事実上の〈ヤミ派遣〉
大阪市が社福法人に職員”ヤミ派遣”、出張扱い8年
◆同和関連団体役員らが理事
大阪市が「同和対策の一環」として、同和対策事業の根拠だった地対財特法の失効(2002年3月)後を含めた05年3月までの約8年間、同和関連団体の役員らが理事を務める社会福祉法人に係長級職員(58)を常勤させていたことが分かった。この職員は市の出先機関に在籍していたが、市側は定められた手続きなしに毎日を「出張」扱いにし、給与も全額を負担。事実上の〈ヤミ派遣〉で、市も「不適切な便宜供与だった」と認め、8年間に支給した給与が地方公務員法に反した公金支出にあたる疑いもあるとして調査を始めた。
この法人は、高齢者のデイサービス事業などを展開している「スワンなにわ」(同市浪速区)。部落解放同盟大阪府連合会浪速支部の役員や、社団法人「大阪市人権協会」に加盟する浪速人権協会の役員らが、理事を務めている。
市や関係者によると、市は1995年末ごろ、同法人の設立を準備していた市同和事業促進協議会(現・市人権協会)役員から「行政のノウハウを持った人材に手伝ってほしい」との要望を受け、法人の設立直後の96年7月、浪速同和地区解放会館(現・浪速人権文化センター)に勤務していたこの職員を障害者の就労に向けた技術指導を行う市立中央授産場(天王寺区)にポストを新設して異動させたうえ、法人での専従勤務を命じた。
職員は法人理事に就き、法人事務所に出勤。昨年3月末に市を退職し、法人事務局長として再就職した。
この間、授産場には、この職員の机も出勤簿もなかったが、市は「出張」扱いにして給与を負担。同年代の市職員の平均額から計算すると、職員の給与は8年間で計8000万円前後とみられる。しかし、出張命令など出張に必要な手続きは一切、行われておらず、出張に伴う手当も支給されていなかった。
市は条例で、職員を派遣できる相手先として、市出資の第3セクターなどの外郭団体や、市と関連が深い財団などの名を明記。それ以外の法人には派遣できない。また、派遣する職員の給与は、派遣先が負担するのが原則としている。
市が職員を「長期出張」の扱いで、市以外の団体などに事実上の“派遣”をするケースもあるが、地方公務員法上の職務専念義務に触れないよう、市に関連する業務に従事する場合以外には認めないとしている。
しかし、この職員は読売新聞の取材に「仕事は(市と関係ない)法人の給与管理や職員採用が中心だった」と証言。職員を同法人勤務とした市の業務命令そのものが、同法に抵触する恐れもある。市健康福祉局は「本来、市と無関係の社会福祉法人にこうした便宜供与はできない。このケースは同和対策の面があり、法人支援の意味で現職職員を出張させていたが、地対財特法の失効後も続いていたのは説明がつかず、組織として問題があった」としている。同法人は「同和対策ではなく、地域福祉の重要性を市が理解してくれた結果と受け止めていた」としている。
(2006年06月12日 読売新聞)
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