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選挙を先送りしても「経済対策」で解決はできない 

巨額のマネーは、いったい誰が支えているのか

2008/10/05 00:31
http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/742318/

【国際政治経済学入門】米金融安定化法が成立


最大7000億ドル(約70兆円)の公的資金で金融機関から不良資産を買い取る米国の金融安定化法案が3日、米下院で採決され、賛成多数で可決された。ブッシュ大統領はすぐに署名し、9月29日に米下院で否決され世界の金融市場に大混乱を引き起こした法案はやっと成立した。これで米当局がサブプライム住宅ローン問題に絡む金融危機対策として表明した公的資金・支援は、最大1兆3140億ドル(約140兆円)に達する=表。これはカナダやスペインの国内総生産(GDP)を上回る莫大な金額だ。

これほど巨額のマネーは、いったい誰が支えているのか。米国は恒常的な財政赤字国であり、その赤字は米国債をひたすら買い続ける海外のマネーが穴埋めしてきた。そしていま、米国債の最大保有国は中国だ。考えてみると、米国発世界金融危機の奔流を押し止める防波堤「the last resort(最後の貸し手)」は、中国マネーなのではないか…。こうした世界経済の構造をEX連載「国際政治経済学入門」で産経新聞の田村秀男特別記者・編集委員が説き起こす。

◇ 
「最後の貸し手(the last resort)」という金融用語をご存じだろうか。

「降りこめ詐欺」で孫を装った詐欺犯がお年寄りに「最後に頼るのはおばあちゃんだけ、助けて」とだます手口のことだと答える読者は満点というわけにはいかないが、センスがよい。

最後の貸し手とは、中央銀行のことである。不良資産を大量に抱え込んだ金融機関に対して、中央銀行がお札を刷って資金を供給する。そうしないと、金融機関 が手元資金を融通し合って過不足を調整している金融市場で、金融機関が疑心暗鬼になって余剰資金を出さず、経済の血液であるカネが回らなくなる。そこで、 最後の貸し手がおカネを刷って金融機関に供給し、金融市場の機能が回復するというわけである。

今回の昨年8月の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)危機以来、ニューヨーク・ウォール街発の金融危機では、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)がその役割を果たしている。特に、9月に入って表面化した連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)など米政府系住宅金融2社の経営危機とそれに続く老舗証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)、大手生命保険のAIGの経営不安で、FRBは膨大な量のドル札を刷っては市場に流し込んでいる。

ところが、いくら供給しても「まだ足りない、助けて、振り込んで」という電話がFRBにはひっきりなしにかかってくる。

FRBのデータをみると、ドル資金追加供給量はすさまじい。10月1日時点でのFRBの 融資などによる資金供給残高は1兆5331億2800万ドルで、住宅公社、リーマン危機の始まる前の8月28日時点の9437億2500万ドルに比べて、 5894億ドル、62%増。前年同期比で5271億ドル増だから、この1カ月余りで1年分をはるかに上回るドル資金を刷っては市場に流したことになる。

ここにもう一つのFRBデータがある。9月24日時点で、FRBが市中銀行に貸した資金のうち4分の1強は市場で使われず、FRBでの市中銀行の口座に戻っているのだ。資金は消えたわけではないのだが、ドル資金不足に悩む金融機関に回らない。理由ははっきりしている。

金融機関が焦げ付きを恐れておいそれと他の金融機関に融通しないからだ。

結局、根本問題は腐った資産を抱えた金融機関の財務にあるわけだ。そこで、ブッシュ政権は7000億ドルに上る財政資金を使って不良金融資産を買い上げることにしたが、大統領選挙と同時の議会(下院は全員、上院は3分の1)総選挙を控え、「ウォール街の強欲どもを救済するなんて」という有権者の声に押されて議員たちが浮足立っている。

仮にこの救済法案(「金融安定化法案」)が成立したとしても、さらに難題が待ちかまえている。というのは米政府自体巨額の財政赤字を抱えている。赤字国債を発行して資金を調達するしかないが、一体だれがその国債を引き受けるのか。

ここでもFRBが最終的に買い上げればよいと簡単に言っても、中央銀行としての信頼が揺らぐのは必至だ。

最後の貸し手を助ける究極の「最後の貸し手」が必要になる。それはだれか。黒字国の日本か、というと、かつてと違い郵貯も民営化が進み、政府の意向でおいそれと米国債投資というわけにいかない。民間の銀行や生保も下落するドルの資産に投資するわけにいかない。

結局、まとまった巨額の資金を動かせるのは、半年間で2800億ドルを積み上げ、この6月末で1兆8088億ドルの外貨準備を持つ中国しかない。

金融恐慌研究で知られる故チャールズ・キンドルバーガー教授(1910~2003年)は「1929年の大恐慌は最後の貸し手がいなかったために起きた」と断じている。中国共産党という異質で巨大な政治機構に米国はもとより世界経済の命運がかかっているかもしれない。
(特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS

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