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布川事件 等身大で ドキュメンタリー完成

布川事件の2人 等身大で
ドキュメンタリー完成 女性ディレクター14年の成果

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ibaraki/news/20101004-OYT8T00121.htm

1人の女性映像ディレクターが14年間追い続けた布川事件のドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」(2時間38分)が完成し、今月9日と16日、東京・港区で一般向けに初めて上映される。撮影、編集などをほぼ一手に手がけたのは、井手洋子さん(55)。1996年の仮釈放後から桜井昌司さん(63)、杉山卓男さん(64)の生活に長く密着し、そこで語られた本音から事件を描いた労作だ。井手さんは「悩みながら小さな幸せを見つけていく等身大の2人の姿を通じて、事件の問題を身近に感じて欲しい」と話している。

 映画は29年ぶりに社会に出ることになった、2人の仮釈放の日から始まる。井手さんのカメラは、電車の券売機の使い方がわからなかったり、仕事が見つからないなど、現実社会に戸惑いながらも、めげずに「普通の生活」を取り戻そうとする2人を追う。

 「梅が咲いているの見て、生きてて良かったと思う」とぽつりと漏らす桜井さん。仕事や交際相手を見つけるなど安定した生活を手にし、「今の生活が信じられない。また悪いことが起きるのでは、と不安になる」と語る杉山さん。2人の様々な本音が、事件が抱える問題を浮かび上がらせる。

 井手さんは企業の宣伝ビデオを制作しており、特別、冤罪(えんざい)に関心があったわけではない。しかし、知人から事件の支援コンサートの撮影を頼まれたのがきっかけで2人に興味を持ち、その強烈な個性に魅せられ、生活に入り込んで撮影するようになった。

 刑務所を出たばかりの2人に「最初は何を聞いていいかわからなかった」。しかし新生活に戸惑う2人の案内役になるうち、次第に打ち解け、2人はカメラの前で本音を漏らすようになった。

 その後は再審開始の先行きが見えない中、しばらく撮影から遠ざかっていたが、作品化への意欲を後押ししたのが、2008年の東京高裁の再審開始決定だった。桜井さんに誘われて決定に立ち会い、撮影を再開し、「ここまで撮ったら作品にするのが私の責任」と思うようになった。

 自宅に眠っていた仮釈放直後の映像を久々に見返すと、驚いた。「当時の2人の新鮮な表情や、心の叫びが素直に映し出されていた」からだ。撮りためた映像は14年で約250時間に上り、「何気ない本音が出ているところ」を拾いながら編集しているうち、2年が過ぎた。

 井手さんは、映像の整理を手伝ってくれた20代男性が「2人がこんなに頑張っているなら、自分も頑張らないと」と話すのを聞き、「14年もの間、撮り続けることができたのは、あきらめない2人の生きるエネルギーを伝えたかったからかも、と思った」という。

 「『冤罪(えんざい)』というと敬遠されてしまうかもしれないが、この映画は不正を告発する映画ではない。普通になりたい2人のおじさんの生きる力や人間の存在意義を、見る人に感じ取ってほしい」。井手さんは映画に込めた思いをそう話している。

 上映会は、▽10月9日午後6時、港区芝5の18の2の港勤労福祉会館。資料代1000円、定員100人で要予約▽10月16日午後1時半、港区芝浦3の2の22の田町交通ビル6階大ホール。前売り1000円、当日1200円で定員300人。問い合わせは上映委員会(03・6273・2324)。

(2010年10月4日  読売新聞)

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