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市補助金めぐる毎日放送の報道-BRC

放送と人権等権利に関する委員会


●第34号  部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え 
http://www.bpo.gr.jp/brc/kettei/k034-mbs.html


<北口末広 松山精助 両氏からの申立て>

Ⅰ.申立てに至る経緯

対象となった放送番組

毎日放送の報道番組「VOICE」 
放送時間 2006年11月20日午後6時36分から4分40秒間

 毎日放送は、2006年11月20日の報道番組「VOICE」(関西ローカル)の中で、「大阪市の民間社会福祉施設等に対する償還金補助」を取り上げ、「予算計上しないまま支給しているのは“ヤミ補助金”の疑いがある」と伝え、また、番組内では、当該補助金の支給を受けていた法人は約30あり、この内8法人は部落解放同盟の幹部らが理事を務めていることなどを、該当する2施設の映像などとともに放送した。
 この番組に対し、部落解放同盟大阪府連の北口末広書記長らから毎日放送に「抗議する」との申し入れがあり、12月7日北口氏らが毎日放送を訪れ、口頭で抗議した。
 抗議内容は、「償還金補助は大阪市の制度であり、“ヤミ”補助金ではない」「部落解放同盟関連法人だけが対象ではないのに、意図的に部落解放同盟を叩いている」「年間返済金の『2倍』の補助金が支払われていたというのは事実誤認」など。
 これに対し、毎日放送は12月20日付け文書で次のように回答した。

  「当該補助金は予算計上されておらず、不透明・不適切であり、“ヤミ補助金”という表現は不適切ではない」「部落解放同盟関連法人だけに限定していないことを表現したつもりだが、誤解を招いたことは本意ではない」「04年度に当該施設に2年分の補助金が入金されたのは事実。そうなったのは市側の事務手続きの遅延で2年分が同一年度に支払われたと説明しており、報道内容は事実誤認ではない」

 この後、3月14日付けで部落解放同盟大阪府連の北口書記長から毎日放送(山本社長宛)に「06年11月20日放送の『VOICE』についての再質問と要請」という文書が送られ、「部落解放同盟を殊更に強調していないか」「社会福祉法人側や部落解放同盟に問題があったのか」「部落解放同盟の支部長や府連書記長の肩書きを報道する必要があったのか」など8項目について質している。これに対し、毎日放送は4月3日付けで北口氏宛に「再回答書」を送り、項目別に答えるとともに、「大阪市の公金支出の問題点を指摘した本件報道は、その目的の公益性からみても正当なものだ」としている。
 この毎日放送の「再回答」を受けて、北口氏らは「毎日放送に対し謝罪とVOICE報道によって広がった誤ったイメージの是正を求めていたが、その前段階である見解に大きな違いが存在しており、このままでは私達の求めていることが理解されない」として、局側との交渉をやめ、6月11日付けでBRCに申し立てた。

Ⅱ.申立ての要旨

1.名誉侵害

 「償還金補助」に関しての報道で、部落解放同盟やそのリーダーである個人が関係している法人を殊更に強調して「特別な補助金」が支給されていたとした点は事実に反し、申立人の名誉を侵害している。
 この「償還金補助」は、約30年間続けられてきた制度で、他の多くの施策や補助も同様だったのに、なぜ殊更部落解放同盟と結び付け、「不透明さ」とともに報道したのか理解できない。
 また、大阪市の事務手続の遅れから、補助金が2年分同一会計期間に入ったことは、報道前に分かっていた事実であるにもかかわらず、「部落解放同盟大阪府連の書記長が理事を務める旭区内の法人施設の場合、年間の返済金の元金307万円であったのに、なぜかその2倍に当る614万円の補助金が支払われていました」という報道は、部落解放同盟やその幹部である申立人の「マイナスイメージを助長し」「名誉を侵害した」と言わざるをえない。
 被申立人の毎日放送は「本件報道の主旨は『償還金補助』支給手続の不透明さで、あくまで大阪市の問題であって、部落解放同盟に何らかの責任があるとは考えていない」としているが、当該番組をどのように視聴しても、部落解放同盟を標的にしたものとしか考えられない。
 そのうえ、住民監査請求に対する監査結果も「償還金補助の交付決定について恣意的な選択や不平等な取り扱いを行っていたなどをうかがわせる事実は存在せず」と明確に述べているのに、毎日放送は、監査委員指摘の「一部法人を優遇しているのではないかとの不信を抱かせるような取り扱いを改める必要がある」とのくだりだけを強調している。
 これらを総合すれば、報道は行き過ぎた演出であり、申立人の社会的評価を低下させ、その名誉を侵害したものといわざるをえない。 

2.本件報道の表現の仕方及び取材のあり方について

 大阪市の会計処理の遅れで過年度分が次年度に支出されたに過ぎないことを、取材者側は承知していながら「部落解放同盟大阪府連の書記長が理事を務める旭区内の施設の場合、2倍に当たる補助金が支払われていた」と報道したのは、極めて悪意に満ちた意図的なものとしか考えられない。本件報道においては、結局そのナレーションの直後に大阪市の担当者のインタビューで、単なる市の事務手続の遅れであったと分かるような構成になっているものの、表現の仕方としても大いに問題がある。
 毎日放送は答弁書で「杜撰きわまりない実態は伝えるべき情報と判断した」と述べているが、そうなら当初から正確に「大阪市の杜撰な会計処理で2年分をまとめて支出した・・」と報道すべきで、「部落解放同盟大阪府連の書記長が理事を務める」と報道する必要は全くない。
 また、当該番組では、部落解放同盟の名前が5回も登場しているにもかかわらず、部落解放同盟やそのリーダーである個人への取材は一切なかった。こうした取材姿勢には大きな問題がある。

Ⅲ.答弁の要旨

1.名誉侵害との主張に対して

 本件報道は、あくまでも大阪市の補助金行政の不透明さを伝えようとしたものであるが、そのことを具体的事実として報道するに当たって、必要なことがらと判断して部落解放同盟やその関連法人に触れざるをえなかった。
 「2倍に当たる補助金が支払われた」という表現については、行政のずさんさ、つまり大阪市の会計処理の遅れが原因であったことは放送したとおりで、事実関係に誤りはない。この「2倍」の償還金補助を受給した事実を伝えたことによって、申立人のマイナスイメージを助長したとは考えられない。
 本件の「償還金補助」は、一部法人を“優遇する”制度と考えられること、その一方で、過去の事例から部落解放同盟に対する大阪市の「特別扱い」があったことなどを踏まえれば、本件報道において、部落解放同盟との関係に着目するのは必然なことであると判断し、その公的存在や公的立場からして、事実関係を摘示するために必要な要素として報道したもので、部落解放同盟や申立人の社会的評価を低下させるものではない。
 仮に本件報道が部落解放同盟、ひいては肩書で表示された申立人の社会的評価を下げ、その名誉を侵害するものであったとしても、真実性、または真実と信じたことに相当性があったとの観点から不法行為としての名誉侵害は成立しないものと考える。
 すなわち、「償還金補助」の支給先をみたとき、補助対象となりうる512施設のうち、部落解放同盟、人権協会幹部が理事を務める法人施設はのべ42、このうちのべ20施設が補助の対象となったわけで、「償還金補助」を受けた全50施設に占める割合は40%となっており、他施設に比べ補助を受けている割合はきわめて高いといえる。
 住民監査請求については、監査結果は結論としては棄却だが、それは「違法性が認められなかった」ということに過ぎない。当方が「答弁書」で述べたとおり「不信を市民に抱かせるような取扱いについて改める必要がある」として、監査委員が「償還金補助」の運用について大阪市に改善を求めたのも事実である。申立人が、「違法不当とまでは言えない」という監査結果の結論だけを強調するのは、都合の良い解釈のように思われる。

2.本件報道の表現の仕方及び取材のあり方について

  申立人が、「2倍にあたる補助金が支払われていたと報道したのは極めて悪意に満ちた意図的なもの」と批判している点についてだが、この「2倍」という表現は、取材の過程をほぼ時系列に沿って示そうと用いたもので、ニュースでは、いきなり結論を示さず、このように時系列に沿って取材経過を伝える方法がよく採られる。最終的に、「2年分」だったことをはっきり示しており、「2倍」受け取ったと誤解を招くことはないと考える。
 「部落解放同盟や申立人に対する取材が一切なかった」と申立人が主張していることについては、本件報道はあくまで社会福祉法人への補助金のあり方に疑問を呈したもので、部落解放同盟は直接補助金が支給されているわけではないため取材はしていない。放送で建物の外観映像を使用した2法人に対して、事実確認のための電話での聞き取りや外観を撮影しニュースで放送することの告知を放送前に行った。
Ⅳ.委員会の判断

 当委員会は、申立書、答弁書、申立人からの反論書、被申立人からの再答弁書ならびに各書面に添付された資料を検討するとともに、被申立人から提出された当該番組の録画を視聴し、また当事者双方からの意見を聴取した上、以下のとおり判断する。
1.申立人資格について

 本件報道は、前記のとおり、大阪市の民間社会福祉法人に対する補助金の支出における不透明さを「ヤミ補助金」との表現を用いつつ、「部落解放同盟の幹部が理事を務めていたり、大阪市のOBが天下りしているなどの法人」が対象となっていると報じ、さらに具体例として「当時市職員で解放同盟の支部長が理事を務める淀川区内の法人」、「部落解放同盟大阪府連の書記長が理事を務める旭区内の法人」を挙げるとともに、本件報道の中で、「部落解放同盟」または「解放同盟」という名称が5回使われている。
 そこで肩書を付された北口申立人は部落解放同盟大阪府連の書記長を約10年間務め、松山申立人は市職員にして部落解放同盟大阪府連の加島支部長の地位にあるところ、本件報道によって、その個人的名誉を侵害されたとして本件申立てを行った。
 しかしながら、本件報道では、部落解放同盟における肩書は報じたものの申立人両名の個人名を摘示しておらず、原則として個人からの苦情申立てに対応する当委員会の役割に照らし、申立適格を欠くのではないかとの疑問がある。すなわち部落解放同盟における肩書だけでは一般視聴者から見た場合、申立人らを個人として特定できないのではないかとの疑問である。
 この点について、当委員会は慎重に検討した結果、部落解放同盟自体が組織としての規模、その活動の歴史、その果たしている社会的役割、影響力が大きく、10年間にわたってその府連の書記長という要職にあった北口申立人については個人としても知名度も高く、その肩書表示だけでもこの番組を見た多数の視聴者は同申立人を個人として特定して認識できるものと判断し、他方、松山申立人についてはその肩書表示だけでは同申立人個人を特定できないので、当委員会は本件全体を北口申立人による申立てと見て実質的審理に入ることとした。(以下単に「申立人」というときは北口申立人を指す)

2.本件報道による名誉侵害の成否について

 本件報道はこの事実を報じるに際し

① 「奈良の次はまたまた大阪市」とのナレーションで始まり、

② 「部落解放同盟の幹部が理事を務めていたり、大阪市のOBが天下りをしているなどの社会福祉法人に対し、大阪市が特別な補助金を支給していたことが分かりました。」とのキャスターの発言があり、

③ これに関連して部落解放同盟のシンボルである荊冠旗を掲げる福祉施設の外観映像を用いつつ、「当時市職員で、部落解放同盟の支部長が理事を務める淀川区内の法人」を特定して1300万円余の補助金受給の事実を摘示し

④ さらに上記法人とあわせて「部落解放同盟大阪府連の書記長(申立人)が理事を務める旭区内の法人」に言及し、「年間の返済元金が307万円であったのに、なぜかその2倍にあたる614万円の補助金が支払われていました。」と説明する
 など、不透明な補助金制度と部落解放同盟とを強く関係づけ、番組内で補助金を受けていた他の法人については具体的に触れることなく、部落解放同盟ないし解放同盟の呼称を5回も使用して報道した。
 本件報道によって、部落解放同盟が、毎日放送がいうところの「ヤミ補助金」に深くかかわっているものとして印象づけ、部落解放同盟大阪府連書記長として知名度の高い申立人の肩書を表示したことによってその社会的評価を低下させたことは否定できない。
 そこで、本件報道により申立人の社会的評価が低下したと認められる場合に、名誉侵害行為と表現の自由に関する一般的に承認されている法理、すなわち、「その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為に違法性がなく、(中略)右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずることについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しない」(最高一小昭和41.6.23判決民集20-5-1118)に照らし、本件報道により申立人の名誉を侵害する不法行為が成立するかについて検討する。
 まず第1に、本件報道について、上記の「公共性」「公益目的性」が認められるかどうかについてであるが、当該番組の意図するところが、民間社会福祉法人の借入金に対する大阪市の償還金補助制度の運用において、長年に亘り制度の存在自体がすべての社会福祉法人に周知されることもなく、したがって、交付基準も明確でなく、事実として一部の法人を優遇するものとなっていたことを指摘し、その問題点を報じるところにあったという点において公共性、公益目的性があったことは容易に認められる。
 第2に、申立人は、これらの報道内容が不透明な補助金と部落解放同盟との関係だけを殊更に強調することで、部落解放同盟の名誉、ひいては肩書で名指された幹部個人(申立人)の名誉を違法に侵害したと主張しているのでその点について、報道内容の「真実性」「真実と信じたことについての相当性」という観点から検討することとする。
 そこで上記の視点から当該番組を見た場合、視聴者の受ける印象としては、当該報道が、大阪市の補助金行政の不透明さを指摘したということだけではなく、受け手の側に部落解放同盟関係の法人が比較的多数を占めていたとの事実をこのような形で報道することによって、大阪市が部落解放同盟の関係する法人を他に比べて優遇していたとし、大阪市のみならず部落解放同盟に対する批判的視点を提供しようとしたものと受け取るのが自然である。
 (ちなみに毎日放送は、本件報道はあくまで大阪市の補助金行政のあり方を追及したもので、部落解放同盟を批判の対象としたものではないと繰り返し主張しているが、他方では部落解放同盟幹部と大阪市との利権をめぐる不祥事が続いたという歴史的背景、また、補助金を受けていた法人、施設について部落解放同盟関係の法人、施設が有意の多数を占めているという事実があり、そのことからすれば部落解放同盟をこのように強調して報道することが事件の背景説明として不可欠であったとも言うのであるが、その説明はかならずしも一貫したものとして人を納得させるものではない。これだけ部落解放同盟との関連性を強調して報道するのであれば、部落解放同盟側にも問題があるのではないかという批判的視点からも報道したと説明し、それを前提に「真実性」もしくは「真実と信じたことについての相当性」を主張した方がより率直で分かりやすかったであろう。)
 そこで、当委員会としては、まず、毎日放送が当該補助金制度の不透明性、杜撰さについて、これと部落解放同盟との関係を強調して報道したことについて、それが「真実」であるか、または「真実と信じたことについての相当性」が認められるかどうかを判断することとする。
 当委員会としては、検討の資料として、この問題について住民から起こされた同和地区福祉法人8社に対し、平成13~17年度にわたり違法不当に支出された4億円の補助金相当額等を市に返還させるなどの勧告を求める監査請求を受けて大阪市監査委員会が、当該補助金を受けた7法人21施設に係る平成17年度支出分について報告した監査結果(平成19年2月7日付け)を参照した。

     
      監査結果は、当該補助金制度について

① 「条例・規則も制定せず」については、平成16年になって前記条例・規則が制定されていたということで、違法、不当とはいえない。

② 「一般に知らせず」の点については、「補助金の公益性からみて、不適切な取扱いであったと認められるものの、公益性を失わせる決定的な事情と言うこともできず、・・・・・違法不当とまでは言えない。」

③ 「予算にも計上しないで密かに」については「補助金の必要性や有効性を明確化する観点からみて、不適切な取扱いがあったと認められるものの、・・・・・・違法不当とまでは言えない。」

④ 「独自に補助金交付対象を選び」については「本市職員等は、行政としての施設整備計画、各地域におけるニーズや個別の事情、経営状況を踏まえ、相応の補助対象に交付決定を行っており、また、現に、本件請求に係る施設に限らず、他の多数の施設にも交付され(平成17年度60施設)、加えて、経営上状況等が好転した場合には補助を打ち切るなどの対応をとった事例もあるところである。そうすると、いずれにしても本件交付決定について、特に恣意的な選択や不合理な基準による不平等な取扱い等を漫然と行っていたなどの事情をうかがわせる事実は存在せず、違法不当とまでは言うことはできない。」
 との理由で「本件請求には理由がない。」とする結論を出す一方、最後に「意見」として「本市は、今後、当該補助金を予算化するなど、交付決定の一層の透明化を図り、一部の社会福祉法人等を優遇しているのではないかとの不信を市民に抱かせるような取扱いについては改める必要がある。」と述べている。
 すなわち、名指しはしていないものの、部落解放同盟に対する優遇的取扱いについて出された監査請求に対して、市長らに返還を命じなければならないほどの違法不当性があるとまではいえないが、一般に周知していないこと、予算に計上せず、密かに行われていたことなどは不適切とし、最後に上記のような意見を付したことは、少なくとも制度の運用において一部法人を優遇してきたと疑わせるような灰色の状態が長年にわたって続いてきていたことを事実上認めたものと理解される。
 また、資料によれば、当該補助金の交付対象法人の中で、部落解放同盟の関係する法人が比較的多数を占めていたことが認められる。なお、申立人は、被申立人が答弁書(5頁の(6))において被申立人の調査の結果、部落解放同盟が関連する法人の割合が多かったとの主張について、その政策的必要性について論じているが、その事実自体について積極的には否定していない。
 さらに、毎日放送は、本件に先立って明るみに出た部落解放同盟幹部が関係する事件、すなわち経過的には多額の補助金の使途が不明であったり、迂回融資で多額の貸付金が回収不能となったとされる旧芦原病院事件があり、直接には部落解放同盟の幹部が業務上横領容疑などで逮捕された飛鳥会事件などを取材していた過程において、それが端緒となって当該補助金についてもこれを受けていた法人の中で部落解放同盟の関係する法人が比較的多数を占めてきたとの認識を持っていたものと認められる。それらの事実関係のもとにおいて、被申立人が本件報道を行うに当たり、そのような認識のもとに、前記2冒頭の①~④のとおり当該補助金運用の実態を部落解放同盟と関連づけて報道したこと(申立人がヒアリングにおいて最も問題視している④については、後記のとおり表現方法には問題があるものの、同一放送中で、大阪市職員の説明を放送し、この番組の視聴者に、2倍の補助金は2年度分の一括支払いであり、単年度に2倍支払ったのでないと一応理解できる放送がなされている。)自体については少なくともこれら報道した事実を真実と信ずるについて相当の理由があったというべきである。
 そして、上記本件報道の内容に照らし、その報道に放送倫理違反があったともいえない。
 以上のとおりであるから、当委員会としては、本件報道をするについて被申立人に故意、過失はないから、名誉侵害の不法行為は成立せず放送倫理に違反するところもないと判断する。

3.本件報道における表現の仕方等について

 しかしながら本件報道については表現の仕方等において次の点において看過できない問題があると思えるのでその点を指摘しておきたい。
 本件報道では、申立人が理事を務める旭区内の法人について、「なぜか2倍の補助金が・・・」と、あたかも同法人に何らかの不正があったかのごとく興味を起こさせる手法を用い、結果的には大阪市の職員に対するインタビュー映像で、遅れていた1年分が加算されたに過ぎなかったということになるのであるが、だとすれば何ゆえに部落解放同盟幹部として申立人の肩書を付してまで報道する必要性があったか、極めて疑問である。答弁書に言うごとく「取材過程を時系列で示す」のであるならば、「当初はそういう疑いがあったが、取材過程では単なる事務手続きの遅れと判明した」とするだけで十分であり、それでは報道としてのインパクトがないというのであれば、所詮それだけの事実でしかなかったということであって、部落解放同盟幹部の肩書を付してセンセーショナルに報道したことは、放送倫理違反とまではいえないまでも、不適切であったといえる。問題は市の事務当局の杜撰な処理ということになるであろうが、他方、同法人が特に経理上この遅れをチェックして、積極的に交付を求めた形跡がないことから、このような補助金がなければやっていけないという切実な状態にはなかったのではないかとの疑念が生じるが、それは当該法人に対する補助金交付の必要性があったかどうかという観点から別途取り上げられるべきことであろうし、反対取材の点も含め、報道対象となる法人、施設、役員等に対する適切な取材を行うべきであったと考える。

4.結論

  以上述べたとおり、本件報道は、大阪市の不適切な補助金行政の実態と、この補助金をめぐり、大阪市が部落解放同盟の関係する法人に対して一定の優遇的取扱いを行ってきたのではないかとの見方から、視聴者に対して両者に対する批判的視点を提供しようとしたものである。
  委員会は、そのように両者を関連させて報道したことにおいて、部落解放同盟大阪府連の書記長である申立人が、補助金交付の対象である法人の理事として肩書を表示されたことによる名誉侵害は成立せず、放送倫理に違反するものではないとの結論に達したが、なお表現のあり方等において、より正確、公正な報道を心がけることを要望するものである。

審理経過 
http://www.bpo.gr.jp/brc/kettei/s034.html

 

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