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福岡県の支援加配教員の実態

 県教委文書が目的外使用を容認
  福岡県の支援加配教員の実態
   人権連福岡事務局長 植山光朗

 
1 元凶は県教委通知の「なお書き」

 今回のリポートは児童生徒支援加配教員の異常な勤務実態である。これまでも本誌で再三、指摘してきたように、福岡県に毎年配置されている四五〇人前後の児童生徒支援加配教員の勤務状況は、旧同和教育推進教員の任務であり、文科省が厳禁している「目的外使用」の実態を告発する。今回はその後の状況を具体的な調査と裏づけ資料などで赤裸々に報告したい。福岡県の児童生徒支援加配の実態は、文科省の三つの留意事項などどこ吹く風といった按配である。
十月十三日、人権連福岡県連は福岡県と〇七年度の予算協議を行った。午後は県教育委員会と九つの要求項目で二時間にわたって協議をした。とりわけ児童生徒支援加配の同和教育に偏向した配置の実態、旧同推と変わらない任務実態の是正を求めることに焦点を絞った協議になったのはいうまでもない。
県下で支援加配の目的外使用が野放しになっている元凶は、これまでも再三、機会あるごとに指摘してきたことだが、県教委の文科省方針のすりかえ、捏造した通達である。
最初は「児童生徒支援加配(仮称)」についての県教委の説明資料(二〇〇二年二月―?)である。この説明資料には文科省の三つの留意事項はばっさり削除し、県教委独自の「その他」事項をわざわざ加え、支援加配の活用にフリーハンドを与えたものである。
二回目は「基準外定数加配の活用方法について」(〇二年四月一日)の県教委の事務連絡である。県教委が県下の各教育事務所に説明した指示文書(口頭か)である。この文書には支援加配教員は同和・人権教育を推進、人権同和の研究会への参加、情報の収集など活用すべきであり、児童生徒支援のための配置でない旨、位置づけられている。(十三日の協議で県教職員課は「文書はないというが」)
三回目は、県同教への教員派遣は違法、派遣教員への給与支払いは不当とする〇三年三月の県同教裁判の福岡地裁判決をうけて、県教委が同和教育行政のあり方を一部、手直しした。地裁判決の尊重を求める私たちや県議会質疑で、支援加配教員の適正な運用をもとめられて作成した「小・中学校における教員加配定数の活用について(通知)」(〇四年二月十九日)である。
この通知のなかで県教委は「なお、教職員が各地区人権・同和教育研究協議会等を通じて、人権・同和教育に関する情報収集等の業務に従事する場合には、学校教育活動との関連性を一層明確にしつつ適正は服務管理が行われるようお取り計らいください」と付記したいわゆる「なお書き」が、支援加配の活用にフリーハンドを与える結果を招いているのである。
十三日の協議で私たちは「なお書き」の削除を求めたが県教委は「この、『なお書き』は、学校教育活動と関連がない業務は公務とは認めないとするものであり、今後も、この文書に沿って、より適切に指導する」と繰り返し、目的使用の口実になっている実態を認めようとしなかった。私たちは支援加配教員の月に十八回に及ぶ学外への出張はこのなお書きにある「各地区人権・同和教育研究協議会等を通じて、人権・同和教育に関する情報収集等の業務に従事する」ことを理由に、校長に反対の裁量を許さないシステムになっていることを指摘、なお書きの削除、見直しを執拗に迫った。
県教委もようやく「なお書き」については(削除、通達の書き換えなどをふくめ)検討したいと約束したのである。
まず冒頭にこのことを報告して以下、福岡県の今日の状況をリポートする。

2 内部告発に文科省走る

今年六月、福岡県行橋市の小学校PTA役員と名のる保護者から文部科学省に一通の電話があった。「いつ学校に行っても加配(児童生徒支援加配教諭)の先生がいない。どうなっているのか?」という内容であったらしい。
六月には全解連行橋地協の大川義彦書記長(行橋市議)らが議会質問の調査で、以前から問題になっていた行橋市内十三校に配置されている児童生徒支援加配教諭の勤務実態の学校ききとり訪問をおこなっている。六月市議会で大川市議は支援加配の勤務実態について市教委の見解をただした。本会議場には傍聴の市民がつめかけた。当然、市民、とりわけPTA関係者の関心は高い。
文科省への匿名電話は、察するに議会質疑の後らしい。児童生徒支援加配の任務は、学習・生活・進路指導上で、特別配慮が必要な児童、生徒にたいして援助支援をおこなうことである。その加配教諭がいつも学校にいないとはなにごとか。行橋のPTA役員からそう指摘された文科省は、即、福岡県教委に実態の調査を命じた。
文科省からの電話指導にびっくりした県教委は、行橋市内の支援加配配置校を訪れ、加配教諭たちの勤務実態を調査している。
さて、その後の県教委の調査だが、たぶんに地元の京築教育事務所に調査を命じたのであろう。この県教委の実態調査がまことにおざなり、型通りのものだったことが、今度は七月末、全国人権連本部へのEメールをつかった二つの内部告発で明らかになった。

3 Eメールで追い討ち

 メール送信者は匿名、当方にも皆目見当がつかない。すこし長いが、匿名氏の二つのメールを引用する。それによれば「行橋市は、いまだに学校と部落解放同盟の結びつきが色濃く、困っております。徳永教育長自らが、この団体を擁護する発言が目立つ」として、同教育長の発言を「①支援加配教員の業務については、(授業をうけもたなくてもいいように)配慮してほしい②(同和地区児童を対象にした)促進学級はやめないで続けてほしい③(解放同盟と関係が強い)人権研究会の業務は、他の研究会業務と同じだ」と列挙。
 匿名氏は「人権研の業務には、狭山住民の会事務局会、解放文化祭事務局会、経験交流会など解放同盟の下請け業務があり、夏休みに解同が主催する解放文化祭には、校長自らが出演する者もいる。これらが出張に値するのでしょうか」と疑問を投げかけている。
そのうえで支援加配問題にふれている。「先日、支援加配教員の勤務について、福岡県の調査が入りました。ところが調査官自身が、解放同盟弁護の方策をほのめかしたと聞きました。なんの調査なのでしょうか。厳しく対応してもらいたいと思います。
 また、提出された書類には、偽物もあります。特に、支援加配が授業に入っている学校は、数えるほどしかないのに、調査では、どの学校も週にかなりの時間、授業に入っているようになっています。
 支援加配教員の目的外使用については、実態と書類とをつきあわせる必要があります。行橋市は、教育長自ら、目的外使用を認めるような発言をしているのですから。
 支援加配教員が授業をしない傾向は、中学校の方が甚だしいのです。善良な教員は困り切っています。なんとかならないものでしょうか」というものである。
 
 4 一ヵ月に最高九割、平均で七割が
学外出張の実態

匿名氏の指摘に信憑性があるのか。六月の京築地協の聞き取り調査一覧表とすり合わせてみると、内部告発の実態はぴったり一致した。調査は五月の一ヶ月間の支援加配教員十三人の学外出張状況調べ。大型連休と土日の除く登校日は二十日。行橋中の支援加配教員はなんと十八日間出張、ついで多いのは椿市小支援加配教員の十七日間、今元中と長峡中の同教員の十六日間。十三人全員の平均出張日は十四日間。なんと七割が出張なのである。この状況では、PTA役員がいつ学校に行っても支援加配教員がいないという苦情はうなずける。
 ではこの十三人の支援加配教員はどこに、何の行事で出張していたのか。同地協の一覧表によると地区労会館で毎週月曜日、市人権研事務局会(五回とも十三人はほぼ全員出席)、同水曜日の人権同和教育担当者(研修)会(四回)。この二つの行事は定例会である。
このほかに促進学級運営委・役員会、郡市解放保育実践交流会、第四十六回県同教定期総会(金曜日開催)、二十八日(日)から三十日(火)の三日間、宮崎市での部落解放第二十六回全九州研究集会など延べ二十七行事に出張している。五月の二十日間で二十七行事、一日一・三五の行事回数である。これらの行事のほとんどが人権研や解同・県同教などの任意団体の行事であり、運動である。その推進役が支援加配教員である実態も、同地協の調査で明らかになった。

5 支援加配が促進学級運営事務局を担当
 
 二〇〇六年度行橋市促進学級運営委員会役員・事務局員名簿によれば、会長から会計監査十四人のうち、事務局長が中京中の支援加配教員、事務局次長二人も仲津小と行橋中の支援加配、会計に今元中の支援加配、事務局員五人中二人が椿市小と延永小の支援加配。事務局員のほかの二人は行橋市総務部人権・男女共同参画課の職員、残り一人は解同京都行橋地協委員長である。この有様は、〇三年までの福岡県同教そっくりの役員構成であり、元県同教行橋版といっても過言ではなかろう。
この実態は文科省が厳に戒めている目的外使用でなくて、なにが目的外使用といえるのか。
 促進学級とはなにか。同委員会の会則(案)によればその二条・目的に「促進学級は、学級に参加する児童・生徒に対して人権・部落問題を正しく認識させ、差別をしない、差別と闘う子どもの育成をめざし、・・」とあることから、どうやら学校教育とは無関係に「部落差別と闘う解放の戦士」の育成を目的にしている。「解放の戦士」の育成は、解同といういち民間団体の運動論であり、部落民以外は差別者とするルサンチマンに彩られた部落排外主義で子どもたちを洗脳する、極めて非教育的な妄動である。教育基本法、学校教育法に則り学校教育をつかさどる教育公務員のやることではない。
 促進学級運営委員会は十月二十八日の第三回京都行橋促進学級交流会で「石川さんの闘いは自分たちの闘いであることを再認識し、促進学級に参加することの意義を確かめあわせる」ことを目的に開催するとしている。今年六月の第一回交流会でも「石川さんの無実を証明する闘いは、自分たちの闘いであることを確認する」ことを目的に開いていることから、狭山偏向教育が促進学級の基底となっていることはハッキリしている。
 このように、してはいけないことを行橋市の十三人の児童生徒支援加配教員が、日常的にそれを学校教育より優先させて行っている。もはや文科省のいう目的外使用の域を大きく逸脱し、解同の「解放の戦士」づくりに狂奔しているのである。彼ら、彼女ら十三人の教師は、何もわからずに「解放の戦士」に仕立て上げられ成長する子どもたちの人生に最後まで、教師として責任を持つ自覚があるのだろうか。
 

6 支援加配教員の年間授業時間

北九州市では、以前、元教育長が「小中学校で支援加配の先生には基本的には年間五百時間の授業をめどにしている。学外の民間団体の仕事は、授業外、学校の業務終了後にかかわるのがのぞましい」と説明している。
その後、実態はどうかと市議会を通じて市教委に支援加配教員の年間の勤務実態を請求した。
市教委が公表した昨〇六年度の北九州市内の支援加配教員の授業時間数は、市教委資料で見てみると、五百時間割れが多い。昨年度の同市の支援加配配置数は小学校三十八人、中学校二十七人。小学校での最少授業時間は小倉北区足原小の百七十時間、小倉南区北方小のA教員百八十二時間、同小B教員の二百二十四時間、小倉北区足立小の二百八十七時間。三百時間台が七人、四百時間台が七人もいる。
中学校では若松中の支援加配教員が九十時間と最少、ついで八幡西区淺川中が百二十時間、若松区の高須中の百五十二時間、小倉南区沼中の百五十五時間、若松区洞北中の百七十九時間。二百時間台は四校、三百時間台五校、四百時間台七校と中学校の場合、二十七人中二十一人が五百時間を割り込んでいることがわかった。

7 解同と考えちがうと支援加配排除

 その北九州市で、昨年度、同市八幡東区の小学校の男性教員が「支援加配配置問題」に関して〇五年十二月二十二日付けで、北九州市の教育委員長、教育委員三人、教育長の五人に対し公開質問状を送付した。児童生徒支援加配配置が解同べったりの実態や市の同和教育行政の基本姿勢を問うことで、市教委に文書回答をもとめたものだ。同和教育に関連して現職の教員が実名入りで市教委に堂々と公開質問したことは同市では前代未聞のことで大変勇気のいる行動であった。  
公開質問状の要旨はつぎのとおり。
 ・・・昨年度児童支援加配教員を選ぶ際、児童支援加配教員に立候補した私は学校長より、「あなたは、児童支援加配教員に立候補しているが、同和教育に対する考え方や思想が違うので、児童支援加配教員にはさせられない。」と言われました。
 私は「児童支援加配教員は、同和地域に配置されているのではない。同和教育に対する考え方や思想が違うから児童支援加配教員にはなれないというのはおかしい。」と反論しました。
 しかし学校長は、「現実は、南同連(八幡地区南部校区人権同和教育連絡会議)などにおいて部落解放同盟との関係があるので、同和教育に対する考え方が違っていては児童支援加配教員にはさせられない。」とのことでした。・・・とした上で、
1、児童生徒支援加配教員は、解同との関係で、「同和教育に対する考え方、思想が違う者」にはさせないと指導しているのか?
2、同和問題についての考え方・思想が違うとなれない教員が、公教育の学校現場に存在するのか?
3、児童生徒支援加配教員は、同和地域限定して配置しているのか?文科省の留意事項に相反する?
4、特定の民間教育団体(県同教)へのレポートを、公教育の教職員全員に強制して良いのか? 
 5、様々な部落問題に関する運動体があるが、公教育が解同という特定の運動団体とだけ連携してもよいのか?
6、児童生徒支援加配教員が、いまだに以前の同和推進教員と同様に解同などの特定団体と連携した取り組みを行っている。南同連の学校では、初任者・転任者の同和教育学習会の講師を解同の役員に依頼。
この六項目について市教委はどう考えているのか、文書で回答をもとめた。
 しかし、市教委は文書回答をせずに、同教諭の所属する学校長に回答するよう責任を転嫁。校長は「市教委と連携をとり協議した。内容は校内のことなので私から答えた方がいいと私が判断した」と市教委擁護に終始したのである。
 
 8 目的外使用を明文化

 福岡県内第三の都市、久留米市では児童生徒支援加配の任務を「人権・同和教育担当者会議設置要綱」(久留米市人権・同和教育室)の中ではっきり明記している。
 それによれば第一条の目的で「人権・同和教育担当者会議は、市内の公立小中養護学校等の人権・同和教育の推進及び充実を期するため、人権・同和教育担当者会議を設置し、人権・同和教育の推進に関する研修や各学校間の交流を行う」としている。五条の会議の招集で「児童生徒支援加配教員は、担当者会議内容充実のため、毎月第二金曜日一五時三〇分より、推進委員会を持つ」と堂々と明文化。
今年四月の第一回人権・同和教育担当者会議では、同会議の運営体制について、主催は市教委人権・同和教育室として、運営に当たっては、同市に配置された児童生徒支援加配教員二十一人中、十七人が「内容の充実・向上のため支援する」(同三条)としているのである。
久留米市と同じく同和教育の推進役を担わされている事例は、田川市郡でも顕著。市郡内の小学校の事例を参考までに上げておきたい。
今年四月のB小学校加配活動計画による。活動目的に、校区内の小・中学校の「同和」教育を基底とした交流会を推進していく。町「人権の教育街づくり『中・長期計画』推進委員会に所属し、課題解決の方策を提起」。
その具体的活動として①「中学校区での取り組み」では、町「同和」教育推進協議会学校教育部会「学力保障委員会」に所属、学力保障委員会は原則毎週火曜日十四時から十七時。「同推」・加配学習会を行い、研修を深めていく。
②「校内での取り組み」では、「同和」教育の視点での学力保障の推進をめざし、・・・「同推」や「同推」委員会、研究推進委員会と連携しながら、その中心的役割を果たす。
また「授業への関わり」でも「午前中は、加配として地区児童を中心とした低学力児童の指導に当たる」
③「同和」教育推進委員会の運営として、同推と連携を図りながら、校内における「同和」教育の推進、毎月「同和」教育推進委員会を開き気になる子の交流や人権学習の交流を行う、「同和」教育研修への参加体制の確立、につとめる。
④部落解放子ども会の学習会の企画運営として「部落解放子ども会の学習会が円滑に運営できるように、校内での世話を行う、部落解放子ども会の学習会のお知らせプリントの作成・配布、人権集会への関わり(プロジェクトチームの立ち上げと運営と世話)」を担当する。
⑤地域との連帯では「部落解放子ども会への関わり、解放学級への参加及び全教職員を参加体制の確立」のために奮闘する。
⑥「同推」の事務補助として「謝金の計算と配布」、まで担当させられる。
この学校の事例では、一般対策としての支援加配教員と旧同和特別法下での同推教員との任務内容は、まったく違うところはない。
行橋、北九州、久留米、田川市郡でみられるケースは、まさに同和教育推進のための児童生徒支援加配の配置だ。「児童生徒支援加配は、従来の同和加配とは異なり地域を限定して、加配するものではない」とした文科省の指導を全面的に否定する福岡県教委の支援加配活用通知が、県下で地元解同、地区同研、支援加配に目的外使用のフリーハンドを与えていることを証明しているのである。三つの留意事項を否定されている実態に、今後の文科省の指導のあり方が問われていることを指摘して、福岡県からの現地報告とする。

(二〇〇六年十月十四日記) 

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