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弥栄中の人権教育・読者の声に答えて。 果て無き出自教育ではないか

記者の目:弥栄中の人権教育・読者の声に答えて=林由紀子(大阪社会部)

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20101013ddm004070237000c.html

 ◇学びと出会いが偏見取り去る

 同和地区や児童養護施設で育つなど、複雑な社会背景や家庭環境を抱えた生徒が多く通う京都市立弥栄(やさか)中学校(東山区、野里基次校長、72人)。長年、真正面から同和問題に取り組む同校を取材し、差別と向き合う生徒と保護者の姿を紹介した本欄(8月20日)に、全国の読者から約20通の投書が寄せられた。
 ◇「もう終わった」否定的投書4割

 「子どもたちの姿に感動した」「問題意識を薄れさせてはいけない」など、私の主張に共感する意見の一方で、「同和問題はもう終わっている」「無関心な人が増えていい」「逆差別や差別の利権化こそ問題」といった否定的な意見も4割あった。

 被差別部落の出身や血縁を理由に、不当に差別される同和問題。02年まで、30年余り続いた行政の特別措置は、同和地区の生活水準を一定レベルまで引き上げた。その過程で、一部の人間による利権行為が問題となったことも事実だ。しかし、結婚や就職など、偏見や誤解から生まれる差別は、利権とは関係のない人々を今も苦しめ続けている。

 同和問題を「もう終わった」とか、利権との関係だけでとらえようとする人にこそ、弥栄中の今春の卒業生に密着した本紙大阪本社版朝刊のルポ「弥栄のきずな」(毎日jp「http://mainichi.jp/kansai/reportage2010/archive/」参照)を読んでほしい。彼らは教えてくれる。正しい知識を持つこと、そして仲間を大切にする気持ちが、差別につながる偏見や誤解を取り去り、問題解決への近道になるのだと。

 私自身、弥栄中の生徒と出会うまで、同和問題には偏見さえ持っていた。利権や糾弾といったイメージが先行し、同和問題を色眼鏡で見ていたのだと思う。それが、今ここにある差別の現実を直視する邪魔をしていた。

 弥栄中の教師にも、赴任当初は偏見や誤解を持っていたと語る人が少なくない。現在は別の中学に勤める女性教師(26)も「言動には出さないまでも、心の中では偏見を持ち続けてきた」と語る。しかし、日々生徒と接する中で「この私の思いが、目の前の子どもを傷付ける、悲しませることになるんだ」と気付いた時、見方が変わったという。

 彼女は、地元の運動団体などが主催する啓発劇の舞台にも立った。「あんたの弟が部落の人と結婚したら、私まで部落の人間になるやんか」。役の上で、婚約者の弟が同和地区出身の女性と結婚することになった時のセリフだ。「あんたなんか幸せになる権利あると思ってるの?」「死んでよ」と相手の女性に詰め寄るシーンもあった。

 あまりに過激なセリフに、演じられるか悩んだが、同和地区出身の女性に励まされた。「先生があの役を思いっきり悪く演じてくれて、お客さんに『あの女、なんてやつや』って思わせてくれることが、この劇の一番の成功なんやで」。強烈な差別意識を持つ人物を演じた経験が、彼女を教師としても成長させた。
 ◇自分の目で見て判断する生徒ら

 一度とらわれた偏見をぬぐい去るのは容易ではない。しかし、それを変えるのが「学びと出会い」だと思う。弥栄中の教師は口をそろえる。「同和問題を教えたことで、逆に偏見を持ったり、差別者になった生徒は一人もいない」と。「部落はきれいごとだけやない」「大人になったらわかる」。家族からそう聞かされた生徒もいる。しかし、彼らは自分の目でしっかりと相手を見つめ、自分の尺度で判断する力を持っている。

 「親にはいろいろ言われることもあるけど、(地区出身でない)僕も(地区出身の)友達も何も変わらない」。男子生徒の言葉だ。同和地区の出身だと隠していた友から事実を打ち明けられた女子生徒は、当時の気持ちをこう表現した。「どこに住んでるって知る前から友達やったやん。私に差別されると思って黙ってたんやったら、失礼やわ」

 地区出身のある女子生徒は、在日の友達と出会い、差別を恐れる自分の中にも差別の芽があったことに気付き、全校生徒の前で訴えた。「国や名前で差別することが悪いことだと分かった。今まで、一緒になって悪く言ってきた友達や弟にも差別はあかんて伝えたい」

 生徒たちの姿は、子どものころから正しい人権感覚を身に着けることの大切さを教えてくれる。さまざまな環境の仲間と共に学び、育つことが差別をしない人間をつくる。記事への否定的な投書を読み、落ち込んでいた私を救ってくれたのも、ある女子生徒の一言だった。「私は、知らないから差別されないのではなくて、知っているけれど差別されない社会の方が、いいと思う」

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毎日新聞 2010年10月13日 東京朝刊

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