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世良田事件 熊谷達也 差別を利用する輩

「箕作り弥平商伝記」熊谷達也著(講談社 1700円)
http://news.livedoor.com/article/detail/3282456/

 弥平が生まれたのは日露戦争が始まった年。生まれつき左右の足の長さが違う弥平は、歩くのに不自由だが、普通の子供より駆け足が速いという負けん気の強さが身上。弥平の育った秋田県太平村黒沢は、東北地方有数の箕の名産地。弥平も箕作りに精を出し、15歳からは各地へ行商へ出かけるようになっていた。20歳になり徴兵検査を受けたものの、丙種合格という不名誉に腐っていた弥平は、販路を拡大しようと友達の幹夫と共に関東へ行商へ出ることにした。ついでに姉が群馬の嫁ぎ先から出戻ってきた理由も探ろうというのだ。

 勇んで新天地へ向かった弥平たちだが、関東では箕作り、箕直しが差別されていると知って愕然とする。姉の出戻りもそれと関係があるらしい。弥平が恋した少女も差別にさらされており、弥平は持ち前の正義感が頭をもたげてくる……。理不尽な差別に敢然と立ち向かっていく誇り高き渡り職人の姿が神々しい。

【2007年8月24日掲載】

 世良田村事件 1924(大正13)年12月の末、群馬県世良田村で起きた差別事件。同村の村民・室田忠五郎が「俺はポロを着ていても、チョウリン坊ではない」などと操りかえし放言、これを村内の下原部落の水平社同人らに糾弾された室田は、いったんはその非を詫び、謝罪講演会をひらくことを約束したが、村の有力者たちは講演会の開催に反対、下原部落襲撃を計画、デマを流して村民を煽動したため、1925(大正14)年1月18日夜から19日にかけて2000余名の村民が下原部落(23戸、120人)を襲撃、放火・掠奪・破壊・暴行など暴挙のかぎりをつくした。
 これに対し警察は、ただ手をこまねいて見ているだけで、事件の責任者の処罰に際しては、被害者である下原部落の住民をも、「事件のきっかけをつくった」という理由で検挙し、5名に5-6ケ月の懲役刑を科した。水平社初期の徹底的差別糾弾闘争は一般民衆に恐怖感をいだかせ、部落大衆との問にますます深い溝をつくるという結果をも生みだしたが、支配階級はこれを巧みに利用して、一般民衆の差別感情を助長し、さらに新たな分裂をつくりだしていった。世良田村事件は、そうした分裂の悲劇を典型的に示したものといえる。全国水平社も、その後、糾弾闘争中心の活動から戦術を転換していった。

 茨城県北に小動物の毛皮を取り扱っていた部落(徳田球一が潜伏していた)があったが、「箕直しの人たちは部落よりもひどい差別を受けていた」と、今から20年ばかり前に、80歳のおばあさんが教えてくれたことがある。



 徳田球一(とくだ きゅういち)
 1894.9.12~1953.10.14。沖縄県出身。
 薩摩商人の子として生まれる。1911年沖縄県立中学卒業。12年7高造士館に入るが、13年中退。小学校の代用教員、郡役所書記を経て、17年上京。日大専門部法律家夜間部に入り、20年卒業。司法官試補となる。21年弁護士。日本社会主義同盟に参加し、22年モスクワの極東民族大会に出席。日本共産党結成にも参加し中央委員となる。23年第一次共産党事件で検挙。24年解党に賛成する。25年共産党再建ビューローの委員長としてソ連へ渡る。26年6月帰国、検挙される。27年1月出獄。福本主義による党再建はコミンテルンの反対などで失敗。指導部からはずされる。28年第一回普通選挙で労働農民党から立候補するが落選。直後の3・15事件で検挙される。34年大審院で懲役10年。40年に恩赦減刑となり41年12月に満期となる。しかし予防拘禁制度でそのまま拘禁され、終戦後の45年10月10日に出所する。共産党再建に加わり、46年4月に衆議院に当選。47年の2・1ゼネストではマッカーサーの禁止令が出るとスト中止を働きかけた。50年1月志賀義雄、宮本顕治らと対立。2月には、ソ連抑留者引き上げに関して、ソ連政府に「反動は帰国させるな」と進言したという問題(徳田要請問題)が起こり、参議院在外同胞委員会、衆議院考査委員会で調査が行われた。6月にGHQの「6・6追放」により公職追放され、地下に潜行。これにより徳田要請問題も幕を閉じる。10月に中国に亡命した。中国では孫機関を興し、また武装革命を目指して活動するが失敗。52年7月自己批判をするも9月に入院。53年10月病死した。その死は2年近く後に公表された。

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