「外圧できれいさっぱりした方がいい」
飛鳥会:
同和対策悪用し利権 小西容疑者の実像は
自らが理事長を務める財団法人「飛鳥会」(大阪市東淀川区)の預金を着服したとして業務上横領容疑で逮捕された小西邦彦容疑者(72)。大阪府警の調べなどで、約40年にわたり部落解放同盟大阪府連飛鳥支部長の座にあり続け、同和対策事業を悪用して利権を手にしてきた実像があぶり出されようとしている。築いた資産は四十数億円。飛鳥会を巡る疑惑は大阪市議会などで再三、指摘されながら、暴力を背景にした小西容疑者の前に、市は沈黙。大手都市銀行も、錬金術に加担していた。
■駐車場のうまみ
小西容疑者の支配下にあった飛鳥会に多額の利益をもたらしたのは西中島駐車場(同市淀川区)を運営する委託業務だった。市の事実上の同和対策事業として74年にスタートし、市の第三セクター「大阪市開発公社」と随意契約が続いた。
駐車場は盛況。「公社に納める利益配分金が安すぎる」と市議会で問題化し、市は91年に調査。年間約2億円の収入が推定されたが、公社は低く偽った収入報告書をねつ造し続け、公社への納入は年約1800万円にとどまった。元公社役員は「利益は、地域に役立ててもらうのが目的だった」と説明する。しかし、小西容疑者は長年、公社との話し合いを拒否。利益が地域に還元された形跡もない。
収入は飛鳥会の駐車場の口座から小西容疑者個人の口座に振り替え入金され、宝飾品の購入などに充てられた。
■福祉はもうかる
小西容疑者は81年、社会福祉法人「ともしび福祉会」を設立、理事長を務める。同福祉会は大阪市内や大阪府高槻市内に、特別養護老人ホーム、生活支援ハウスなど5施設を運営。国や大阪市などから補助金がつぎ込まれた。
元大阪市職員はこんな逸話を明かす。「小西さんは『福祉はもうかる。年寄りは何も分からなくなっているから、体を洗うのはホースで水をかければいい』と言っていた」
■支配の構図
「市の職員を怒鳴っているのを見て、これがヤクザというものかと実感した」。70年代に同和対策事業を担当した大阪市職員は語る。小西容疑者が暴力団事務所に出入りし出したのは、その約10年前から。資金力をつけてからは暴力団も一目置いた。山口組最高幹部らとも対等に話していたという。暴力団との関係は、小西容疑者の“暗黙のどう喝”として機能した。部落解放同盟関係者は「解放同盟支部長に加え、ヤクザの看板が小西を大物にした」と話す。
小西容疑者のメーンバンク・三菱東京UFJ銀行(旧三和銀行)淡路支店は飛鳥会事務所に行員を常駐させ、行員が経理を担当した。府警幹部は「闇の勢力とつながる地域のボスに逆らえなかった。小西容疑者は融資など『もらった』ぐらいに思っているだろう」とみる。
小西容疑者と同行行員の逮捕後、同行幹部の1人はこう漏らした。「この際、(逮捕という)外圧できれいさっぱりした方がいい」
毎日新聞 2006年5月14日
暗部:解放同盟支部長逮捕/上
顔役の利権、半世紀 立ち退き仲介でうまみ
小西容疑者の自宅の捜索に入る大阪府警の捜査員=奈良市帝塚山南3で8日午後1時22分 大阪市の市有地にある駐車場の運営を約30年間、独占受託してきた財団法人「飛鳥会」(同市東淀川区)の収益を着服したとして、8日、業務上横領容疑で大阪府警に逮捕された理事長の小西邦彦容疑者(72)。1960年代半ばから、自治体の同和対策事業が膨らんでいく中、部落解放同盟大阪府連飛鳥支部に君臨してきた小西容疑者。ゆがめられた事業の暗部を描く。
==============
大阪市東淀川区の阪急崇禅寺駅前にある4階建ての白いビルに、部落解放同盟大阪府連飛鳥支部がある。正面入り口前に止まった黒色のベンツ。辺りを警戒する男性数人に囲まれながら、白髪で細身の小西容疑者がビルから姿を現した。スモークガラスで覆われた後部座席に乗り込むと、ベンツは走り去った。
同支部長、財団法人「飛鳥会」理事長、社会福祉法人「ともしび福祉会」理事長……。さまざまな肩書を持つ小西容疑者は、「飛鳥地区」と呼ばれる同和地区の“顔”とも言えた。
◇
「お年寄りに思いやりがあり、身銭を切って配食サービスをしていた」。大阪府高槻市の出身ながら、約40年前、飛鳥地区に姿を見せるようになったころを知る解放同盟の関係者は、こう振り返る。
一方、若いころを知る男性は別のイメージを持っていた。「地区内の暴力団事務所に出入りしたのがきっかけで、この地区に根付いた」。1950年代後半、地区の住環境改善のため、大阪市による公営住宅建設が持ち上がると、「立ち退き料」などの交渉役を買って出た。「地元の人たちに代わって市と交渉したが、立ち退き料から自分の『交渉料』を差し引いた。彼が同和対策事業のうまみを知ったのはこれが最初だろう」
◇
大阪市の戦後の同和対策事業は、52年度に「地区改善施設整備」の予算を計上して始まり、65年、国の同和対策審議会が「同和問題の解決は国の責務」と答申してから、自治体の同和対策事業予算は一気に膨れた。69年には同和対策事業特別措置法が施行され、国の予算が付き、同和対策事業はさらに拡大していく。
小西容疑者は67年、飛鳥支部支部長に就任。地区の代表として、利権を手中に収めていった。
表向き地区内の市営住宅を住所にしながら、約20年前、奈良市内の高級住宅街に自宅を新築。さらに飛鳥会の名義で95年、大阪・北新地の商業ビルを購入、貸しビル業を始めた。中では小西容疑者の知人女性が飲食店を開き、住居になっている最上階の5階で、小西容疑者は平日過ごし、週末は奈良市の家に帰る生活という。移動は運転手付きのベンツだ。
部落解放同盟大阪府連幹部は小西容疑者をこう評した。「私が知る限り、支部長や書記長が集まる会議に来たことがない。解放運動はしていない」
毎日新聞 2006年5月9日 大阪朝刊
暴力団系企業の土地で融資
=旧三和銀系ノンバンクなど-同和対策事業めぐる事件
大阪市開発公社が同和対策の一環として委託した駐車場管理業務をめぐる横領事件で、旧三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)の関連ノンバンクが、財団法人飛鳥会理事長小西邦彦容疑者(72)に対し、暴力団関係者と関係の深い企業の土地を担保に30億円を融資していたことが16日、関係者の話で分かった。小西容疑者に対する同行側の融資総額はノンバンク分を含め約50億円に上り、大部分が焦げ付いているとみられる。
同じ土地を担保に、京セラなどが出資するノンバンクも、小西容疑者側に23億円の融資枠を設定していた。府警捜査2課は、同容疑者を窓口に暴力団側に多額の資金が流出した可能性があるとみて調べを進めている。
[時事通信社:2006年05月16日
| 固定リンク
「んー何だか」カテゴリの記事
- 「差別されない」権利 東京新聞0925(2023.09.25)
- ネットにも「政治的公平」が必要か…国会で議論に 「立憲? 各政党は憲法を学びなおせ」A(2023.03.15)
- 「全ての佐賀県民が一人ひとりの人権を共に認め合い、支え合う人にやさしい社会づくりを進める条例(仮称)(案)」についての意見募集(2023.01.07)
- 部落さらす動画、ユーチューブが削除 「ヘイトスピーチ指針に違反」(西日本新聞)(2022.12.01)
- NHKバリバラ 「部落」を写して、ネットの「部落」映像を批判する この矛盾(2021.09.12)
最近のコメント