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政治と行政の透明化は時代の流れだ  長野知事選の結果

8月7日(月)

社説=06知事選 後戻りが民意ではない

 2期6年間の田中県政に幕が引かれた。田中康夫氏の3選を、新人の前衆院議員、村井仁氏が阻んだ。新知事は、二分された民意をひとつにまとめる重責を背負っての出発になる。

 長野県のこの先4年間のかじ取りを、有権者は50歳の現職でなく69歳の新人に託した。村井氏は、いったんは政治の世界から身を引いた人である。

 知事支配、県庁支配の県政を止める。そのために立候補した、と村井氏は訴えた。田中県政にストップを、が眼目だった。

 その訴えが浸透し、広く支持を集めた。独自の発想に基づく理念を掲げ、トップダウンで押し通す田中氏の政治手法、県政運営に対する県民の懸念が、それだけ大きかったことになる。村井氏の勝利というより、田中氏の敗北、との見方も不可能ではない。

<政治手法にも厳しい目>

 長野県民はこの6年間、県政の大きなうねりを経験してきた。県民が自らの判断で選び取ってきた結果でもある。

 21世紀目前の2000年知事選では、県政と県民の距離を縮める、と訴えた作家の田中氏が初当選した。県庁出身の知事が40年以上続いてきた「官主導」の県政に、風穴が開いた。

 2年後の出直し知事選も、全国の注目を浴びた。ダム問題をきっかけとする県議会による不信任案可決、知事失職、再出馬、という経過が特異だったこともある。「改革の継続」を掲げた田中氏が、圧勝で再選されている。

 今回も田中氏は、県政改革を後戻りさせていいのか、と訴えた。結果から見ると、事実上の信任を得た前回とは様子が一変した。強引で首尾一貫しない面も目立つ田中氏の手法が、むしろ問題になった。

 市町村や県議会などとの対決を辞さないやり方に、このままでは長野県がこわれてしまう、といった声も聞かれた。政治手法が大きな争点に浮上した。

<時計は逆戻りしない>

 今回の選挙結果を受け、6年前までの官主導の県政に戻るのではないか、との不安が県民の間にあるのは事実だ。県民の見えないところで、なれ合いや根回しで事が決まったり収まっていく心配だ。時計の針が逆戻りすることになる。

 村井氏は選挙戦で、後戻りはさせないと繰り返し明言した。古い体制に戻ることを期待して応援する向きには、がっかりするだけ、とくぎを刺している。

 とはいえ県会議員の大半、市町村長の多くが村井氏を支援した経過を見ると、心配にもなる。政権与党の自民党、公明党の県組織の推薦も受けている。民意とかけ離れたオール与党体制のかつての県政が息を吹き返すような展開は、県民の期待にそぐわない。

 選挙戦の中で村井氏は、田中県政の評価できる点、良い点は引き継いでいく姿勢を明確にしている。県民の声を聞く車座集会や「どこでも知事室」、最寄りの地域に開設してきた宅幼老所などである。「脱ダム」宣言についても、理念は素晴らしいものだとしている。

 政治と行政の透明化は時代の流れだ。県政運営を、田中県政時代よりもさらに県民に開く取り組みを、村井氏に求めたい。この点でいささかでも県民の疑念を呼ぶようだと、田中県政を終わらせた県民のエネルギーは、今度は村井氏にぶつかっていくだろう。

<政策を確かなものに>

 今知事選は、豪雨災害と向き合う異例の展開となった。土石流などによる犠牲者は2けたを数え、県土の安全、安心が争点として浮かび上がった。県の財布にゆとりがない中で、防災や治山・治水を含め公共投資をどうするか、新知事が取り組まねばならない課題だ。

 体系だった公約は、両候補とも示せずに終わった。村井氏の場合、81市町村との連携、県の支援を前面に掲げ、権限、財源の移譲を進める主張に終始した感がある。田中氏との違いを際立たせる戦術の面が強く、物足りなさを残した。

 県民が参画する県の中期ビジョンづくりなど11項目の県政改革の課題を挙げたのは、選挙戦の途中からである。来春に迫った県立高校の再編もある。拙速は避けるべきだとしても、それぞれ具体的な考え方を速やかに示す必要がある。

 田中県政は対話と情報公開を掲げながら、政策導入や決定の経過が分かりにくかったり、説明を尽くさない面があった。ダム中止後の浅川の治水対策も典型だ。代替案がさまざまに姿を変え、かえって住民の不信や疑問を募らせている。

 村井氏は、県立高校の再編や脱ダム後の治水対策などで、地域住民と話し合う方針を掲げた。田中県政の反省点も踏まえ、難題に立ち向かってもらいたい。

 最後に触れておきたいのは、民主党のちぐはぐな対応だ。県内に強力な支持基盤を持ち、田中知事に批判的な見解をまとめていたのに、候補を擁立できなかった。県連と党中央の姿勢も一貫していない。

 党の信頼性、影響力を大きく損なう結果になったことを、深刻に受け止めるべきだ。

信濃毎日新聞

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