読売社説の認識は10年遅れてる
5月14日付・読売社説
[大阪同和行政]
「不正の構造を根元から見直せ」
大阪市で同和対策事業を巡る不正が噴き出している。背景を徹底解明し、不正を助長していた乱脈行政を早急に正さなければならない。
大阪府警は、部落解放同盟支部長で、暴力団とも関係がある財団法人理事長を業務上横領容疑で逮捕した。
財団は、市開発公社の委託を受け、30年以上、JR新大阪駅近くの公社直営駐車場を独占管理してきた。
市と公社は15年前から、財団が駐車料金収入を3分の1程度に過少申告していたことを知りながら、それに合わせて公社職員が財団の収入報告をねつ造してきた。財団は近年、年1億円前後の利益を得て、理事長が一部を流用していた。
“駐車場利権”と言える横領事件だ。利権を支えてきた市の責任は重大だ。
大阪市が同和地区医療センターと位置づけていた民間病院に対する巨額の補助金の不正支出も問題だ。
1968年度以降、投入された補助金と無担保融資は312億円に上る。公金依存体質が染みついた病院は融資全額が未返済のまま、昨年末、破たんした。
補助金の実態は“つかみ金”だ。市の歴代課長らが医療機器や工事の虚偽の申請書や精算報告書を作成してつじつまを合わせていた。
前市議などが関淳一市長らを背任罪で大阪地検に告発した。市の調査委員会委員は、刑事事件に問われる可能性があるとしている。
ほかにも、市の造園事業の入札で、大阪府同和建設協会の実力者の求めに応じ、協会の加盟業者を優先的に指名した“官製談合”事件もある。担当課長ら3人が1月までに大阪地検に偽計入札妨害容疑で逮捕された。
行き過ぎた同和対策は大阪市だけではない。高知県では元副知事が、同和対策のために設立した縫製業組合に議会承認を得ずに約12億円を融資したとして、昨夏、背任罪で実刑判決を受けた。
地域改善対策財政特別措置法が2002年に失効し、国や自治体の特別な財政措置による同和対策事業は終了したはずだった。その裏で、法的裏付けを欠く不当な優遇が続いていたわけだ。
行政の意識改革と、再発防止の仕組みが急務だ。悪質な事犯は、捜査当局が積極的に摘発することも必要だろう。
いまだに就職、教育などで差別は残っている。「特別扱い」の印象を市民に与えては差別解消に逆効果を生む。
特措法終結に際して、政府の地域改善対策協議会は、行政の主体性の確立やえせ同和行為の排除などを掲げた。公正な行政が同和対策の根幹だ。
飛鳥会事件
小西容疑者に融資・補助金計97億円
実質オーナー会社、公共工事を多数受注
大阪市の外郭団体「市開発公社」から駐車場管理を委託された財団法人「飛鳥会」(大阪市東淀川区)を巡る業務上横領事件で、理事長・小西邦彦容疑者(72)の着服を手助けしたとして、同容疑で逮捕された三菱東京UFJ銀行淡路支社課長・釘本実紀也容疑者(42)が、大阪府警の調べに「飛鳥会事務所には、暴力団関係者が頻繁に出入りしていた」と供述している。暴力団とつながる小西容疑者に、同銀行から旧三和銀行時代に約50億円が融資され、関連法人には国などから少なくとも47億円の補助金が交付された。実質オーナーの土木会社が公共工事を多数受注していたことも判明。「暴力」を背景に、同和行政をゆがめた〈利権ビジネス〉の実態が、明らかになってきた。
■銀行と密着
調べでは、釘本容疑者は、飛鳥会を担当していた2003年4月から昨年末まで、平日は昼前から夕方まで飛鳥会事務所に常駐し、経理処理などを手伝っていた。この間、複数の暴力団関係者を目撃したという。
担当後間もなく、当時の支店長に「もうやめたい」と訴えたが、逆に「がんばれ」と励まされた、と供述。逮捕時には、体重が担当になった当初より15キロも減っていた。
関係者によると、行員の常駐は、約20年前の旧三和銀行時代から続いていたが、小西容疑者の逮捕後、取りやめられた。
同銀行と関連ノンバンクから小西容疑者個人への融資約50億円のうち、かなりの額が実質、焦げ付いているとみられる。
三菱東京UFJ銀行広報部は、小西容疑者との取引について「捜査中のことであり、コメントは差し控えたい」としている。
■暴力団に転貸し?
大阪・ミナミの立体駐車場。バブル期の1990年、関西の山口組系暴力団が関係する企業が当時所有していた、この土地と建物に旧三和銀行関連ノンバンクが債権額30億円の抵当権を設定した。債務者はこの企業ではなく、小西容疑者。直接融資を受けにくい暴力団関係企業に対して、小西容疑者がいったん自分名義で借り入れたカネを貸し付け、利ざやを稼ぐ「転貸融資」だったとみられる。
ある府警捜査員は、小西容疑者から暴力団に資金が流れた疑いの強い一つの出来事を、こう証言する。
1997年、支部長を務める部落解放同盟大阪府連合会飛鳥支部の事務所(東淀川区)に銃弾が撃ち込まれた直後、別の山口組系組員2人が、小西容疑者と行動を共にするようになる。その後、目立ったトラブルはなくなった。「組にボディーガード代を払い、別の暴力団とのトラブルも組の力とカネで解決したにちがいない」
今回の業務上横領事件で府警は、長期間着服されたとみられる公社直営駐車場の料金収入についても、使途解明に全力を挙げる。
■公共工事も
大阪府吹田市に本社のある土木会社の関係者は、読売新聞の取材に「社長は名前を貸しているだけ」と証言、法人登記上、監査役の小西容疑者が実質オーナーであることを認めた。
同社が昨年度までの4年間に、府や大阪、吹田両市などから受注した公共工事は、少なくとも11件。いずれも入札が行われたが、落札率(予定価格に対する落札価格)は平均96%という高値受注だった。
加盟している府同和建設協会(大阪市浪速区)を巡って昨年、大阪市ゆとりとみどり振興局発注の街路樹維持管理を巡る「官製談合」事件が発覚。小西容疑者もかつて、大阪・北新地に近い個人所有のビルの一室に業者を集めて度々、会合を開いていたという。
最近では、別に理事長を務める社会福祉法人「ともしび福祉会」(東淀川区)の施設増設に力を入れている。高齢者向けグループホームを02年3月に同府高槻市内に、昨年12月にも大阪市内にそれぞれ開設。特別養護老人ホームや保育園を含めた計6施設は、市有地を無償で借り受けたり、建設費に補助金が充てられたりした。小西容疑者は施設の収益を細かくチェックし、赤字を出したある施設の責任者は、厳しくしっ責されたという。
(2006年05月13日 読売新聞)
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