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和歌山県 「同和地区・調査」何が目的なのか

 和歌山県は、07年度予算で旧同和地区と県全体との「較差」を511万円の予算で調査することが明らかになりました。
 県は、2000年国勢調査のデータを総務省から譲り受け、県が持っている過去の同和地区調査と照合して、旧同和地区住民の教育や就労状態などについて「県全体との較差を明らかにする」としています。2005年のデータについても近く使用承認申請をおこなうとしています。
 この問題で4月26日、全国人権連は総務省統計局と話し合いを持ちました。

 総務省との話し合いには、全国人権連から新井直樹・事務局長、佐々木保好・長野県連議長、松本賢次・埼玉県連事務局次長らが参加し、『総務省は、和歌山県が行おうとしている人権課題「調査」に関わり、和歌山県人権施策審議会や県民の意向を尊重し、国勢調査のデータ提供をしないでいただきたい』とする申し入れ文書を手渡しました。
 和歌山県人権施策課は、約2000万円の予算で同和現況調査(調査員による留置きによるアンケート方式を含む)を計画しましたが、06年3月に開かれた人権施策推進審議会は「調査目的が明確でない」「同和問題の解決に逆行する」などと調査の実施に反対する小委員会意見書(2面掲載)を採択し、調査は見送られた経緯があります。
 県人権政策課によると、今回の調査は、総務省統計局から国勢調査データを入手し、旧同和地区にかんする世帯や就業、給与、産業分類、就学、住宅の状況などを抽出・集計し、「(旧同和)地域の実態や、(旧同和)地域と県全体との較差を明らかにする」というもので、2000年実施のデータについては06年7月に国勢調査のデータを利用する申請を木村知事名で総務省に提出、10月に総務省から使用許可が下り、現在、国勢調査のデータを処理する作業を庁内で進めています。県は、集計したデータを外部の有識者に分析を依頼するとしています。05年実施分については、解禁され次第請求する予定といいます。
 なお県では、同調査に加え、07年度に旧同和地区内の隣保館から「住民の生の声」などを集約し、市町村の行政データとあわせて、「県として実態を報告する」というものです。
  こうした県の意向は、06年3月に県審議会で否決されて以降、審議会で了承されたものではありませんでした。昨年5月の審議会で県は、「地域を分けたような調査はしない」「例えば同和問題についての意識調査をやるとか」と応答をし、9月の審議会でも「広く人権に関わった意識調査を続けて行うのが好ましい」という意見がでていたものです。本年3月の審議会では「予算の概要」が報告されている程度です。
 こうした経緯から、誰のための何のための「調査か」という疑問が生じます。和歌山県人権連は4月20日付で人権局長宛に「調査の中止」を申し入れています。
 統計局との話し合いでは、和歌山県内で充分合意を得た「調査」ではなく目的に疑義を生じていること、県が保持する旧同和地区データを活用することに社会的妥当性があるのか、統計法上の「目的外使用」に直接該当はしないが疑念を生む、国勢調査のデータを旧同和地区の現況調査に利用することは、今後、国勢調査をおこなう際に、住民からそのことを理由に協力を得られなくなることにもつながりかねない、と率直に問題を指摘しました。
 統計局は「知事名で使用申請があった。県の行政手続き上に瑕疵があったのかどうか。統計法上の目的外の使用という基準は秘密の保持や公益性が問題になる。申し入れ内容は関係課にも周知する」と返答をしました。



(資料1)
2007年4月26日
総務省統計局あて

 総務省は、和歌山県が行おうとしている人権課題「調査」に関わり、和歌山県人権施策審議会や県民の意向を尊重し、国勢調査のデータ提供をしないでいただきたい。

1,和歌山県による同和現況「調査」は、そもそも昨年3月県人権施策審議会で「同和問題の解決に逆行する」等と否決されている(「毎日」「小委員会報告」)。
2,07年度予算で旧同和地区内外の「較差」を明らかにする目的で行う「調査」に対し、県審議会軽視と県内外から批判がでている(和歌山民報、和歌山人権 連申し入れ、「国民融合」記事参照)。
3,私たちは国勢調査の意義を認めつつも、自治体が目的と方法に社会的妥当性を欠き、新たな人権侵害を生みかねない、旧同和地区内外の「調査」に国勢調査のデータを利用することを総務省統計局が容認した場合、全国の自治体での混乱など及ぼす影響は計り知れず、しかも今後国勢調査への協力を拒否する国民が多数生まれかねず、正確な統計が得られなくなることを危惧する。
4,本来2002年3月末で同和の特別法が失効した際の「大臣談話」(別紙参照)で、かつての同和地区や地区住民の個人情報破棄を全ての自治体に要請すべきであった(この点は全国人権連の前身である全国部落解放運動連合会が強く地域改善対策室に要求していた)。行政が保持してきた旧同和地区情報は破棄すべきであり、旧同和地区の所在情報を活用することは個人情報保護に反する流出にあたり、自治体の責任が問われるものと理解する。
5,よって総務省は、県民が疑義を提示し、しかも基本的人権の侵害という違憲の疑いのある和歌山県による「調査」に、国勢調査のデータが利用されることの無いよう、以前の使用許可撤回と今後の利用申請を不承認していただきたい。



(資料2)
第21回和歌山県人権施策推進審議会
  1.日時 平成18年3月22日(水曜日)13:30~15:30
  2.場所 和歌山市 東急イン
  3.議題 ① 人権課題現況調査事業について 他
 審議会小委員会意見書
1 県内の人権問題は数多くあり、女性、子ども、障害者、高齢者等々、多くの課題がある。今回、県人権局が実態調査の焦点として、同和問題を最重点課題として捉えていることには疑問なきをえない。女性問題等上記緊急の課題に取り組む者からすれば、県人権局の取り組み姿勢には、未だに「同和問題をはじめとする人権問題」からの脱却が認められず、失望と挫折感を禁じえない。のみならず、同和問題を人権局が突出した形で捉えることは、同和問題自身の解決方法としても好ましいものではない。
2 今回の同和問題の実態調査は、かつて行われた同和対策事業対象地域を他の地域との比較において、実態調査しようとするものであることが明らかである。かつて行われた行政施策の「地区指定」は、当時としては止むを得ないものであったにしろ、多くの問題をはらむものである。かつて地域指定された対象地区が、人口の流動や、地域の変動により差別が解消しつつある今日、かつての地域指定を再認識させ、ここが地区であったと、一般の意識に呼び戻すおそれのある調査を行うことは、同和問題の解消に逆行するものと思われる。かような実態調査のあり方は、地域住民から、調査自体が人権問題であるとして指摘追及されるおそれがある。
3 実態調査は、アンケート調査の方法のみとは限らない。今回のような抽出対象が希薄なアンケート調査により、施策を施すべき課題を正確に把握し得るものとは思われない。
  そもそも、今回行おうとする実態調査は、如何なる課題が予想され、これに対して如何なる行政施策を施す必要があるものとして行うのか、調査目的が明白でない。
  調査して初めて施すべき施策の課題が発見されるとすることは、行政としての日頃の業務推進が何であったかを疑わしめるものである。地域の実態は、今回の調査前において、略々把握されているはずである。
4 今回の実態調査は、民間運動団体からの実施要請に応諾されられたかの如き印象を拭えない。このことは、いまだに同和問題を含む人権問題への取り組みが、特定の民間運動団体の意図する方向に動かされている感を一般県民に抱かせるものであって、他の人権運動に取り組む運動団体や、一般市民に与えるマイナス影響があまりにも大きすぎる。
5 今回実施が予定されている実態調査の手法(「市町村推薦の調査員」による調査票の「配布」「留置き」「回収」の方法)については、調査員の選任手続きや調査対象者の調査員に対する迎合の危惧等問題が多い。
6 今回の調査は、市町村の希望、支持、賛同を得て行われるものとは、素直に信じ難い。このように市町村の支持、賛同の得難い中、あえて県が問題ある手法によるアンケート実施を推進実施する必要性がどこにあるか疑わしい。
  以上の諸般の事情を総合して、今回の県当局の実施する人権課題現況調査(アンケート実施)には、賛同し難い。
  平成18年3月16日。和歌山県人権施策推進審議会小委員会委員一同。



報道資料
平成14年(2002年)3月29日
総務省

同和関係特別対策の終了に伴う総務大臣談話

 政府は、同和問題の早期解決を図るため、昭和44年以来33年間、三度にわたり制定された特別措置法に基づく特別対策を中心に、関係諸施策を積極的に推進してまいりました。今般、最後の特別措置法「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」が3月末日をもって失効しますので、同和地区・同和関係者を対象とする特別対策は終了いたします。
 同和関係の特別対策は、昭和40年の同和対策審議会答申の趣旨等を踏まえ、同和地区の経済的な低位性と劣悪な生活環境を、期限を限った迅速な取組によって早急に改善することを目的として実施されてきたものであり、その推進を通じて、同和問題の解決、すなわち部落差別の解消を図るものでありました。
 国、地方公共団体の長年の取組により、劣悪な生活環境が差別を再生産するような状況は今や大きく改善され、また、差別意識解消に向けた教育や啓発も様々な創意工夫の下に推進されてまいりました。このように同和地区を取り巻く状況が大きく変化したこと等を踏まえ、国の特別対策はすべて終了することとなったものであり、今後は、これまで特別対策の対象とされた地域においても他の地域と同様に必要とされる施策を適宜適切に実施していくことになります。
 また、新しい人権救済制度の確立、人権教育・啓発に関する基本計画の策定により、様々な人権課題に対応するための人権擁護の施策を総合的に推進する等所要の取組に努めてまいる所存であります。
 ここに、これまでの地方公共団体を始めとする関係各位の御尽力・御協力に対し、感謝と敬意を表します。

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