主観の問題ではないと思うが
国歳・鳥大名誉教授に聞く 県人権救済条例
朝日COM鳥取版2006年03月01日
~県人権救済条例の見直し論点は~
県人権救済条例の6月施行を凍結する条例案が、2月定例県議会で審議されている。可決されれば抜本的修正に向けた議論が始まるが、見直しをめぐる論点はどこにあるのか、同条例作りに当初からかかわった国歳真臣・鳥取大学名誉教授(社会学)に聞いた。(別宮潤一)
○条例の問題点をどうお考えですか。
「条例の生命線は、人権侵害の加害者と被害者が和解する話し合いの場を提供することだ。従来は加害者が話し合いに応じないケースが多く、そこで考えられたのが加害者に対する5万円以下の過料と氏名公表という二つの強制力だった」
「しかし、特に氏名公表は、鳥取のような狭い社会では個人名からすぐに家族や親族が誰か分かってしまい、新たな人権侵害を生みかねない。個人的には過料や氏名公表には反対だったが、実際に差別に遭ってきた委員から『この程度の強制力がないと実効性がない』と言われ、納得してしまった。安易だった」
○その過料と氏名公表の扱いが焦点になりそうです。
「両者はなくしてもいい。ただ、被害者の相談に乗るだけの駆け込み寺にはしたくない。過料や氏名公表に替わる、加害者に対する抑止力は必要だ。具体策はまだないが、今後考えたい」
○条例廃止を求める意見が増えています。
「人権侵害を受けてきた人の気持ちに立つことが大切。最近の鳥取市の調査では、教員や公務員の間で『差別問題はもう終わった』という意識が顕著に増え、心配している。人権侵害は司法の場で解決すればいいという考え方もある。だが、裁判は時間も費用もかかるので訴えていない人も多いはずで、簡易性を持った人権救済制度は必要だと思う。裁判至上主義には立てない」
○凍結条例案が議会を通れば人権侵害の実態調査が始まります。
「部落問題やセクハラ、家庭内暴力、パワーハラスメント(上司の部下に対する嫌がらせ)など現状で解決していない人権侵害が多く出てくるはずで、改めて条例の必要性を議論できる。行政機関による人権侵害も出てくると思われ、当然、行政機関にはより厳しい内容になるだろう」
「あいまいと批判された人権侵害の定義は、より明確にすればよいのではないか。見直しを契機に、より大勢に認められる条例にしたい」
◇くにとし・まおみ◇ 県内の部落差別問題に詳しく、県人権救済条例の原案を議論した「県人権尊重の社会づくり協議会」(03年12月~05年12月)の会長を務めた。条例の問題点を識者や弁護士が話し合った年末年始の懇話会では参加者11人の中で唯一、条例の必要性を訴えた。67歳。
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