鳥取一部県議の民主主義観を疑う 付帯決議もさもありなん
県議定数「抜き打ち改正」に異議あり
2006/03/28 日本海新聞紙面より
http://www.nnn.co.jp/tokusyu/kikaku/060328.html
二十四日に閉会した鳥取県議会二月定例会は、突然に最終日に議員提案された議員定数条例を可決した。現行定数に変更を加えるものではないが、その審議のあり方には大いに異論がある。県民論議を封じたまま、まさに「抜き打ち」的に採決した手法には、県議会議員のおごりさえ感じられる。これが「県議会の優等生」を自負する鳥取県議会の良識なのか。
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県民論議封じた
あれよあれよ可決
県議定数条例の改正は清風、信、住民連合の三会派が提案、自民党と公明党、社民党を除く賛成多数で可決された。昨年の国勢調査の速報値がまとまったことを受け定数を再配分したもので、現行条例と同じ三八を変えずに、市町村合併で再編成された選挙区の人口に基づいて決められた。
地方自治法が定めた鳥取県(人口七十五万人以下)の県議定数の上限は四〇だが、一九九七年十二月に二削減して三八とする条例を可決、九九年県議選から適用している。
今回の改正は、全くの抜き打ちだった。閉会日前日の二十三日に非公開の県議会会派代表者会で県選管から国調速報値に基づく選挙区内定数の説明を受け、翌日の議会運営委員会で会派の意見を持ち寄り、多数決によって条例改正案の提出を決定。追加提案して常任委員会に付託、即日可決となった。文字通り「あれよあれよ」という間の条例改正だ。
実は二十二日に県議会は議会改革調査検討協議会を開催していたが、条例改正はこの場の議題にさえなっていなかった。
過去の経緯は無視
現定数に決めた九七年には、議員定数検討委員会を設置、約九カ月かけ十回を超える委員会を開いて決めている。その際の争点は、定数を四減の三六とするか二減の三八にするか、だった。このとき三六を主張したのは、今回の改正を発議した清風の石黒豊会長、鉄永幸紀幹事長らが所属していた「創造」だった。
また、郡市をまたがる市町村合併を控えて二〇〇四年六月に設置した県議選挙区調査検討委員会でも、約四カ月かけ公選法本則に沿って合併後の新郡市を選挙区とする結論を出した。この際も「県民の納得」が大きな関心で、公聴会開催さえ論議された。新しい選挙区の定数は〇五年国調後に改めて議論することになっていた。
今回の改正は、こうした過去の県議定数論議の経緯を無視し、論議らしい論議もなく決められた。議場や公開の検討委員会ではなく、会派の多数派工作で導き出した結論を強引に押し切ったとの印象をぬぐえない。
二つの改正案が議員発議され、採決で三六の議員定数を決めた鳥取市議会と比べても、異例さは明らかだろう。同じく議員発議され凍結という異例の手法で見直すことになった県人権侵害救済条例よりも拙速と断じざるを得ない。
平衡感覚を失う
定数の上乗せ削減をしなかったことを非難しているのではない。どういう改正であれ、平成の大合併といわれた選挙区の再編成を踏まえ、十分な論議の上で決定すべきだったと主張しているのだ。なぜ今議会では提起にとどめ、六月定例会までの間に県民の意見を聞く期間を設けなかったのか納得がいく説明を聞きたい。「六月議会まで審議しても結論は変わらない」(石黒・清風会長)との談話には、「まず結論ありき」の議員のごう慢さを見る思いだ。
今回の問題は、昨年の衆院選後に絶対多数会派が消滅した議会のパワーバランスの崩れを象徴するものだ。理念より「どう多数派を構成するか」に腐心する余り、平衡感覚を失ったように思える。降板要求を拒否して続投を続ける前田宏議長が、議会意思の取りまとめ役として機能しなかったのも残念だ。
絶対多数会派がなくなったことは、一面で多数派の横暴がなくなり「会派の切磋琢磨(せっさたくま)による質の向上」を期待させた。しかし、現実は水面下の綱引きだけが目立つ。執行部に引きずられて優等生役を演じる議会から、自ら改革の先導役となる議会への脱皮を求めたい。
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