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勝谷誠彦さんの話 別に悲嘆も失望もしない

「田中流」6年に幕 対立強調、不信呼ぶ
 長野県知事選は6日、元防災担当相で新人の村井仁氏(69)が、現職の田中康夫氏(50)を破った。長野県民が6年続いた「田中県政」に「ノー」を突きつけ、村井氏が訴えた「安定」を選んだ形だ。毎日新聞が実施した出口調査でも、田中氏が従来の「田中票」を固めきれなかったことが浮かぶ。一方、自民、民主両党とも選挙戦に「半身」で臨んだが、小沢一郎代表が田中氏支持を明言した民主党には少なからぬ影響も予想される。

 ◇対立強調、不信呼ぶ…県民・「安定」県政を選択

 「古い体制を壊す際には田中知事の手法は有効だったが、壊すだけでは停滞を生む。田中知事の手法が見透かされ、飽きられたということだ」

 長野県議の一人は知事選をこう振り返った。

 組織を持たない田中氏の最大の支持基盤は無党派層だ。県議会など既存勢力を「守旧派」と位置づけ、対立を強調することで支持を集めてきた。

 県民との対話集会、ガラス張り知事室、脱ダム宣言……。県職員出身知事が続く県政を批判して初当選した後、田中氏は矢継ぎ早に新しい発想を打ち出した。

 県議会の不信任決議で失職後の出直し選挙(02年9月)は「改革派VS守旧派」の演出で「風」をつかんだ。この時の毎日新聞の出口調査では、全体の半数の無党派層の約8割が田中氏に投票した結果となった。「改革派知事」としての田中氏のピークでもあった。

 大きな転機は03年9月の住民票移転問題。田中氏は「好きな自治体に住民税を払いたい」と、長野市から県南端の泰阜村へ住民票を移した。しかし、住所地認定などで長野市との間で裁判に発展。県民は「不毛な摩擦」ととらえ、「周囲と対立ばかりする知事」という不信感が広がることに。

 有力な支援者が離れ始めたのも同時期だ。初当選時に全面支援した元八十二銀行頭取の茅野実氏もその一人。「02年に圧勝し、何をやっても許されるような言動が目立ち始めた」と批判した。

 田中氏は今回も「県政を後戻りさせるな」と対立構図を前面に出す選挙戦を展開した。しかし、世論調査は軒並み村井氏とのデッドヒート。「数字と実感が合わないんだよね」。数字を見て首をひねった田中氏は、もはや「風」をつかんでいなかった。

 長野で6年弱続いた「田中流」の政治手法は終わりを告げた。【川崎桂吾】

 ◇前回投票者、大量に離反

 毎日新聞の出口調査は長野県内50カ所の投票所で実施、2848人の回答を得た。

 「誰に投票したか」を聞いた質問では、前回02年知事選で田中氏に投票した人のうち、今回も田中氏に投票した人は63%にとどまり、37%が村井氏に流れた。圧勝だった前回の「田中票」の動きが注目されたが、十分につなぎ留められなかったことが裏付けられた。

 「投票で最も重視したこと」では、両氏の訴えに沿い、村井氏に「安定」、田中氏に「改革」を求める有権者の傾向が表れた。村井氏に投票した人は(1)「議会・市町村・国との関係」33%(2)「人柄・資質」23%--の順。田中氏では「改革を進めることへの期待」が57%と最多で、「議会・市町村・国との関係」は9%にとどまった。

 支持政党別では、村井氏は自民支持層の69%を獲得し、公明支持層も90%と大半を確保。民主支持層、無党派層からもそれぞれ44%、42%を得た。「反田中」票の結集を目指し、6月に自民党を離党し無所属になったことの効果が表れた形だ。【葛西大博、小山由宇】

 ◇政党に「重い課題」…地方選の対処難しく

 長野県知事選では、中央の与野党対決と「地方の事情」が一致しないことが改めて浮かび、自民、民主両党とも今後への影響を読み切れないままだ。与野党相乗り候補が敗れた7月の滋賀県知事選に続き、党中央は「地方首長選とどう向き合うか」という重い課題を突きつけられた形だ。

 「両方落選が望ましかった」。民主党の長野県選出議員が嘆いた。小沢氏が田中氏を支持する中での「敗北」に党内には動揺があり、幹部は「本気の応援なら小沢代表は現地入りしたはず。義理立ての発言だ」と影響の否定に躍起になった。

 小沢氏は5月に知事選での自民党との相乗り禁止を打ち出した。例外を認めた滋賀での敗北が流れを加速、長野では自主投票しか選択肢のない状況に追い込まれた。しかし、県議の「反田中色」は強く、連合長野も村井氏を支持。こうした「ねじれ」に対し、別の幹部は「小沢代表が強引に白黒つけて支援していれば勝てた」と悔やんだ。

 小沢氏の求心力の一つは選挙に強い点。今回、発言が裏目に出て、かげりが出る可能性もある。自民党からも「田中氏支持を直前に言って逆にミソをつけた」(片山虎之助参院幹事長)など、小沢氏の支持明言につけ込む考えが浮上している。

 一方の自民党は村井氏支援を県レベルにとどめ、党本部は「何もしない」との姿勢を貫いた。しかし、終盤には幹部が村井氏の支援を強くにじませていただけに、「県民の気持ちに村井氏がフィットした」(武部勤幹事長)など、選挙結果を歓迎する勝利宣言のようなコメントが目立った。

 しかし、これは結果論にすぎない。当初は「地方選は地方選」という意識もあったほか、「郵政造反組」の村井氏とは距離を置いていた。これまで、相乗りが多い知事選では「勝ち負けが分からない選挙」に甘んじてきただけに、「自民VS民主」の構図が定着した場合の対応は未知数だ。【須藤孝、西田進一郎】

 ◇未熟さ明らかに 

 ▽新藤宗幸・千葉大教授(行政学)の話 田中知事は拝金政治の破壊者として登場し大きな支持を得てきたが、再選後の4年間で未熟さが明らかになってしまった。民主党「影の内閣」への入閣や新党日本の代表に就任する一方、全国知事会の三位一体改革などには冷淡だった。「長野県から日本を変える」と叫びながら、実はパフォーマンスだけだったことに有権者が気付いた。政治への関心を高めたことは功績の一つだが、その結果県民が政治的に成熟し、落選につながったのは皮肉だ。

 ◇仕事進め方疑問も 

 ▽橋本大二郎・高知県知事の話 地方自治の古い流れを変えようという田中知事の試みには共感できる点が多く、この結果は大変残念だ。長野県での水害が脱ダム宣言と関連付けられ、ネガティブキャンペーンに利用されるという悪条件が敗因に挙げられる。私自身、田中知事の人間関係の作り方や仕事の進め方に疑問も感じたが、そうしたキャラクターへの拒否反応もあったのだろう。ただ、県民一人一人から意見をくみ取ろうとした努力は評価できるし、村井氏にもこの姿勢は引き継いでほしい。

 ◇改革成果出ていた 

 ▽コラムニストの勝谷誠彦さんの話 別に悲嘆も失望もしない。どうぞ中世の闇に戻って下さいという感じだ。財政再建や職員の意識改革など、せっかく田中さんが手がけた改革の成果が出てきたのに、県民は投げ出してしまった。田中さんの手法や言動に批判はあるが、改革とマイナスイメージと、どちらが大事か分かっていないのではないか。過去2回の知事選で、信州人は自ら前へ進もうと行動したが、今回は座ったまま動かなかった。そのことが低投票率になって表れている。

毎日新聞 2006年8月7日

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