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鳥取条例第14回議事録

第14回人権救済条例見直し検討委員会議事録

1日時等

(1)開催日時 平成19年6月28日(木)午後1時30分~3時30分

(2)開催場所 鳥取県庁第22会議室(鳥取市東町)

(3)出席者名 永山会長、相澤委員、朝倉委員、大田原委員、田村委員、長井委員、中村委員、樋口委員、安田委員瀧山総務部長、柴田総務部次長、磯田人権局長、安田人権推進課長

(4)議 事 ア人権救済条例の法的整理について イ次回の開催等について

(5)その他ア公開又は非公開の別公開イ傍聴者数約10人

2議事

(1)人権救済条例の法的整理について

○(会長)本日から条例の法的整理に入る。検討資料1(委員会の意見構成案)のとおり委員会の最終的な意見の構成案であり、ひとまずこのような構成に沿って検討していくということでよいか。また修正があれば直していけばよい。次に、人権概念についての論点整理を行いたい。人権という概念はこれまでさまざまに使われてきたが、基本的な理解として資料2をまとめた。現行の人権救済条例は、このような広い意味の人権を実定法がないまま実定法上の基本権に接合しようとしたため問題が出てきたと感じる。

○実定法上の権利であるか否かのほかに、人権が公権力に対し主張する権利か私人間で主張する権利かという整理が必要。現行条例は人権を私人間に適用したので問題が指摘されている。

○(会長)検討資料2(人権概念の論点整理)に記載されていることは、委員の皆さんの意見も同様であろうと思う。続けて検討資料3(個別救済に関する行政の責務の論点整理)のア(行政が個別救済を行うことについて)に議論を移すが、行政を全て公権力の発動ととらえるものではないこと、ガヴァナンスとしての行政は住民に優越した立場だけではなく対等な立場として住民参画が進められてきたことを述べたもの。

○資料では個別救済が行政の役割のように記載されているが、パリ原則は、人権救済機関は公権力から独立すべきことを規定している。個別救済することが自治体の役割であるかは疑問で、その点は統一された見解ではないと思われる。一方の人権を擁護するために他方の人権を侵害することがある。よって行政とは違う司法権が憲法で定められている。司法の分野の事柄を「準司法的」として行政が行うべきものではない。

○御意見は、個別救済が行政の責務とまで言うのに違和感があるということであろうか。それならば「個別救済」を「人権尊重」とおきかえてはどうか。自治体が住民の人権を保障するのはあたりまえのことである。

○法律の規定により現実に行政が個別救済を行っているものもある。行政だから個別救済をしてはいけないということではない。理論上は、条例の規定により自治体が個別救済をすることは可能。ではどのような形が望ましいのかと
いうことが重要で、その点は別途議論が必要ということ。
○虐待防止法で立ち入りや親権の制約などあるが、その実施要件などは法律で枠組みを定めている。行政が個別救済するべきでないというのは、準司法的判断についてである。司法に代わって行政が判断することが疑問であるという意味である。

○文面に個別救済の定義が入っていないことが今議論が混乱した要因。個別救済の中には調停、仲裁などゆるやかな手法のものもあり勧告のような準司法的なものもある。調停、仲裁のレベルであれば行政ができないものではない。

○(会長)当事者や救済機関からの聞き取りにより、個別救済を求める多くの声を聞いたが、それらは必ずしも準司法的な条例が必要というものではないという感想を持った。しかし、見直しの入り口において、行政は個別救済することができないとは言い切れないであろう。続いて検討資料3のイ(行政による救済の謙抑性について)について、準司法的判断を自治体が行う場合、その自治体行政は公権力が現れる場面である。人権推進とは違い慎重になる必要がある。

○行政による救済の謙抑性というよりも、むしろ準司法的な判断をするためには行政からの独立性の担保が求められるということを記載する必要を感じる。

○(会長)この委員会では、現行条例の規定により行政が個別救済を行うことについての見直しの検討をしている。救済は行政から独立した機関が行うことが望ましいが、完全に独立することは現実に不可能であるため、救済機関を含めて一般的に「行政は」というまとめにしている。ここは、行政の公権力としての側面とパートナーとしての側面について整理したものである。では次に人権救済条例についてはどう整理したらいいかということになる。今後の議論にこの行政の二面性に係る枠組みが使えたらと思う。

○行政が個別救済を行う可否と、自治体が行う可否は別の整理が必要。行政が行う可否についてもどこかで触れる必要があると思う。それを検討資料3で触れるのか、それとも最後の方にするのか。その後に準司法的判断をするには独立性が必要で、どうすれば独立性を担保することができるのかという議論も出てくると思う。

○(会長)今回の資料は、これまでの検討が自治体が個別救済を行うことが前提の議論であったのでそういう内容で提案をしたもの。これで決定するものではなくいずれ立ち戻って議論してもよいと思う。ひとまずこれで進めてよいか。検討資料4について、検討委員会では現行条例が指摘された問題点を解決できるのか議論する必要がある。

○論点整理としてはこの形でよいと思うが、検討資料4のウの⑦に「条例の目的である簡易・迅速な救済を正確性を保って実現するためには推定規定など実定法の整備が必要となる。」とあるが、実定法の整備だけではなく、専門家の配置も必要と考えられる。専門家がいればある程度の救済は可能だが、専門家がいないのであれば誰でも判断できる基準を示すために実体規定が必要である。また、推定規定とは、例えば差別の場合、差別したかどうか、それが差別かどうかをどちらが証明するのかという問題において、差別された人が差別した人の考えを立証することは困難であるため、差別された人が相手方の行為が一定の要件に該当することを述べれば差別とされ、加害者側がそれを否定するためには例えば別の目的で行ったということを立証しなければならないというようにすること。推定規定は差別の被害者を迅速に救済するために必要な規定である。

○これまでの準司法的な解決という言葉と聞き取りを行った現実の間にギャップを感じる。被害者は加害者が侵害を認めてくれれば安心できるのであって、加害者の処罰を望んでいるわけではない。そのような現状の中で、準司法的という言葉で議論するのは相応でない。

○これまでの聞き取りで、多くの方が求めているものと準司法的な救済とにギャップがあることがわかった。意見のとりまとめの中に、実は被害者が期待しているものは別のものであったということも書いた方がよいか。
○被害者の望むものが実際はどうなのかということはこれから精査されることだと思う。基本的には被害者が望むものは準司法的救済ではないとは思うが、それでも一部でも準司法的なものが必要なものがあるのかもしれない。それを制度に取り入れるかどうかはいずれ議論が必要。取り入れるためにはどうするべきかを今の段階で整理しておく必要はある。

○(会長)今の人権救済条例が準司法的であることは確認できる。準司法的な救済制度がよいのかどうかは疑問のあるところ。

○人権救済の望ましい形はエンパワーメント、すなわち、問題は地域実態から発生し、それを行政が解決していくという考え方だと思う。今回の人権救済条例はその考え方から逆行していて、行政が物事を決めて住民に押しつけるという形ではないか。

○指摘されている問題点を記載しているが、答申の最後では救済の方法を議論することになる。そのときに議論する内容はここに記載されている問題点とは違ってくるわけであって、当初指摘された問題点はこうであったという意味でよいのではないか。

○資料の「指摘された問題点」に掲げられているのは条例を施行した場合の副作用に関することばかりだが、これまでの検討委員会では条例の手続では救済には不十分というものもあったと思う。消極的な問題点ばかりではなく積極的な問題点も出してはどうか。例えば子どもの問題にはこの条例の手続では不十分だという意見もあったし、政策提言機能が足りないという論点もあったと思う。新たな制度設計を視野に入れて、このような問題点も指摘しておいてはどうか。

○ここで記載しているのは検討委員会の設置前に指摘されていた問題点であり、安田委員の言われているのは検討委員会の検討で出てきたものなので、それは分けて整理するという方法もある。まず、今の形でとどめておくほうがわかりやすいと思う。

○消極的、積極的という分け方もあるし、検討委員会設置前と後という時間的な分け方もある。

○積極的な問題点というのは当事者の求めるものは何かという議論とも重なることである。先の意見のように最初に指摘されていたものと検討で見えてきたものと分けて整理した方がよいと思う。

○(会長)続けて資料5-1(県内における人権侵害の事実、救済状況の論点整理)、5-2(鳥取県で発生した人権侵害の類型と救済施策)に議論を移したい。

○事務局(資料5-2の説明)

○(会長)現行条例は人権を網羅的に救済しようとするもの。ここでは、事案を分野に分けて領域ごとに議論するように進めたいと思う。

○進め方はそれでよいが、この資料に記載されているものが全ての人権侵害事案を網羅しているものではないことは確認しておく必要がある。例えば刑務所内での受刑者への人権侵害や報道被害など、聞き取りが困難であったものは今回の調査には入っていない。また、近隣住民からの嫌がらせや悪臭などの環境問題といった一般の生活者が日常的に受ける可能性のある人権侵害は入っていない。それを踏まえた上で検討をすればいいと思う。

○(会長)その指摘を前提としておいて、領域ごとに確認していくことにしたい。まずは同和問題についてどうか。

○同和問題の望まれる救済方法として、当事者からは加害者からの謝罪というものがあったがこの資料には記載されていない。謝罪の是非は今後議論が必要ではあるが、この資料の中には入れておくべきだと思う。

○(会長)加害者が事実を認めたり、謝罪したり、また加害者を罰しないと救済されないという論点もあ
った。差別から救済されるためのシステムをどうするかということと行政がどう救済していくかということは別の話のような気もする。また、加害者が特定されていないものは現行条例でも対象外となっている。このような確認を今日は行いたい。
○当事者間のみでの発言と第三者が関わっている場面での発言とは別に考える必要がある。当事者間のみでの発言内容について双方の言い分が食い違うような場合は証拠がないため客観的な解決は困難で当事者間の話し合いでしか解決できないように思うが、第三者がいるところでの発言についてはその証言などが証拠となり解決を図りやすい。

○発言のほか悪意のある取扱いにおいてもあてはまる事例のように思う。謝罪させたいという被害者の感情と内心の自由との関係についてはいかがか。

○どこまでの内容をもって謝罪とするのかで異なる。例えば労使の紛争場面においては「ごめんなさい」と言わせることはできないので、私はこういうことをしましたと事実を認めるまでにとどめ、感情に至る部分について取り扱うことは避けている。事実を認めるだけで謝罪と言えるかどうかはさておき、法令で「ごめんなさい」という発言を求めたり、謝るよう勧告したりすることは難しい。

○加害者の謝罪については同和問題の中の救済方法の項目に入れて、先ほどの意見のような議論をしていけばいいのではないか。また、発言のところに事実認定の困難性を入れてはどうか。これは発言だけではなくかなりの部分に関わってくる。研修会への出席の議論があったし、一定の奉仕活動をする、学びの場を設けるというような意見もあるが、これらは教育の強制というべきもの。DVと同じように結婚は家庭内の問題であっても行政が救済すべきという意見もあるが、これも論点としてはありうること。

○同和問題については、当事者はすべての行為において差別禁止条例を前提にして話をしていたように思う。

○差別禁止条例にするのであれば、その目的でまた別の議論をしてもらう必要が生じる。

○結婚差別の欄に差別禁止条例という方法も加えて議論すればいいのではないか。

○結婚差別について差別禁止条例で救済されるというのはどういうことなのか。

○婚約破棄において、訴訟で損害賠償の争いになったときに禁止条例があるのとないのとではかなり違う。

○婚約破棄されて、通常の県民が禁止条例に求めるのは両者が結婚できるようになることであって、損害賠償がとれることではないのではないか。

○金銭による賠償も救済の一つである。

○両者の関係が既に破綻している場合には、もう元に戻らないことを前提にして損害賠償による救済を考えるということ。ただし、破綻していない状態、周囲は反対しているが当事者はがんばっているような状態の場合であれば差別禁止条例は予防としても意味がある。

○具体的な事例は出せないが、現実には同和問題に係る結婚差別はたくさんある。

○金銭賠償も一つの解決方法であるし、謝罪も一つの解決方法である。しかし、その場合の謝罪は当事者間のみか、親族も含めるのかなどの議論も必要。また、行政が強制的に結婚させることはできないので、結婚の障害になっているものを取り除くために公的機関ができることは何かを考えることになると思うが、できることは少ないと思う。

○結婚差別は現行条例でも差別的な取扱いとして対象となっている。

○婚姻には契約自由の原則があり、どういう理由で婚約を破棄した場合には差別になると規定しておかな
いと、では何が差別なのかが明確にならない。
○この問題を内心、家庭の問題と考えるだけでは狭いが、原因を特定するのは困難ではないか。

○特定できるケースもある。長い間交際していたが一貫して反対されて最後は別れたというようなケースは原因の特定はできる。

○そういった周囲からの反対で結婚を断念した事例は現実に起きている。

○結婚差別に対して行政が関与することによって、両者が一緒になれるという望ましい解決に導くことができるのか。

○できる場合もあればできない場合もあると思う。いくら反対されても結婚する場合もあるし、説得されてやめる場合もある。最後に決断するのは本人同士の気持ちではないか。ただし、制度があれば説得などに際してより多くかかわりを持てるとは思う。

○エンパワーメント(当事者等からの解決しようとする強い意思)があれば、差別禁止条例もあなたの考え方は古いと説得する材料にはできる。しかし、それがどれくらい役に立つのかはわからない。最後は本人の決めること。

○何か頼りになるものがあれば、それで気持ちが守られるという当事者の意見があった。

○(会長)それが救済条例というのは違和感がある。

○結婚差別は同和問題だけでなく、例えば障害であったり、出身家庭の経済状況などを理由に結婚を反対したりと、その範囲がどんどん広がっていく。条例による取扱いは非常に難しい。

○憲法14条に差別されない、24条に婚姻は両者の合意によってのみ成立すると既に規定されている。さらに条例で規定するには、憲法で定める以外の何か、規定するメリットが求められる。また条例レベルで可能かどうかの検討が必要。

○結婚成就を求めても、破綻した後での救済は不可能。しかし、双方に結婚の意思があるが周囲が反対している場合などには、勧告などの手法により妨害を排除する救済は可能。憲法の規定に加え条例で妨害排除を規定する。また差別禁止条例で禁止する差別行為を明確にしておけば、救済につながると思う。

○(会長)結婚の場合の妨害排除というのもわかりにくい。例えば周囲がみな反対し無視をするということも妨害になるのであろうか。

○本人同士で結婚しないと決めたものは無理だと思う。周囲からの積極的な妨害なら救済もできるが、結婚式に参加しない、祝福しない、親子の縁を切るといったものにはできるとしても話し合いの場を設けるぐらいであろう。

○結婚差別については、そもそも禁止条例を作って解決するというようなイメージがしにくい。結婚問題には司法上の権利として確立し仮処分を出すというイメージを持ちにくい。

○(会長)葬式に協力しないとか村八分にするということを取り決めることは問題であり当然できないだろうが、それを暗黙でされると何もできない。それは条例で排除できるものであろうか。差別禁止条例をつくるのであればそういった点も検討しなければならないだろう。ただし、この委員会の任務は、現在の条例をどうしたらよいかということである。今回の議論は途中までだが引き続き次回以降も議論を行いたい。

(2)次回の開催等について次のとおり開催することが決定された。

ア日程等 平成19年7月17日(火)午後3時15分から5時15分まで県立図書館大研修室

イ検討内容 人権救済条例の法的整理について

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