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鳥取知事選も焦点 条例見直し

安易な制定 浮き彫り
県人権救済条例の凍結
(2006年12月24日  読売新聞)

 全国の注目を集めた県人権救済条例が、定義のあいまいさなどから凍結されて9か月たった。この間、有識者らで作る人権救済条例見直し検討委(会長=永山正男・鳥取大副学長、10人)が条例改善の方向性を探ってきたが、その作業は基本的な調査からスタートしており、条例が十分な議論もなく制定されたことが改めて浮き彫りになった。

 「ようやく次回(来年1月)が中間取りまとめになる」。5月に始まった検討委会合の8回目を終えた22日、永山会長は大きく息をついた。

 見直しのポイントは、条例を作らないと救済できない人権侵害の事例(立法事実)が県内にあるかどうかの確認だ。ないならば、条例を作る意味がない。

 検討委の作業は、県内にどんな差別事例があるかを調べることから始まった。同和問題や障害者差別など8分野の人権侵害を救済している県内35団体の関係者を会合に招き、聞き取ったところ「駅のトイレに差別落書きが多い」「精神障害者が住民に『同じ日にゴミを出すな』と言われた」などの事例が集まった。

 一方で、委員からは「落書きは書いた人を特定できない」「まず啓発を」「人権侵害の線引きが不明」と疑問の声も出た。事務局の体制も「大規模なものは無理」(県)と十分な検討がなかったことを露呈した。

 毎回の会合を取材して、なぜ制定前にこんな議論がなかったのかと不思議に思えた。「真の人権を考えるインターネット有志の会」事務局の吉田将志さん(27)(鳥取市)も「条例を作ってから立法事実の有無を調べるとは本末転倒」と批判する。

 条例づくりは、人権擁護法案の国会提出から3か月後の2002年6月の県議会で、片山知事が県独自の人権救済制度の必要性に言及したのが発端。法案は翌年秋の衆院解散で廃案になったが、県は04年12月に条例案を提案。だが、救済する人権侵害の定義があいまいなうえ、救済方法として過料や勧告、公表の強制手段を用いることの妥当性も深く検証していなかった。

 当時、条例案作成にかかわった関係者は「法案の条文を引用して作った条例案の素案をどう修正するかの議論が中心になってしまった」と振り返る。

 条例は、県案を修正して議員提案され、05年10月に可決されたが、立法事実の確認はないままだった。片山知事は凍結後の県議会などで「欠陥商品だった」「(問題点を)吟味していなかった」と認めた。

 吉田さんは、ある県議が「知事は初物が好きだけえ」と話すのを聞き「知事も議会も条例を軽く考えていたのでは」と感じたという。「事前に議論していれば、条例を作ることにはならなかった」と指摘する。

 一方、部落解放同盟や連合鳥取などは全国で30万人の署名を集め、早期施行を要望。杉根修県議(住民連合)は「泣き寝入りしてきた被害者を救う画期的な条例。見直しは早く終えるべき」と主張する。

 検討委は来年2月から人権侵害の被害者の聞き取りに入る。知事への答申は知事選と県議選後の7月ごろになる。山崎公士・新潟大教授(国際人権法)は「立法事実の確認は重要。どこまでを県でできるかをきちんと詰めてほしい。選挙で知事や県議会の顔ぶれが変わっても、議論は継続すべきだ」と話している。



回顧2006 鳥取この1年
2006/12/17日本海新聞
豪雪で幕を開けた今年の鳥取県。二〇〇六年もあと二週間余りとなった。春から初夏にかけての日照不足、夏の豪雨と「異常気象」に見舞われた。松本京子さんの拉致被害者認定や核実験など、北朝鮮をめぐる問題も大きく動いた。長年の懸案だったウラン残土問題が全面決着。県庁などでは裏金問題が発覚した。一方、全国スポレク祭成功や鳥取キタロウズ誕生など、明るいスポーツの話題もあった。郷土の一年を振り返る。

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【2】人権条例見直し
       
人権救済条例の施行「無期限停止」を全会一致で可決した鳥取県議会=3月24日、本会議場
 県内外から大きな批判
  「人権、人権侵害の定義があいまい」「憲法違反の恐れがある」など県内外から大きな批判を浴びた、鳥取県の人権侵害救済推進及び手続きに関す条例(人権救済条例)。今年三月、同条例の施行を無期限に停止する条例が可決。条例の廃止を含めて抜本的な見直しを行うことになった。
 責任なすり合い
  一昨年、片山善博知事が提案、継続審議にした原案を議会側が一部修正した条例は根本的な問題改善されないまま、制定からわずか五カ月余りで事実上の改廃。「議会が提案したもの」と距離を置く片山知事に対し、「条例の原案は執行部案」と反発する議会側。責任のなすり合いの様相だ。
 六月定例県議会の質問戦。片山知事は条例の問題点について「吟味していなかった。指摘もなく、気が付かないまま議会に出した」「議会でもみにもんだが、ほとんど指摘事項を解決しないまま議員立法で世に出た。その上で原案が悪かったから、知事の責任だというのでしょうか」。“欠陥商品”を認めたのは県議会だと突き放した。
 解決は任期後に
  人権救済条例は、弁護士ら学識経験者で構成する見直し検討委員会で問題点を洗い出している。
 焦点は、人権侵害、差別の対象行為について具体的な例示の可否▽憲法が保障する「表現の自由」と「内心の自由」の侵害▽行政機関など公権力の調査拒否権▽救済機関となる委員会の独立性▽罰則規定の妥当性▽メディア規制-など。
 千葉県では、障害者差別を禁じた条例を十月に制定。当初は鳥取県と同様に幅広い分野の人権、差別行為を対象にした条例を検討していたが、障害者に特化し「労働や教育、医療などにおける差別」を禁止。助言やあっせんを行う調整委員会の求めで知事が勧告できるが罰則はない。
 見直し検討委は来年春をめどに法的論点をまとめ、六-七月ごろ知事に答申する。人権、差別の救済を包括的に扱う全国初の条例。「手直しすれば使えるのか、手直ししても使えないのか整理が必要」と話す委員。片山知事、県議会ともに任期中の解決は不可能となった。


第7回人権救済条例見直し検討委員会議事録
「jorei-kyusai_kentou06_11_21-gijiroku.pdf」をダウンロード
11月21日(火)午前10時から正午まで
鳥取県庁第22会議室(鳥取市東町)

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