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国際的な犯罪集団に何故限定しないのか    共謀罪

日弁連
http://www.nichibenren.or.jp/ja/special_theme/complicity_about_qa.html

「共謀罪」に関する法務省ホームページの記載について
2006年5月8日

共謀罪について、法務省がそのホームページ上にコーナーを設けています。

2006年4月19日には、従前より掲載されていた一般的なQ&Aに追加して「『組織的な犯罪の共謀罪』に対する御懸念について」と題するコーナーを新設しています。

衆議院において審議中の法案について、このようなコーナーが新設されること自体、異例のことであり、市民の懸念が多いことの反映だと思います。日弁連はすでに「共謀罪与党修正案についての会長声明」(2006年4月21日)を公表していますが、法務省のホームページで挙げられた点に絞って、以下のとおり疑問点を指摘いたします。

1.共謀罪の成立範囲のあいまいさは払拭されていません。
【法務省の説明】
そもそも「共謀」とは、特定の犯罪を実行しようという具体的・現実的な合意をすることをいい、犯罪を実行することについて漠然と相談したとしても、法案の共謀罪は成立しません。

したがって、例えば、飲酒の席で、犯罪の実行について意気投合し、怪気炎を上げたというだけでは、法案の共謀罪は成立しませんし、逮捕されるようなことも当然ありません。

どのような合意があったときに、共謀罪にいう「共謀」といえるのでしょうか。法務省は国会答弁において、共謀罪における共謀は共謀共同正犯理論におけるそれと異ならないと答弁しています。そして、先の特別国会で法務大臣は、共謀は黙示の連絡でも、目配せでも成立すると答弁しているのです。(2005年10月28日の南野法務大臣の答弁)

そうすると、たとえ飲酒の席でも、具体的に犯罪の方法や日時を決めれば共謀罪は成立することになるはずであり、ホームページの説明でも、共謀罪の成立範囲のあいまいさは払拭されていません。

与党修正案においては、合意に加えて、「犯罪の実行に資する行為」が必要とされました。「犯罪の実行に資する行為」とは犯罪の実行に何らかの影響を与えた行為を広範に含みうるもので、犯罪の準備行為よりもはるかに広い概念です。犯罪実行に直接因果関係のない、精神的な応援などもこれに含まれる可能性があります。少なくとも、犯罪の実行の「予備行為」ないし「準備行為」が行われたことを明確に要件とするべきです。

2.処罰の対象となる「団体」の範囲が不明確なままです。
【法務省の説明】
法案の共謀罪は、例えば、暴力団による組織的な殺傷事犯、悪徳商法のような組織的な詐欺事犯、暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯の共謀など、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪を共謀した場合に限って成立するので、このような犯罪以外について共謀しても、共謀罪は成立しません。

この法案には、「団体」「組織」への言及はありますが、「組織犯罪集団」が関与する行為との限定はありません。このような説明をするのであれば、むしろ端的に、「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪」に限定することを法文上明らかにすべきです。

共謀罪の成立する犯罪の数は実に619を超えるとされています。これらの犯罪が組織犯罪集団の関与する重大犯罪といえるでしょうか。

日本政府は、条約の審議過程においても重大犯罪を長期4年の刑期をメルクマールに決めることに強く反対し、同じような反対意見は多くの国からも寄せられていました。条約の制定後の各国の国内法化の実情を見ても、長期5年を基準とした国も存在します。組織犯罪集団の関与する「重大犯罪」に限定するのであれば、法文上で対象犯罪を限定することが必要です。

与党修正案は、団体の活動に定義を加え、一定の犯罪を行うことを共同の目的とする団体によるものに限定するとしています。しかし、この修正案においては、「共同の目的」が団体の本来的な目的であることは要件とされていません。また、あくまでも「団体の活動」に着目しており、「団体」が一定の犯罪を行うものであることを要件としていません。この点でも団体の範囲がどこまで限定されているのかは明確になっていません。処罰範囲を限定する目的の修正であるならば、法の文言上も、一義的にそのようにしか理解できない文言とすべきです。

過去において、暴力行為の処罰等に関する法律や凶器準備集合罪なども暴力団に適用するための法規であるとして提案され、国会においても説明されながら、結果として広範な市民的活動に適用されるに至ったことを忘れてはなりません。

日弁連は、このような修正案によっても、法案の適用対象が組織犯罪集団の関与する場合に明確に限定されたものとは評価することはできません。

3.一般的な社会生活上の行為が共謀罪に問われる可能性は残っています
【法務省の説明】
国民の一般的な社会生活上の行為が法案の共謀罪に当たることはありませんし、また、国民同士が警戒し合い、表現・言論の自由が制約されたり、「警察国家」や「監視社会」を招くということもありません。

法案の適用対象が以上に述べたように、組織犯罪集団の関与する場合に限定されていない以上、国民の一般的な社会生活上関与する会社や市民団体、労働組合などの行為が共謀罪に問われる可能性は残っていると言わざるを得ません。

また、この法案においては、共謀罪は、実行の着手前に警察に届け出た場合は、刑を減免することとなっています。

このような規定があれば、犯罪を持ちかけた者が、会話を録音などして、相手の犯罪実行の同意を得て警察に届け出た場合、持ちかけた側の主犯は処罰されず、これに同意した者だけの受動的な立場の者の方だけが処罰されるようなことになりかねません。

法務省が、監視社会を招くことはないとするなら、この密告奨励になりかねない規定を削除すべきです。

共謀罪の証拠は人の会話とコミュニケーションそのものです。昨年衆議院法務委員会に招致された刑事法研究者(大学教授)も、共謀を立証するためには、通信傍受捜査の拡大が必要である旨を公述されています。同参考人は、4月25日の読売新聞においてもこの法案の制定が必要であるとの立場のインタビュー記事において、同様のコメントをされています。今後、共謀罪が成立した場合、共謀罪の捜査のために電話やメールの傍受の範囲が拡大される危険があります。その危険は、まさに「警察国家」「監視社会」の危険にほかなりません。

          

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