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「公営」を放棄し、市場に低所得者を追い出す 国交省

                          2006年9月15日
国土交通省住宅局住宅総合整備課 御中
                    全国地域人権運動総連合

    公営住宅法施行令等の

    一部改正に反対する

1、全国地域人権運動総連合(略称・全国人権連、旧名称・全国部落解放運動連合会)は、1996年の公営住宅法の改正による応能応益家賃制度の導入について、以下の諸点を根拠をあげて反対意見を提出した。
(1)公営住宅に入居できる収入基準を引き下げ、多くの勤労者や壮年層を対象から外したこと
(2)家賃が市場家賃となり、現在の入居者の大多数で家賃が高くなること
(3)公営住宅の建設が抑制され民間まかせになる可能性が強まること
(4)家賃決定など地方自治体の権限がせばめられており、地方分権に逆行すること
 このように先の法「改正」は、国民の最低限度の居住権を保障するという性格をもつこれまでの公営住宅法を破壊に導いた「改悪」であった。
 以上の指摘は、今回の法施行令等の一部改正に対する反対の論拠と重なるものであり、当時の私たちの意見に正当性があったことを証明している。

2、公営住宅施行令の一部改正に関する省の論拠
(1)現在の所得世帯の状況と住宅市場の動向との間の乖離
(2)公営住宅の入居者負担水準が民間賃貸住宅における家賃負担の実態に比べ著しく低い
(3)公営住宅制度を補完する他の公的賃貸住宅(「住宅地区改良法施行令、特定優良賃貸法施行令)の施行規則を一部改正し、所得基準の見直しを行う

3、省の論拠には正当性がない
(1)の論拠とする「民間住宅との『乖離』」は、公営住宅希望の高い市街地にいて公営住宅の新規建設を凍結したため派生したものであり、政府が住宅政策の転換をしない限り解決し得ない問題である。
(2)の論拠とする「公営住宅は民間家賃に比べて低い」は、公営住宅入居者ばかりか国民を愚弄する意見である。公営住宅は、一定の所得の国民に良質で低廉な家賃の住宅を供給するということだけでなく、民間賃貸住宅の質を保全し、著しい家賃の高騰を抑えるという目的があり、良質な公的住宅の供給が少ないことが民間住宅の家賃の高騰を招いていること、また、民間賃貸住宅の家賃を無批判に容認し、それに追随することは公営住宅の存在を否定するものである。
(3)については(1)と(2)の改正に対応するもである。
 以上の点から、今回の一部改正には、正当な根拠が存在せず、よって一部改正は中止すべきである。

4,本来、「応能応益」に求められる点
 問題は、「受益者負担」を「近傍同種家賃」という市場家賃との均衡を前提とし、家賃負担の増加につながる算定項目を導入しているところにある。
 よって家賃が入居者(資格者)の負担能力を上回り、団地ごとに市場家賃が設定されるため、結果、民間家賃の押し上げにもつながる。
 こうした入居者の負担増につながる付加された項目を取り除き、ヨーロッパ並に入居者年収の15%以内を限度とする家賃負担体系に変えるべきである。

5,地域コミュニティーの崩壊
 省は「公営住宅は、憲法第25条の趣旨にのっとり、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として、住宅に困窮する低額所得者に対し、国と地方公共団体が協力して、低廉な家賃で供給する住宅」と位置づける。
 この結果、勤労者や壮年層が公営住宅から締め出され、高齢者や障害者の比率の高い地域(団地)となる。現在でも公営住宅での自治や福祉活動に困難がみられるが、今回の入居収入基準の見直しは、こうした問題を一層激化させ、地域コミュニティーの崩壊を招くことになる。
 公営住宅において高齢者・低所得者の比率が高まることは、家賃が上がれば家賃の払えない滞納者が増加し、訴訟による強制退去などの事態が急増するなど、ホームレスを地域社会において増大させる危険性をはらんでいる。
 
6,改良住宅の性格をふまえつつ「同和」を理由とした低家賃を見直す
 住宅地区改良並びに小集落地区等改良事業は、不良住宅を除去し住環境の整備改善のために「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅の集団建設」などを行うものである。
 公営住宅は、住宅に困窮する低所得者を対象に「健康で文化的な生活を営むに足る住宅を供給」することが目的であり、それぞれの住宅には法目的上の違いがある。
 よって住宅の性格の違いを前提としてふまえ、個々の地域においては住宅建設の手法の違いにより、公営と改良団地の混在や同一棟で混在するなど一律ではない。
 こうした現状をふまえ、家賃体系のあり方は個々住民合意を尊重し、個別具体的な検討が求められる。

7,住み良い地域社会のために
 「集合住宅」としての「団地」居住者の要求を、ライフエリア(生活圏)からとらえ直し、誰もが住みやすい地域をつくっていくことが課題である。その際に、安心して住み続けられること、快適な生活環境であること、自治会の民主的運営、高齢者の社会福祉の充実、子育て・教育、ゴミ問題、食品の安全の問題など、歩いてゆける範囲の地域で、街づくりを捉える。
(1)家賃改定にあたっては、自治体の裁量を拡げ可能なかぎり最低の額に設定すること。
(2)家賃軽減・減免措置制度の充実を求める。
(3)若年(単身・子育て)世代が入居できるよう、所得制限の緩和をはかる。

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