窓口業務の民間委託をめぐって
参議院・総務委員会 個人情報保護で、住基法の改正が成立-個人情報の流出と窓口業務の民間委託をめぐってきびしいせめぎあい :自治労連
http://www.jichiroren.jp/md/topic/index.php?page=article&storyid=576
: 2007-06-01
「住民基本台帳法の一部を改正する法律案」が、5月30日に参議院本会議で可決、成立しました。この改正は、住民票の写し等について公開原則を見直し、当事者以外の第三者による交付請求を正当な理由がある場合に制限するなど、個人情報保護を進めるものであり、自治体の職場から強く要望されていたものです。
この改正案の審議のさなか、5月14日に愛媛県愛南町の住民基本台帳データが大量にインターネット上に流出するという事件が発生しました(16日に初めて記者会見)。同町だけでなく共同処理していた南宇和郡5町村、計5万4,850人の、口座情報287件、住民票コード3万3,773件、国民年金情報3万5,816件、老人保健情報1万3,959件、計14万2,843件の個人情報です。流出経路は、情報処理を委託していた会社から再委託された会社の元社員が、個人のパソコンに保存していたデータが、インターネットを通じて流出したものです。
28日の参議院総務委員会で、日本共産党の吉川春子議員が、この事件と、愛知県高浜市で住民窓口業務を100%出資の会社に請負(業務委託)契約で委託している問題を例に、窓口業務への委託を制限するように厳しく追及し、政府から、検討会を立ち上げること、住民の申請を受けて交付を審査する業務等は直接公務員がおこなうこと、などの答弁を引き出しています。
自治労連は、自治体職場から偽装請負をなくすとりくみの一環として、1月26日に高浜市を現地調査し、業務委託契約書等も入手して、高浜市のやり方は偽装請負であるとともに、住民のプライバシーを守り総合的なサービスを実施するうえで支障があることを指摘し、総務省や厚生労働省に対して、その是正を求めてきましたが、この国会論戦での到達点をふまえて、さらにとりくみを強化することが求められています。
以下、吉川議員の質疑にかかわる議事録の一部を紹介します。
「個人情報の漏洩に対して、今の制度で十分か検討していく」(総務省)
「民間委託の廃止も含めて検討せよ」(吉川議員)
-愛媛県愛南町の住民基本台帳データ大量流出事件でー
吉川春子(参議院議員)
‥安易な民間委託では個人情報が漏えいする危険が大変多いし、取り返しが付かない結果となります。そこで、住基台帳法の第36条2項の規定が民間委託の場合に準用されています。「住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の漏えい、滅失及びき損の防止その他の住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の適切な管理」、こうなっているんですけれども、この規定自体があいまいです。「適切な管理」とはどういうことを言いますか。
藤井昭夫(総務省自治行政局長)
正に、漏えいすることのないようにきちんと管理するということかと思っております。
具体的には、‥技術的な基準というものを告示で出しております。また、いろいろ通知を出しているところでございますので、そういった告示とか通知に従って管理をしていただくということになろうかと思っております。
吉川春子(参議院議員)
その通知や告示の内容が非常にあいまいもことしているので今聞いたわけなんです。
総務省は外部委託原則禁止のマニュアルを示していますけれども、愛南町の場合はそれに反して再委託が行われ、庁舎外に住基データが持ち出されています。その他の事件もそうですけれども、適切な管理という規定の下で起こされているというのが実態なんですね。住基情報を始め、納税情報、口座番号など自治体の持つ個人情報は極めて重要なもので、民間委託によって住基情報を流出させない法的な縛りが不十分な結果、起きているんじゃないですか。
藤井昭夫(総務省自治行政局長)
‥今後本当に今の制度で個人情報の漏えいに対して十分かどうかと、そういったことは今後検討していく必要があるというふうに考えているところでございます。
吉川春子(参議院議員)
6月に検討会を立ち上げるといいますが、大臣、住民の個人情報に関する業務の民間委託の廃止も含めて検討していただきたいと思います。
「窓口に来ている人に交付していいのかという審査、判断、決定は公務員がやるべき」(総務省)-愛知県高浜市などでの請負・派遣による委託を制限
吉川春子(参議院議員)
請負会社の社員、まあパート職員と聞いていますが、それが窓口に座っていて、判断がなかなかできない事案についてその後ろにいる市の職員に相談して指示を受けるということはできないわけですね。明確に。
鳥生 隆(厚生労働省職業安定局次長)
請負ということであれば、契約のいかんを問わず、その指揮命令を受けながら仕事をするということになれば、それは労働者派遣ということに該当すると思われます。その場合には、労働者派遣契約を締結して行うといったことが必要になりますので、請負契約を結んだ上で指揮命令を受けて業務を行うということであれば問題があろうかと思います。
吉川春子(参議院議員)
総務省にお伺いしますけれども、(高浜市の)業務委託契約書に添付された窓口業務委託仕様書には、業務内容として住民票に関する証明書の作成及び交付業務などが明記されています。市民窓口業務として、社員が本人確認、住基台帳の端末の操作、手数料の収受、交付や異動の受理まで行っていますが、住民票に関する証明書の作成などは公務員が行われるとされている業務ですよね。委託業者に市役所の窓口でこういう業務を行わせているということは、民間労働者への指揮命令は民間の会社の上司が行うのであって、当該の市の職員はできないわけですね。
そして、竹中総務大臣のときにこの窓口業務について私、質問したときに、住民票を発行すると、コピーを発行するということは、この人に発行していいかどうかという行政処分も含むものだから、その部分についてはできないんだと答弁されておりますね。‥それで、要するに今度の場合、本人確認、全部その端末までたたいて、そのコピーを交付するというのは行政処分も含む行為で、これは竹中大臣、すなわち菅大臣も同じ御意見だと思いますが、行政処分に当たる行為ではないですか。‥
藤井昭夫(総務省自治行政局長)
‥実際交付決定していい事案か案件かどうかの審査それから判断、それから、最終的に意思決定として交付決定というのをやるんですが、その中で交付決定、これはやっぱり行政機関の意思として決定していただきたいということで、行政庁としてやると申しますか、あるいは首長さんかそれの補佐機関の職員自らがやっていただくべきだと考えております。その理由は、やっぱり個人情報というものを使った住居の公証制度であるということで、それはむやみにだれでもやってもいいということではなくて、やっぱり首長さんが責任を持つような形で決定していただくべきものであるという、こういう考え方です。‥
吉川春子(参議院議員)
その意思決定に掛かるというのは、その証明書を窓口に来ている人に発行していいかどうかという判断のことですよね。だから、そういう行政処分に掛かることについては、これは市町村長が行うべきことだというふうに受け止めていいですか。
藤井昭夫(総務省自治行政局長)
正にその一連の行為で、町のその役所に行って、どこからどこまでがその意思決定のための事務か、あるいは機械作業かというのは、それは実際見てみないと分からぬところがありますが、‥審査、意思決定、判断という‥部分についてはやっぱり首長の言わば権限事務でございますので、少なくとも補佐機関である者が直接やるべきであるというふうにお答えしているところでございます。
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