの誤解を与えかねない実態もある。
更に,一部のコミュニティセンターにおいては,地域に根ざしたNPO法
人等に一部業務を委託することにより,小学校区域全体でのコミュニティ形
成の動きも芽生えつつあるが,事業運営への参画が各種団体のコアメンバー
にとどまるなど,個々の住民の主体的な参加につながっているとまではいい
難い。
一方,コミュニティセンターの運営は,京都市職員による直営を基本とし
ており,現在,職員105 名を配置し,人件費約9 億円,運営費約3 億円とい
う多大な経費を要している。
これらの状況は,市民的理解が得られる状態とはいえず,今日的視点から
抜本的に見直す必要がある。
(4)見直しの視点
隣保館,コミュニティセンターは,先に述べたとおり,これまでにその意
義,役割を果たし,一定の成果を挙げてきたと認められるが,一方で,今日
的に振り返ってみれば,これまでの行政の行き過ぎた取組は,住民の行政依
存を生み,自立の妨げとなっている側面があり,「特別な施設」との印象があ
る従来のままでは,市民の共感と理解を得ることはできない。
同和問題を真に解決し,人権文化の息づくまちづくりを進めていくうえで
は,住民の自立はもとより,同和行政に対する市民の不信感を払拭する必要
があり,今日的視点から,抜本的かつ速やかに見直すべきである。
具体的な見直しの検討に当たっては,コミュニティセンターが「特別な施
設」という印象を与えないよう,「全市民的な視点」から検討するべきであり,
また,これまでの取組が住民の行政依存を生み出してきたことを反省し,「住
民の自立」につなげるという視点を持つ必要がある。
また,いわゆるソフト(機能)とハード(施設・設備)を必ずしも一体の
ものとして考えるのではなく,例えば,ソフトを別のハードに組み込む,す
なわち,必要な機能は別の施設へ移管・統合するといったことも考えるべき
であり,ハードについては,市民の貴重な共有財産として,市民の共感と理
解が得られる活用を図るべきである。
(5)事業や施設等の在り方について
ア ソフト(機能)について
(ア)相談事業
生活相談については,現在,相談件数は大きく減少し,内容も切実なも
のから,区役所をはじめとする関係機関への一般的な問い合わせや取次ぎ
などに変化しており,必ずしもコミュニティセンターで実施する必要性は
なく,高齢者等に対して十分配慮のうえ,地域の行政機関である区役所や
課題別の専門機関で対応する方がより効果的である。
また,日常の身近な相談については,「住民の自立」という視点に立ち,
可能な限り地域住民の相互扶助,自主的な活動に委ねていくべきである。
(イ)貸館事業,交流事業(啓発事業)
施設の利用については,依然として低い状況にあり,結果として少数の
団体,サークルだけの利用にとどまっている施設もあり,特別扱いとの誤
解を与えかねない実態がある。このような中,多額の経費をかけて従来ど
おりの利用に供していくべきか,抜本的な検討が必要である。
なお,屋内体育施設については,5 年間で利用件数が倍増するなど,市
民の利用ニーズが高いと考えられることから,受益者負担の観点から適正
な料金を徴収したうえで,更なる利用促進のため,休日開所など,サービ
ス拡充を図るべきである。
交流事業・啓発事業については,これまでコミュニティセンターで実施
してきた意義もあったと考えられるが,事業が固定化し拡がりが見受けら
れないものもあることから,今後は,従来の手法や施設にとらわれずに在
り方を検討するべきである。
また,「住民の自立」という視点に立ち,地域コミュニティの形成につ
ながる交流事業については,行政が実施するのではなく,可能な限り地域
の自主的な活動としていくべきである。
イ ハード(施設・設備)について
施設そのものについては,既成概念にとらわれることなく,市民共有の社
会資源として,福祉,教育等,様々な課題や市民ニーズに応じ,全市民的な
観点から活用方法を検討するべきである。
また,「住民の自立」を促進する観点からは,地域の住民団体が有償で借
り受け,地域の自治会館のような形で,自主的に運用することも検討するべ
きである。
今後の施設の活用の検討に当たっては,必ずしも現行のすべてのコミュニ
ティセンターを同じように活用していく必要はなく,地域のニーズや立地条
件等を踏まえて個別に検討していくべきである。また,施設の活用を検討す
るに当たっては,市民参加による手法も検討するべきである。
なお,旧同和地区内にはコミュニティセンターだけでなく,浴場や保育所
等の社会資源が集中的に存在しており,地区周辺を含めたまちづくりの観点
も取り入れながら,これらを全市民的に活用していく視点も必要である。
ウ 運営体制について
職員105 名(人件費約9 億円),運営費約3 億円を要している現状は,厳
しい財政状況にあって,早急に見直さなければならない。
また,今後の施設運営に当たっては,従来のNPO法人等への業務委託に
とどまらず,今後の施設の活用方法に応じ,それにふさわしい様々な運営形
態の導入を図っていくべきである。
(6)コミュニティセンターの今後の在り方について
既に述べたとおり,隣保館は,同和問題の解決に向けて,住民や関係者の熱
意のもと,全市を挙げて講じられた各種施策の実施拠点としての役割を担い,
住民の社会的,経済的,文化的生活の向上に大きく貢献してきた。また,コミ
ュニティセンターとして位置付けられて以降は,地域に根ざしたNPO法人等
が一部業務を受託することなどを通じ,住民の自立へ向けた自主的な活動の芽
生えといった成果も生み出してきた。
しかしながら,長年にわたる施策が一方で住民の行政依存や「特別な施設」
との印象等の様々な課題を生み,そのことが市民の同和行政に対する不信感を
招いていることも事実であり,今日時点における上記の検討を踏まえれば,現
行のコミュニティセンターが従来の形態のままで存続する必要性はなくなっ
ているといわざるを得ない。
したがって,同和行政に対する市民の不信感を払拭し,同和問題の真の解決
を図るためには,これまでのコミュニティセンターの役割は一旦終結させ,今
後の在り方については,市民の共感と理解が得られるよう,抜本的かつ速やか
に見直すべきである。
もとより,この見直しは,住民の更なる自立の促進,地域コミュニティの振
興を図るためのものであるとともに,市民共有の社会資源を,全市的な観点か
ら,より有効に活用していくためのものであるべきである。
このため,これまでの取組により生まれてきた,地域の自主的な活動の芽生
えについては,その成果を住民の更なる自立へ向けた次のステップへ円滑につ
なげるため,地域コミュニティの振興につながる交流事業等を地域の自主的な
取組へ移行できるような配慮が必要である。
また,今後の施設の在り方については,一定の期間を設けて,市民参加によ
り検討するなどし,福祉,教育等の様々な課題や市民ニーズに対応し,全市的
な観点から市民生活,市民活動を支援する施設として活用するなど,より開か
れた活用の在り方を具体的に定めていくべきである。

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