まさか逮捕されるとは。
2006年5月17日(水)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-05-17/2006051703_01_0.html
大阪市の「解同」幹部横領事件
ゆがんだ同和行政
市幹部も“共犯”関係
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「まさか逮捕されるとは。同和事業をとりまく状況がかわったということか…」。大阪府の自民党幹部は、ため息まじりにこう言います。駐車場管理をめぐる横領事件で大阪市東淀川区の「解同」(部落解放同盟)飛鳥支部長で財団法人「飛鳥会」理事長の小西邦彦容疑者(72)の逮捕が波紋を広げています。同和対策事業を食い物にする「解同」利権が浮き彫りになった逮捕劇。背景には、同和対策が法的根拠を失った今でも、癒着関係は絶ちきれない行政のゆがんだ姿勢があります。
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新大阪からも程近い阪急京都線の崇禅寺駅を降りると、今回の事件を象徴するような光景が飛び込んできます。「解同」飛鳥支部、飛鳥会の入ったビル、その近隣には小西容疑者が設立した社会福祉法人「ともしび福祉会」の施設、大阪市立飛鳥人権文化センター(旧飛鳥解放会館)が並んでいます。どれも小西容疑者の疑惑とかかわりがあります。
今回の逮捕の直接の罪状は、飛鳥会の預金を着服した業務上横領容疑でした。飛鳥会の打ち出の小づちとなったのは、大阪市の同和対策事業として市の外郭団体「大阪市開発公社」が経営する西中島駐車場(淀川区)の委託業務です。
一九七四年に設立された同駐車場は、年間二億円の収入がありました。飛鳥会はこれを過小に報告し、同公社に収める利益配分金や経費を低くしていたのです。
「解同」いいなり
大阪市
日本共産党市議団は、当初からこの疑惑を追及し、契約解除を求めてきました。下田敏人市議団長は指摘します。
「疑惑だらけの契約のうえに、小西容疑者は山口組系暴力団の幹部でした。問題点をいくら明らかにしても、『解同』いいなりの大阪市は、誠実な対応をしてこなかったのです」
大阪府警の調べでは、大阪市職員の飛鳥人権文化センター館長が、小西容疑者の秘書役を務め、飛鳥会の決算書類も作成していたことも明らかになっています。まさに市も「共犯」関係にあったのです。
小西容疑者は、福祉分野でも事実上の同和対策として多額の補助金を受け取っていました。その総額は五十億円を上回るとの試算もあります。その受け皿となったのが、特別養護老人ホームなどを運営する「ともしび福祉会」です。
日本共産党大阪市議団の調べでは、ともしび福祉会の常務理事には、市OBの旧飛鳥解放会館長が天下っています。「解同」に同和対策事業で利権を与えて、見返りとして天下る―。露骨な癒着の構図が浮かびあがります。
一貫して追及
共産党
西中島駐車場問題では、大阪府の責任も重大です。飛鳥会は、所管の大阪府に提出が義務付けられている収支報告書に、西中島駐車場の収支を未記載でした。ところが、府は国の方針になっている定期的な監査を怠っていました。
飛鳥会の経理を担当していた三菱東京UFJ銀行(旧三和銀行)の担当課長も横領ほう助容疑で逮捕されました。同行は、小西容疑者への多額の融資が焦げ付いたままになっています。
一九六九年の同和対策事業特別措置法の施行以来続いてきた国の同和対策は、二〇〇二年の地域改善対策財政特別措置法の失効で終わりました。しかし、実際にはさまざまなかたちで利権は温存されているのです。
西中島駐車場問題以外でも大阪市の「解同」利権疑惑は、次々と噴出しています。「解同」系の芦原病院をめぐる不透明な巨額公金支出、市の官製談合事件で明らかになった大阪府同和建設協会偏重などです。
下田団長は、こう語ります。
「私たちは、議会として芦原病院へのデタラメな公金支出の真相解明のために百条委員会を設置するように三月議会に提案しました。ところが、自民、公明、民主などの与党はこれを否決してしまったのです。五月議会で西中島駐車場問題も含めたものを再度提案して、市民の力も借りて真相解明とゆがんだ同和行政廃止のためにがんばります」
蝕まれた行政・上
──福祉の仮面、闇社会と結び利権拡大(5月16日)
「施設はつぶれないのか」――。小西容疑者の逮捕後、大阪府下で特別養護老人ホームや保育園など5施設を運営する社会福祉法人「ともしび福祉会」(東淀川区)に入所者の家族らからの問い合わせが相次いでいる。
小西容疑者が理事長を務める福祉会の各施設の幹部は12日、急きょ会議を開催。職員の動揺を抑え、業務に専念することなどを確認した。ある幹部は「早く理事長を辞めてほしい」と漏らす。小西容疑者が一代で築き上げた“王国”は根底から揺らいでいる。
「毎日が敬老の日であり子供の日」。小西容疑者は福祉会のパンフレットにそう記した。「老人と涙を流して話し合う優しい人」とその印象を話す関係者がいる一方、別の顔に気づいていた職員は少なくなかった。
福祉を志す人はまずケアの充実を気に掛けるのが一般的だが、「支出金のチェックばかりが厳しく、金もうけのために福祉をやっていると感じた」。鋭い眼光に派手な服装。ベンツで福祉会に乗り付けるのも奇異に映った。
★ ☆ ★
小西容疑者の半生は福祉活動などに取り組む姿と、“闇の世界”とのかかわりが複雑に絡み合っている。
大阪府高槻市で育ち、部落解放運動が活発になった約40年前、大阪市東淀川区に移った。地元の共同浴場から出火、消火用水が不足した時、先頭に立って強く改善を訴えた。当時を知る関係者は「威圧的で、このころから行政への要求を強めた」という。
部落解放同盟大阪府連合会飛鳥支部長に1967年に就任すると、間もなく地域の生活・福祉改善を掲げて財団法人「飛鳥会」を設立。74年に事件の舞台となった「西中島駐車場」の委託契約を大阪市から取り付けた。翌年、市議会で料金収入の不透明さや暴力団との関係が指摘されたが、「市内部には触れたくない雰囲気があった」(市幹部)。
大阪府警によると、小西容疑者は暴力団山口組系暴力団の元幹部。85年には山口組4代目組長が小西容疑者名義のマンションの1室に向かう途中、射殺された。96年に大阪市内で射殺された別の山口組系元組長とも親交があり、97年には飛鳥支部に銃弾が撃ち込まれる事件もあるなど闇との接点が浮かぶ。
★ ☆ ★
飛鳥会は共同浴場や駐車場管理など地域に関係する事業のほかに、設立の趣旨とは懸け離れた貸しビル事業やマンション経営を行っていた。「飛鳥支部は知っていたが、飛鳥会は事件で初めて知った」という住民もいる。小西容疑者本人以外に活動の実態全般を詳しく知る人間はいないという。
捜査2課の調べに対し小西容疑者は「覚えていない」「飛鳥会に金を貸しており、返してもらった」などと横領の容疑を否認している。そこに「福祉の人」の姿はない。
◇
事実上の同和行政を舞台にした横領事件の摘発から1週間が過ぎた。事件は人権の名を借りた悪質な手口だけでなく、行政側の「事なかれ」主義までも浮かび上がらせた。蝕(むしば)まれた行政の体質は変わるのか。事件の構図を追った。
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