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小田実 市民を演出 がんと共存できるか

「いま一番の気がかりは改憲の動き」

 小田実さん、がんと闘病中


2007年06月05日12時18分

http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200706050153.html

 作家小田実さんが、がんと闘っている。4月末に病状を公表。75歳の誕生日である6月2日には、代表をつとめていたグループの仲間に、「市民のみなさん方へ」と題した文章で辞任を伝えた。市民運動からの事実上の引退宣言だ。しかし、作家として最善を尽くそうと、病室でも口述で「書き」続けている。

病室に書きかけの原稿用紙や校正刷りをもちこんでいる。「あと6カ月は生きたいと数えている。11月まで生きたら、小説が書き上がる。そのあと、もし生きていたら、文明論を書くつもりだ」=都内の病院で
 「今日は体温も下がって調子がいい」と妻の画家玄順恵(ヒョン・スンヒェ)さんから連絡を受けたのは5月下旬。都内の病院で治療を受けている小田さんは、めっきりやせていたが、目の強い光は元のままだった。

 今年初めから体調がすぐれなかった。それをおして、3月下旬、オランダで開かれたフィリピンの人権抑圧に関する民衆法廷に出席した。トルコにも旅して帰国後、胃がんと診断された。民衆法廷の判決とともに4月下旬、友人知人らに送った手紙に「末期―またはそれに近い」と報告した。それでもできる限り書き続けたいと5月初め、自宅のある関西から、仕事を続けられる治療のできる病院に移った。

 ベ平連から阪神大震災の被災者救済まで、多くの反戦運動、市民運動にエネルギッシュにかかわった。その根っこには、大阪大空襲で戦争の無残さをみた体験がある。つねに「小さな人間」の側から戦争を見つめてきた。平和憲法を守ろうという「九条の会」の呼びかけ人のひとりでもあり、いま一番の気がかりは改憲の動きだ。

■ナチの「全権委任法」に過程がそっくりだ

 「安倍首相は『美しい国』にするのになぜ改憲が必要なのか、論理的に説明していない。33年の『全権委任法』で、ナチスがワイマール憲法をなし崩しにした過程にそっくりだ。最低投票率制がない国民投票法は、20%ぐらいの投票率であっても改憲可能になる。少数独裁民主主義になるのではないか」

 9条だけでなく、「健康で文化的な最低限度の生活」をかかげた25条、男女平等の結婚をうたった24条。平和憲法があったからこそ、ほどほどの中流の生活ができて繁栄した。そう語りおろした近刊の『中流の復興』(NHK出版、生活人新書)には、病状公表の手紙も収録した。70年代に出した『世直しの倫理と論理』(岩波新書)の現代版も構想している。

 「みんな運動家と思っているようだが、私は作家なんだ」。昨秋は平和論集や長編小説『終らない旅』、イギリスのBBCでラジオドラマ化された短編『玉砕』を次々刊行した。

■時代・言語によって変質しないのが文学

 「私の短編は、一作で全体を書こうとする。全体長編小説ではなく全体短編小説。『玉砕』の独語訳や、『HIROSHIMA』のイタリア語訳も出る。いつの時代であろうと、どんな言語になろうと変質しないのが文学だ」

 ギリシャ古典を学んだためか思考の時間軸が長い。「イーリアス」の翻訳が夢で、これまでに完成した冒頭部分は「すばる」7月号に掲載される。「トラブゾンの猫」と題した小説も書いている。トラブゾンは古くからの黒海沿岸の町、多様な民族が混在している。

 「言語系統は、幹があり枝分かれして、と樹木のように形容される。しかし、本当はマングローブの根のようにぐにゃぐにゃつながっている。人間の文化、思想、論理などもそうしたものではないか。そういったことを、時空を超えて集まった猫たちのバカ話に具現化するつもりだ」

■人間同士が戦わぬため9条は必要なんだ

 枕元にはお見舞いにもらった寺社のお札がたくさんあった。「フランスの『ルルドの水』もある。現代科学の治療を受けているから古代から現代までの全人類の文明がここにきている。奇跡が起きても、どれが治してくれたのかわからない(笑い)。3000年前と今が、やはりマングローブの根のようにからみあっている。からみあった人間同士が戦争しないためにも、9条は必要なんだ」

 20代のとき、「何でも見てやろう」と世界中を旅した。生のカウントダウンが始まっても、その姿勢は前向きのままだ。

 「生死があって死の方に考えをおけば宗教になる、しかし、オレは最後まで生の方におくね。手紙にも書いた言葉だが、生きているかぎり、お元気で。それが、私の気持ちだよ」

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