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障害者の人権

社説

「禁止条例」を広めたい 障害者差別 


 障害者への差別を禁止する全国初の条例が、千葉県で誕生した。

 条例は「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」と名付けられた。

 障害があっても、地域の中で自分らしく生きることができる。そうした理念に基づいた施策を推進する動きは徐々に広がっているが、障害者らが地域で安心して暮らす環境にはまだ程遠い。

 今年6月に施行された改正障害者基本法には差別禁止の理念は盛り込まれているものの、何が差別にあたるのかは定義していない。差別を解消するための救済制度についても、具体的に示されていない。このため、障害者や支援団体などからは実効性が乏しいとの批判も上がっている。

 アメリカの障害者差別禁止法(ADA)は、雇用や教育などの面で、障害者の受け入れや機会均等の実現に重要な役割を果たしている。

 障害者差別を禁止する法律は世界40カ国以上で整備されている。日本政府は2001年8月に、国連から法律を制定するよう勧告を受けている。

 そんな中で成立した条例だけに、国に対して障害者差別禁止法の制定を促す意味を持つことになるだろう。

 障害者への差別はなかなか表面化しにくい。児童虐待防止法で虐待の定義が明文化されてから、地域住民が虐待を社会問題としてとらえるようになり、通報件数も急増した。障害者の人権を確立するためにも、同様の法整備が不可欠だ。

 千葉県の条例は「障害を理由に採用を拒否する」などと差別を具体的に定義し、虐待と合わせて禁じた。障害者が差別を受けたと訴えたときには、第三者機関の調整委員会が当事者から意見を聴き、助言、あっせんを行う。従わない場合は、知事が是正勧告する。

 差別をめぐって提訴する障害者に対しては、県が訴訟費用の貸付制度を設けた。経済的な理由から障害者が泣き寝入りしないよう配慮したのである。

 障害者の施策を立案・策定する際に、当事者が参画することは極めて珍しい。千葉県は、実際に障害者たちと意見交換し、1年以上にわたって県民参加型で条例づくりを進めてきたという。多くの人に障害の問題を自分の問題としてとらえる契機となったに違いない。

 障害者が地域で暮らすノーマライゼーションの理念は徐々に浸透している。だが障害者が地域で生活するには、福祉サービスの充実だけでなく、家族の理解や地域住民の支援は欠かせない。

 条例は来年7月から施行される。差別は個人の心情にかかわる問題だけに、差別になるかどうか判断が困難なケースも考えられる。試行錯誤を重ねながら、条例を地域に浸透させたい。

 障害者の人権を確立するために、他の自治体にもこの条例を広げたいものだ。

=2006/10/25付 西日本新聞朝刊=

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