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住民票の写しの交付制度等の見直し

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/070112.html

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住民票の写しの交付制度等の見直しに関する報告書素案についての意見書
平成19年1月12日
日本弁護士連合会

第1 偽りその他不正の手段により住民票の写しの交付を受けた者への制裁強化について
【意見】
偽りその他不正の手段により住民票の写しの交付を受けた者への制裁を強化することには必ずしも反対するものではない。
しかし、上記制裁の強化に関し、刑罰化することには反対である。現在の制裁である過料の上限額を引き上げる方法によるべきである。
【理由】
住民票の写しに記載されている情報に対する保護の重要性及びそれに対する国民の要望等にかんがみれば、偽りその他不正の手段により住民票の写しの交付を受けた者に対する制裁を強化するという考え方には必ずしも反対するものではない。
しかしながら、制裁の強化について、共犯処罰をひとつの理由として、現在の過料ではなく、罰金という刑罰にすることが検討されているともいわれている。これには、以下に述べる理由により反対である。

1 刑罰は謙抑的でなくてはならないこと
今回の改正は、従来誰でも取得することができた「住民票の写し」について、一定の関係を有する限られた者についてのみ取得を認めるというものであって、パラダイムの転換というべき大改正である。制度の改正について国民の法意識の浸透を待たずに、刑罰の適用によって新しい制度を担保しようとするのは、徒に社会を混乱させる恐れなしとしない。行政上の義務違反に対して、刑罰を科することには謙抑的ではなくてはならず、行政目的達成に最低限必要な秩序罰である過料の制裁にとどめるべきである。少なくとも過料の金額を段階的に引き上げつつ、後日新しい制度について国民の常識として認知された段階で刑罰とするなどの工夫を行う必要がある。

2 現在の法体系における不均衡
個人情報を正面から扱っている「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」では、行政機関職員の不正行為に対しては刑罰を科することとしているが、「偽りその他不正の手段により、開示決定に基づく保有個人情報の開示を受けた者は、10万円以下の過料に処する」こととしている。住民票の写しの交付についてこれと異なり、一般私人に刑罰を科するとすれば、法令間での均衡を失する。
また、外国人登録法では偽りその他不正の手段により登録原票の写し又は登録原票記載事項証明書の交付を受けた者については、過料に処すとされており(外国人登録法第19条の3)、その他の法令においても、「偽りその他不正の手段」を用いて刑罰に処せられるのは、不正の手段によって業法上の登録をする場合や、旅券や運転免許証などその証明書自体に一定の権利を内包したものといえる証明書の交
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付を受ける場合など、加罰性の強いものに限られており、これらとの比較のうえでも、住民票の写しの交付について刑罰を科するとすることには問題がある。
3 重大な不正行為については他の法令等により刑罰等が科されること
住民票の写しの不正請求といっても、様々なものが考えられるのであり、「偽りその他不正の手段により」との構成要件では、本来刑罰の対象とする必要がないような些細な不正行為についてまで刑罰の対象としてしまうことになり、処罰の範囲が広がりすぎる可能性がある。
もちろん構成要件を限定することで重大な不正行為に限って刑罰の対象とすることは可能であるが、たとえば、犯罪に利用する目的で、住民票に記載されている本人になりすまして住民票の写しの交付を受けるなどの悪質な不正行為については、別途私文書偽造罪(刑法第159条)、偽造私文書行使罪(刑法第161条)などに該当し、その共犯も罰せられることになりうるから、あえて住民基本台帳法において刑罰化をしなければ不正の手段が防止できないというものではない。また、詐欺その他の犯罪行為に使用される場合には、当該犯罪行為自体を刑罰によって処罰すべきである。
報告書素案では、重大な不正行為を防ぐために刑罰を検討することによって、本来刑罰による処罰の必要のない軽微な不正行為についてまで、刑罰による処罰がなされる恐れがある点で問題である。
なお、弁護士その他の有資格者による不正な交付申請については、弁護士法その他による懲戒処分などの制裁の対象となりうるのであって、十分な抑止が可能であるから、あえて刑罰の対象とする必要はない。


第2 職務上請求の取扱いについて
【意見】
基本情報以外の情報(例えば本籍地)を記載した住民票の写しの交付請求の場合や戸籍の附票の写しの交付請求の場合にも、職務上請求用紙の記載事項としては、紛争解決手続の別、紛争の種類及び使用目的を明らかにすれば足りることを明確にすべきである。
【理由】
紛争解決手続の代理業務を遂行するために必要な場合の弁護士その他の有資格者による交付請求書の記載事項については、利用目的の記載方法などについて事柄の性質上別個の扱いがなされるとされている(報告書素案4頁④)。この扱いは基本情報以外の情報(例えば本籍地)を記載した住民票の写しの交付請求の場合や戸籍の附票の写しの交付請求の場合にも該当すると考えられ、これらの場合にも有資格者による職務上請求の取扱い(報告書素案4頁④)が適用になり、職務上請求用紙の記載事項としては、紛争解決手続の別、紛争の種類及び使用目的を明らかにすれば足りることを明確にしていただきたい。


以 上

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