立替返済の誤りを認めたのならそのすべてが償還対象ではないか 京都市点検委
おかしすぎるぞ、総点検委員会
http://muhajirin.com/almarid/
Posted by: 寺園敦史 2008年8月 6日 21:16 Blog | 取材メモ
8月6日午後、京都市同和行政総点検委員会(委員長=新川達郎・同志社大学大学院教授)の第5回会合が、職員会館かもがわで行われました。この日もまた、同和奨学金の返還を市が肩代わりしている自立促進援助金制度の見直しについて議論されたのですが、さっぱりわけのわからない、結末となりました。
会議では冒頭、7月30日に開催された自立促進援助金制度についての専門部会(自立促進援助金制度の見直しに係る法的課題整理等研究会)の審議内容(マリード[同和行政オブザーバー] - 風向き少し変わった...か)が、新川委員長から報告がありました。とくに重要な点は下記の4点かと思います。
1 自立促進援助金制度は2007年度から廃止すること(2007年度から市は自立促進援助金の支給を停止している)。
2 廃止とセットで、返還困難者に対する返還免除制度を創設すること。
3 長期自立促進援助金を支給されている借り受け者に対しては、多様な免除基準を設けるものの、すべての借り受け者に対して返還を求めるべきだとの意見と、確定している大阪高裁判決において2000年以前に支給された援助金は「違法とは言い難い」と判定されていることを踏まえ、返還対象者は2001年度以降に返済がはじまったものに限定するとの意見があること。
4 新たに創設する免除基準は、国奨学金の基準(生活保護世帯の1・5倍以内の収入)を基本に考えること。
新川委員長の報告を受け、出席委員一人ひとりが意見を表明しました。それによると全員、上記1、2、4については異論はありませんでした。3(つまり誰を返還対象者とするのか)についても、発言する委員は次々に、2001年度以降に返済が新規にはじまった借り受け者に限定する案に賛同したので、委員長もこの方向でまとめようとしたのですが、これに対し、中坊公平委員(元日弁連会長)が、異議を唱えたのです。
中坊委員の異議内容をわたしなりにまとめると以下のとおりです。基本的には7月30日の研究会での主張と同じだったと思います。
「2001年度以降の借り受け者に限定するということは、それ以前の借り受け者については、市は債権を放棄することになる。そういうことを市民は納得するだろうか。確定判決が2000年以前の援助金の支給については「違法とは言い難い」と言っていることはわかるが、自立促進援助金の問題は、そもそも誤った市の行政によって生み出された問題ではないのか。
「古い借り受け者ということは、大学を卒業して何年にもなる人が多い。そういった人の中には返済能力を十分持っている人もいると考えられるが、そういった人も含めて一律に援助金を支給してきた行政の在り方が今問題にされているのではないのか。
「誤った行政のひずみが問題とされているときに、債権放棄することが市民感覚に受け入れられるかどうか疑問だ。公の債権をどうするか、根本的に考える必要があるのではないか。
中坊委員の主張は、この日の議論の未解決の問題点を指摘するものであったと思います。
つまり、わたしの言葉で言えば、市が、法令や制度の趣旨を意図的に踏みにじり、虚偽の説明(「同和奨学金の返済は必要ない」と言って借り受け者を騙していた)をくり返したことによって生じた問題であるのに、今また債権(数十億円にのぼると思われる)を放棄することを、そんな簡単に決めていいのか、それが京都市の同和行政の抱える問題点を是正することになるのか、という指摘ですね。
きわめて重要な指摘だと思います。
ところが、冒頭わたしが「わけがわからない」と書いたのは、ここからなんです。当然のことですが、この中坊委員の問題提起を受けて、さらに議論が続くのかと思いました。再び委員一人ひとりからこれについての見解を聞くことになると。
しかし、奇妙なことに、新川委員長は議論を打ち切ってしまったのです。今出た意見を踏まえて、自分が自立促進援助金問題の見直し案(委員会としての中間報告案)を作成し、次回委員会に提案したいので、よろしくと告げたのです。
今後の見直し案の根本問題にかかわる対立点があるというのに、審議の終結を宣言するって、いったいどういうこと? 奇妙と言わざるを得ません。突然議論が打ち切られたというのに、中坊委員も他の委員もそれについて反対しなかったことも、またさらに奇妙。
まあ、要するに会議の前からこの日の結論は決まっていたということか?
この日の会議は、この後、コミュニティセンター(旧隣保館)のあり方、改良住宅のあり方の議題にうつりました。ここでもまた、委員のみなさんの大ボケ発言が連発され、傍聴している方がずいぶん恥ずかしい思いをさせられることになりました(聞いているほうが恥ずかしいわ、というやつ)。
わたしは、座っていて、悔しくて情けなくて涙が出るほどだったのですが、同じく、この日傍聴していた運動団体幹部の面々や市会議員の方々はどう受け取ったのでしょう。わたし以上に悔しい思いをしているはずだと思うのですが(だってこれまで長い時間をかけて自分たちが作り上げてきたものが、こんな連中の手でつぶされていくわけですから)、会議終了後、文句ひとつ言うことなく帰ってしまいました。これまたいったいどうしたことか。一発くらいかまさんかい。
Kyoto Shimbun 2008年8月6日(水)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008080600211&genre=A2&area=K00
01年度新規分から返済要求へ
京都市同和奨学金 総点検委方針
京都市同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会(委員長・新川達郎同志社大教授)は6日、高校生や大学生対象の同和奨学金返済を市が全額補助する「自立促進援助金」制度の見直しで、2001年度以降の新たな受給者から奨学金返済を求める方針を固めた。次回総点検委で市に正式提案する。
総点検委は、今年3月に市が設置。大阪高裁で一部支給が違法とされた援助金を中心に専門委を含め検討を重ね、すでに援助金制度の廃止と所得判定による新たな免除基準創設の方針を決めている。
同日の会合では、事実上の給付と説明されていた貸与制奨学金の返済対象範囲が焦点となったが、01年度以降の無審査支給を違法とした大阪高裁判決を重視。01年度以降、新規の受給者を対象に個人返済を求めていく方針を確認した。
市によると、対象者は約1900人で、金額は援助金支給を事実上停止している07年度以降の奨学金返済分、約28億円。同委では今後、国の基準に沿って現行より厳しい免除基準の創設を求める。新基準に基づくと、1900人の半数近くが返済対象になる見通しだが、市が返済免除を約束した経緯を踏まえ、「一部免除や猶予もあり得る」と救済措置も求める。
同日の会合で一部委員から、原則として2000年度以前の受給者にも返還を求めるべきとする意見も出たが、新川委員長は「01年度以降に返済を求めていく方向でまとめていく」と述べ、8月下旬に見直し案を市に提案する意向を示した。市は早ければ11月市議会に諮る。
2008年08月06日 20:19
http://www.kyoto-minpo.net/archives/2008/08/06/07_12.php
京都市の自立促進援助金制度 07年度にさかのぼって廃止に
「京都市同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会」の第5回会合が6日、京都市中京区で開かれ、同和奨学金の返済を市が肩代わりする自立促進援助金制度を07年度にさかのぼって廃止することを決めました。
委員会では、前回の会合で○同制度の廃止○奨学金の返済免除制度の創設○借受者に対する返還請求、を確認したことを受け、同制度廃止の時期について、「自立促進援助金の執行を停止した07年度分から廃止すべき」で委員が同意しました。
返還請求を行う対象となる借受者の範囲については、委員から「大阪高裁での確定判決を尊重し、01年度以降の借受者を対象とすべき」との意見が出ました。一方、中坊公平委員は「奨学金が貸付制度であるから、すべての借受者に対して返還を請求すべき」と発言しました。
返還免除基準については、国の基準に準じる方向が示されました。
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