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鳥取第5回見直し検討委 救いきれないところへ金と組織を これが必要とされる「本音」か

情報公開】鳥取県人権侵害救済条例廃止署名OFF26
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1156591700/

第5回見直し検討委員会の模様(傍聴レポです)

 ご苦労様でした。

本日(9月7日)の参加者は以下の通りです。
(五十音順・敬称略)
朝倉香織(アサクラカオリ)
〔社会福祉士〕
大田原俊輔(オオタワラシュンスケ)
〔弁護士〕
國歳眞臣(クニトシマオミ)
〔鳥取大学名誉教授(社会学)〕
田村勲(タムライサオ)
〔特定非営利活動法人子どもの虐待防止ネットワーク鳥取(CAPTA)理事長〕
中村英樹(ナカムラヒデキ)
〔鳥取大学地域学部講師(憲法・行政法)〕
永山正男(ナガヤママサオ)
〔鳥取大学副学長(選挙・政治)〕
樋口春子(ヒグチハルコ)
〔元小学校長・元伯耆町人権教育推進員〕
安田寿朗(ヤスダトシロウ)
〔弁護士〕

 9月県議会を前に、県議さん達が沢山来られているものかと思ったのですが、 意外な事に今回は関係者席は殆ど空席。

 ちなみに以前から不評であった音声ですが、今回はきちんとマイクを各委員さんに手配され、大変聞き易かったです。
 人権局の速記部隊は、今回も4人くらいで必死にメモ 取っていました。

 今回の議題は、鳥取地方法務局で取り扱っている人権侵害の事例を検証するという趣旨だったのですが、先日も報道であった通り法務局の方は今回出席されず、以下の内容を文書で提出されました。

 まず人権局より、法務局提出の資料の読み上げが行われました。

1、県内人権侵犯事例の状況について
①人権侵害の事例概要と県内の動向
・平成17年度中の受理件数は226件(前年度対比13件増加)
 うちいわゆる「公」による侵害事例は16件、私人間の人権侵犯は210件と受理された人権侵害事例は、圧倒的に私人間のものが多いようです。

②救済措置の状況
・実際の処理内容は「援助199件(88.1%)」「説示2件(0.9%)」「措置猶予3件(1.3%)」「侵犯事実不存在8件(3.5%)」「侵犯事実不明瞭 5件(2.2%)」と、「援助」が圧倒的に多いのですが、これもそれぞれ具体的にどのような援助をしたのかは不明です。

2、人権侵犯事件調査処理規定による救済の考え方や問題点について
・法務省「人権救済制度のあり方について」(平成13年5月)
 
http://www.moj.go.jp/SHINGI/010525/010525-02.html
 ここの「2.被害者救済制度の実情」がコピーされていました。
・同「人権擁護委員制度の改革について」(平成13年12月)
 
http://www.moj.go.jp/SHINGI/011221/011221-01.html
 こちらが全面コピーされていました。

 口火を切ったのは大田原弁護士。
上の統計によれば人権侵害の事例で圧倒的に多いのが私人間のトラブルという事になるのですが、その反面で救済措置の大半は「援助(どのような援助かは不明ですが)」に留まっており、相手方への働きかけは行われていない事に触れ、「私人間の暴力・嫌がらせの類に対して、果たして行政による救済機関が役に立つのか? 法律相談窓口の紹介等、司法への橋渡しの充実の方が先決なのでは?」と疑問を呈します。

 これに対して永山会長は、「(救済措置が)援助に留まっているのは何故か、それはどのような援助なのか、これを議論の取っ掛かりにするか」とメンバーに促しますが、ここで中村講師から早速ミサイルが飛びます。

「今の制度で(私人間のトラブル等の人権侵害が)丸く収まっているのなら、そもそも人権条例は要らないのではないか。
(具体的な事例・救済措置は法務局より回答されていますが)そもそも条例でカバーする余地はあるのか?」

 田村理事長からこのような発言がありました。
「この資料で人権擁護委員の資質的な問題があるような記述があるが、もしそうであれば何故法務省はこの機能を充実させようとしないのか?」

 これに対して永山会長は、「もし相手方への強制力に欠ける、或いは擁護委員制度に問題があるとするのならば、そこに人権条例の発生する余地があるのかも知れない」と返答。

 まず田村理事長が人権擁護委員の現場についての簡単なレクチャー(のようなもの?)を行います。

 そして大田原弁護士がそれに続きます。
「援助」というのは一般的に相談者への説得、相談窓口の紹介、法的手続の紹介などといったところでしょうか。
 これに対していわゆる「勧告」に値するようなケースの場合、弁護士であれば当然相手方に対しての事情聴取も行う訳なんです。ところがこの調査では、相手方への聴取を行っていないようです。つまり、「勧告」に相当するようなケースというのは殆ど無いのでは
ないでしょうか? 本人のみからの聴取で済ませているというケースは、擁護委員にとって(擁護委員自身の素質云々の問題ではなく)人権侵害とみなしていない、でも法的な問題だとみなせるというケースが多いのではないか」

 また永山会長自身も調査結果を踏まえ、法務局から回答頂けていない部分もあって断言は出来ない旨の断りも入れつつ、「実際に侵害を受けたとされる人は、みんな「相談」するつもりで来ているのか、或いは(現行制度上の)「相談」で十分なのか、或いは「相談」すら出来ない深刻な人権侵害のケースが存在するのか」。
 更に大田原弁護士は「それらの人権侵害は果たして①違法性のレベルの問題、②立証可能かどうか、これらの問題をクリアできるのだろうか?もしクリアできるのであれば、それは十分裁判で救済は可能。それら司法による救済制度を知らない人に対してのアドバイスの方が、むしろ求められているのではないだろうか」
 更に中村講師からも「資料では人権擁護委員の専門性の確保がされていない事が問題だとされているが、これは法律の専門的知識の問題なのだろうか? 或いは分野毎の専門的知識の問題なのだろうか? 擁護委員の充実であれ、別の制度(この場合は人権委員でしょうが) でフォローするのであれ、法務省が「国の制度としても不足している」 とされているのに関わらず、果たして自治体で確保が可能なのか?」
 そして安田弁護士も、「法律的な専門知識、人権救済の専門的な知識、これがいずれも求められる。こういう専門性が無いとそもそも(条例で想定しているような)人権救済は不可能だ」と断定。

 永山委員が、「法」と「ケア」両面での専門性が必要な
のではないかと振ったところ、大田原弁護士はそれを更に、
①侵害類型毎の専門性
②紛争解決能力、調整機能(調停技法?)
③事実認定能力
 この三つの能力があって、それを組み合わせる事が大事だ、定義を更に明確化。
 そして安田弁護士からも「(もし人権委員のような新しい組織を立ち上げるに当たっても)独立性の確保の為には上記の三つの能力が必須であり、(法務省の見解として現行の人権擁護委員制度は)相手方への強制力が無いから機能しないのではなく、これらの専門 性が無いから機能しないのではないか」と、畳み掛けます。

 国歳名誉教授は他の委員の発言をもっともだとしながらも、「でも実際に差別や人権侵害に遭った人に(それらの相談機関を薦めても)「そういう所に相談しても無駄だ」とよく言われる。表には上がっていないが、そのような人は多いのでは無いか?人権侵害や差別は、実際に受けた人間に聞かないと分からない。事実認定能力は法律ではなく、様々な方面から見る必要がある。現行制度ではそこ迄出来ていないのではないだろうか」

 永山会長より前回(第4回)の委員会の山崎教授、大隈名誉教授の話を元に議論し直さないかとの提案が出ました。

 前回の議事録(残念ながら傍聴席には配られていませんでした)を元に、議論が再開されます。
 そしてまず安田弁護士が口火を切ります。
「(人権条例で)指摘されている問題については、山崎教授・大隈名誉教授の二人もよく理

解され ていたように思う。 ただ山崎教授は国の制度(人権擁護法案)が出来ない中で、鳥取で条例自体が出来た事自体 は「画期的な事だ」と評価していた。 これはある程度修正すれば条例は使えると言う事なのか、或いは少々の手直しをしたとしても
使えるものなのか?
 実は前回の委員会の後、山崎教授と弁護士会でも話をした。 その中で山崎教授は、「包括的な人権救済機関の存在そのものは大賛成だ」と言ったの

で、 個別の問題点を突いてみたところ、「そういわれると自信が無い。私は皆さんと話をする迄は (人権条例のように)包括的な人権救済機関を作る事に賛成していたが、考え直すべきなの かも知れませんね」とおっしゃっていた」
そしてこんな状況下では、やはり人権条例は一旦ご破算にした方が良いのでは、と強烈

な一撃。

(ちなみに10月に中国(中四国?)の弁護士会のシンポジウムに、山崎教授も参加される
のだそうです)


 包括的な人権救済に徹底的な駄目出しが出たところで、樋口元校長、朝倉社福士が口々に個別の対象に絞った人権救済に特化すべきではとの意見が出されます。

 続いて大田原弁護士より、今後(もし修正するとすれば、ですが)の条例の向かうべき方向についての意見が出されました。
「対象範囲は何を目的とするかによって全く異なる。
 もし条例が相手方に対する勧告を念頭に置いたものであるのなら、その対象は狭く限定されるべきであり、啓発に留まるものであるのなら、対象は逆にある程度広く持つべきだ。
 また公による人権侵害に対しては、その対象は広くあるべき。
 もし私人間の紛争を条例で解決しようとすれば、
①侵害類型毎の専門性
②紛争解決能力、調整機能(調停技法?)
③事実認定能力
この三つの能力を持った人をどれだけ(人権委員として)確保出来るかと言う問題が発生

する。
 個別分野に絞った救済であれば、それは可能なのかも知れない。逆に言えば個別的な問題に絞らないと、専門家になり得ない」

 これには永山教授も、包括的な人権侵害に対するスペシャリストがいるとしたら、それは哲学者くらいかも知れない、と自嘲気味に一言。

 また中村講師からも、理念としての人権救済には異論は無いとしながらも、条例で規定されているような包括的な救済を図る組織を自治体で確立する事に対しては、非常にシビアに見ておられるようでした。「現在の人権侵害を系統立てて、今見えない問題を見つけ出す。新しい部署を立ち上げてまで、それを行う覚悟はあるのでしょうか?」 この問いに対して人権局も、それをやろうとしたら、それこそ100人くらいの組織でないと出来ないし、そんな組織を作り出すのは無理と発言。

「確かに広範な人権救済というのは難しい。個別的な問題に絞って行った方が良いのも間違いない。自治体からの独立性という問題にしたって、県から予算を出して確立した組織が、県に口を出すなと言う事はあり得ないだろうし。まぁ非常に難しいとも思う。

 ただ私は出発点として、(現行法で救済されない)人権を侵害されている人は間違いなく存在していると、ずっと言ってきている。そう言った人の立場になってやっていくと言う意思を見せ、これだけの人員と相応のお金を出すと言う、その姿勢がまずあってから、それらの問題点について話し合うべき」

.

 この斜め上の発言に対して、中村講師から早速反撃が飛んできます。
 「人権委員の公平性・客観性はどれくらい保たれるのかと言う問題もあると思うんです。公的な救済機関が被害者とされる人に対して、どれくらいコミットする必要があるのか? 公平に客観的に判断するにはもう一方の当事者に対してもコミットする必要があるし、またそもそも一方に過度にコミットする事はむしろ避けるべきなのでは」

 そして田村理事長からもこんな発言が飛び出しました。

 「一番大事なのは、当事者同士が顔を合わせて和解する事、分かり合う事じゃないでしょうか。人間の心の奥底と言うものは非常に分かりにくいもの。一方だけを正しいとする事が良いというものではない。加害者とされた一方のみを勧告・公表と強権的な罰則ではなく、お互いの人間性を互いに理解させるような機会を作るに留める。こういった柔らかい発想じゃないとね」

(ちなみにこの少し後に、朝倉社福士も同様のコメントを されています)

 この後安田弁護士からも、「私人間のトラブル」と「公からの人権侵害」に対しては、それぞれ異なるアプローチをする必要があって、この使い分けが人権委員に可能なのか?
 また私人間の調整を行うのであれば、強制力を一切排除するべきだ、と持論を展開。
 これに対して永山会長も、「それらの区分け、また様々な事象を救済するのに、一本の条例では無理なのかも.......」

 余りに一方的な流れに、国歳名誉教授も、「難しい問題があるのは勿論分かっている。もし一旦ご破算するにしても、自治体で何らかの取組は出来ないのか。
 山崎教授は(前回の委員会で人権条例制定の)「志は高く評価する」としていた。ならばもっと議論すべきでは」と、苦し紛れの発言をするのですが、これには安田弁護士が、「そりゃ県から呼ばれたらリップサービスでそんな事くらい言うでしょ」と突き放します。

次回は10月17日(火)
議題は「外国人に対する人権侵害」

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