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大阪市との「癒着決別」とは言い難い

「大阪市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」の提言に対する見解

http://www.ochra.or.jp/

2006年9月

社団法人 大阪市人権協会 

1.はじめに

8月31日(木)大阪市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会(以下、委員会という)は、最終委員会で、大阪市に対する同和行政見直しの提言をまとめました。

この提言は、6月2日(金)に關市長が突如として開いた記者会見で「同和行政について全てを見直す」と表明したことから外部委員も入れた中で構成された委員会での9回の議論によって出されたものであります。

最終資料によれば、政策的な課題の解消について、その基本的な視点を

① 他の同種の事業実施状況と比較して公平・公正かどうか
② 特定の団体が優遇されていないかどうか
③ 事業内容から見て、特別対策と見られないかどうか
④ 既存施設を有効に活用できているかどうかとし、

特に、人権文化センター、老人センター、青少年会館については、特定の地域にそれぞれ1館ずつ設置され、市民からは特定の地域を対象とした施設であると考えられている点は、否定できないとし、今後建替えは行わないことを前提に既存施設の活用方法を検討するべきである。また、施設の統合も考えるべきである。施設を残す場合でも、公募とし市派遣職員を廃止するとしています。 しかしながら、この見直し案では、人権行政としての視点が全く欠如しており、政策的課題の解消というよりも単に一般論としての効率的に考えてどうかという視点にすぎず、一方で、人権行政・人権施策の必要性を言いながらも、具体的には全く触れられておりません。今日的な視点で見直していくということについては、反対ではありませんが、飛鳥会事件や芦原病院問題などの不祥事をきっかけとした、最初から削減することのみを念頭においたものであるといわざるを得ません。

当協会は、「法」後の同和行政改革・人権行政構築において、その担い手として積極的に各種改革、見直しを先頭にたって実施してきましたが、そういったこの間の改革の努力には、全く触れられず、あたかも同和行政全てが間違っていたかのような前提によって議論がなされてきたとしかいいようがありません。

特に、大阪市の“事なかれ主義”ともいえる対応に終始してきた無責任性が今日の事態を招いてきたことについての総括がなされておらず、当協会が大阪市と交わしている協定書や確認書等に違反する内容もあり、協会としては、あらゆる選択肢を考慮して、今後の対応を検討してまいります。

2.政策的な課題の解消についての具体的見解

(1)いわゆる同和加配といわれてきた職員配置について

学校の管理作業員、給食調理員の加配については、すでに解決され、整理されていたはずのものが何故存続されていたのか疑問であります。

(2)青少年会館について

青少年会館条例を廃止し、グランド・体育館については、公募による指定管理を導入し、市派遣職員を引き上げ、一般スポーツ施設として位置づけ、他の施設については、多目的に各種事業の実施場所として活用を図るとしていますが、人権教育・人権施策という視点が全く欠如しています。

(3)保育所の職員配置について

加配の保育士を今年度限りで廃止すべきとしています。特に見解を出す立場にはありませんが、これまで培ってきた保育内容の充実等、少子化に歯止めをかけていくという今日的な視点でのあり方として議論する必要があると考えています。

(4)地域老人福祉センターについて

「1区1館を原則とする限り、施設の効率的・効果的活用や公平性の観点からも、地域老人福祉センターを公の施設として設置運営することは適切でない。」としながら、一方、「施設の有効活用を図るにあたっては、適正な維持運営が行えるよう精査し、運営形態としては、建物の利用可能な期間に限っての効果的な活用方策として、NPOや地域コミュニティ組織等の自主管理形態が考えられるが、適正な維持管理運営を確保する上で、光熱水費及び設備の保守点検費用等の管理経費や利用調整にかかる経費について、確保する必要がある。」として青少年会館同様、条例廃止を行い、運営形態の変更(市人権協会をはずす?)を行うとしています。現在、老人福祉センターには、当協会の職員22名が従事しておりますが、これらの職員をどうするのかということが問題となります。また、大阪市からの要請に基づいて当協会が管理代行を受け、利用率の向上等3年間の努力を抜きにした、一方的な方針転換と受け止めています。さらに、飛鳥老人福祉センターについて、建設借入金償還補助については、助成の継続を行うとしていますが、生江地域の社会福祉法人への「生きがい活動事業補助」と飛鳥老人福祉センターへの「民営老人福祉センター運営助成」の補助金については、廃止も視野に入れ抜本的な見直しを行う、としています。

(5)障害者会館について

2つの案を併記し、今年度中に市の方針を明らかにすべきとしています。

① 公の施設としての役割や必要性を十分に検討したうえで、公の施設として指定管理者の選定を行う場合は、施設運営の透明性、公平性、効率性の確保の観点から公募とする。指定期間については、障害者支援の継続性や専門性、利用者との信頼関係等を考慮する。
② 公の施設としての役割や必要性を十分に検討したうえで、民間施設として運営することによりサービスが向上し、より効果的、効率的、継続的な運営が見込まれる場合は、民間法人へ移管することとし、その手法について検討する。ただし、相談事業等、事業収入が得られない不採算事業については、その必要性や費用対効果等を精査し、大阪市からの委託事業などの措置を講じること。

(6)ふれあい人権住宅の募集対象区域の拡大について

「ふれあい人権住宅の募集対象区域については、他の住宅と異なる取り扱いとする必要性が乏しいことから、市域全体に拡大することとし、来年度から啓発を図りながら実施すべきである。また、名称の見直しについても、今後検討する必要がある。」としていますが、そうしていくためには、差別の壁があり、その問題をどう乗り越えるか、ということについて、まったく踏まえられておりません。

(7)未利用地等の管理および駐車場の管理運営について

市の方針は、すでに運営委員会において決定されている方針です。

「着実に履行されたい。」とし、「未利用地等の管理については、未利用地が事業活用または処分されるまでの暫定措置と考えられることから、引き続き人権協会へ委託とならざるを得ないと考えるが、大阪市において、今後策定予定の未利用地の活用・処分の方針に従い、計画的に管理地の縮小を図るべきである。」としています。

(8)人権文化センターについて

「地域毎に人権文化センターが必要かどうか、一般施策として市民から理解が得られるのかどうかについて検証が行われておらず、人権文化センターの3つの機能(自立支援機能、人権啓発機能、市民交流機能)について、目的や対象の類似する他の事業との整合性を図っていくなど、今日的な視点で必要な機能を精査し、効率的な施設の運営を図っていく必要がある。」とし、「現行の指定管理期間内において、大幅な見直しを行うことは、指定管理者との基本協定に反することになるので、抜本的な見直しは同期間経過後に実
施すべきである。」としながら、「指定期間内であっても、南方・日之出・飛鳥人権文化センターの3館については、1館に統合することがより効率的な行政運営に資すると考えられる。」と2010年度からの見直しにむけた方向性をいいながらも、3館だけは、すぐに統廃合せよという矛盾した内容となっています。

当協会としては、人権文化センターの管理代行者として、今年度から受託している施設であり、人権文化センターで実施している人権施策としての事業を大阪市域全体に広めていくという視点がない中で、人権文化センターの存続も含めた議論というのは、あまりにも突拍子もないものであり、「同推協意見具申(2001年10月)」をも無視したものであり、非常に荒っぽい議論として受け止めています。また、3館の統廃合については、人権文化センタープロパー職員の雇用問題も発生し、まさしく基本協定書第2条に違反するものであり、市に対して、あらゆる選択肢を考慮して、基本協定書の遵守を求めていきます。

(9)大阪市人権協会等の職員の雇用問題について

これまでの、一定の経過を踏まえながらも、職員整理の配慮すべき手法として、

・ 人権協会が指定管理者と指定されている事業で、市職員が派遣されているときには、市職員に替えて人権協会職員を必要な範囲で従事させる。
・ 人権協会委託事業が市関連団体に引き継がれる場合、合理的な条件で当該受託団体に人権協会職員の活用を要請する。その場合、一定期間経過後、当該職員の勤務評価によって、当該受託団体が雇用の継続について決定する。
・ 一時的に定数を超えて過剰となる職員については、市の責任の度合いに応じて、期限を限定した技能習得などを含めた雇用対策を行うものとする。ただし、人権協会等が残事業で最大限雇用を吸収するなどの自助努力を前提とするとともに、対象となる職員及び給与相当額を特定し、速やかに解消を図るものとする。 としています。

当協会としては、同推協意見具申に従って、事業受託の中で雇用を図ってきた職員や施設の運営等に必要な職員として雇用を図ってきたものであり、労働基準法等該当する法的な問題としての視点や大阪市としての政策転換における責任性の問題等総合的な観点から、職員雇用を守るためのあらゆる手法を検討する必要があります。

3.おわりに

この見解は、大阪市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会が市に対してまとめられた提言についての当協会としての姿勢を表明するものであります。総じて、この委員会議論は、飛鳥会事件や芦原病院問題などをきっかけとした同和行政・人権行政が悪であるかのような市政改革の雰囲気などを背景とした政治的な動きの中で、6月2日(金)に關市長が突如として開いた記者会見によって始まっています。9回の委員会議論を経て、事実上2ヶ月程度の非常に荒っぽい議論によって、まとめられたものであり、しかも当協会に関係する部分については、委員会議論の結果のみを伝えに来るという、市内部の一方的な議論の中で、出されてきたものであることは言うまでもありません。当事者を抜きに議論され、これまでの同和・人権行政そのものを否定的に捉えたうえで、整理の方向性を打ち出すことのみに終始した議論として進められたと受け止めています。

しかしながら、この提言のまとめの最後に「大阪市においては、本委員会の検討・審議を契機に、新しい人権行政のあり方について具体的に検討を進めていただきたい。」と締めくくられております。

このことは、最近の実態調査でも明らかになっている差別の実態を無視する事はできず、差別が現に存在するという実態を踏まえるならば、当然のことであります。当協会としては、大阪市が差別を解消するという人権行政の基本姿勢を堅持し、市として主体的で積極的な人権行政を進めていくならば、今後も市とのパートナーシップを踏まえて取り組んでいきますが、市にとって“都合のいい組織”としてだけで扱われるならば、今後は、市とは一線を画して、人権行政の履行を市当局に求めていくしかありません。

「大阪市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」の提言
http://www.city.osaka.jp/keieikikakushitsu/chitai/index.html

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